絶世の美女でインド神話の最高神ヴィシュヌの妻と言われるラクシュミ。
最高神の妻にふさわしく、【幸運や富をもたらす神】として人気があるようです。
現代でも、ラクシュミという名前の女性が多いそうです。
自分の娘が美貌の女神のように幸せになって欲しいと願う親が多いということでしょうね。
ラクシュミとは?
絵画などには妖艶で美しい女性の姿で描かれるラクシュミは、美しい女神として有名で、【幸運と豊穣】が職掌とされています。
女神によくある豊満な肢体を見れば豊穣の神というのも納得できるような気がしますね。
ラクシュミは蓮華の目と蓮華の色をした肌を持ち、蓮華の衣をまとい、腕は4本あり、水蓮を持ち、赤い蓮華の上に立った姿の絵が有名です。
蓮華や薬酒アムリタが入った瓶を持ち、ビルヴァの実、ホラ貝などを身につけています。
また多くの別名を持ち、【ローカマーター】【ジャラディジャー】などとも呼ばれるとか。
もちろん、幸運の女神、豊穣の女神、富の女神などともいわれるています。
富の女神にふさわしく、右手から金貨を溢れさせている絵もあります。
ゴージャスな美女ですね。
ラクシュミの化身
夫であるヴィシュヌは別章で紹介したとおり、10にも化身しました。
妻であるラクシュミもそれに対応かのように、数々の化身で神話に登場します。
例えばラーマの妻シーターとかパラシュラーマの妻ダーラニーあるいはクリシュナの妻ルクミニーなどがラクシュミの化身とされています。
吉祥天
仏教でのラクシュミの漢訳の言葉で、ラクシュミという言葉自体に幸福や吉祥という意味があります。
幸運と富の女神とされ、四天王の一人である毘沙門天が夫です。
七福神の弁財天と同一視されることもあります。
ラクシュミ誕生
絶世の美女神ラクシュミ。
その誕生は、ギリシャ神話のアフロディーテを連想させるものでした。
ヴィシュヌ第2の化身クールマの章で“霊薬アムリタ入手方法”についてのエピソードを紹介しました。
乳海を攪拌すれば、アムリタが出現する-ということで、神々と悪魔が協力して、めでたくアムリタが出て来ましたね。
この時、太陽と月などの14の貴重な宝のひとつとしてラクシュミが乳海から出現したのです。
【海から出現する美女】ということで、アフロディーテのように貝に乗った姿で描かれることもあります。
古き物語を意味するヒンドゥー教の聖典プラーナ文献『ヴィシュヌ・プラーナ』では、ラクシュミとは聖仙ブリグの娘として誕生し、呪いから身を隠すため乳海に避難していたとされています。
ところが思いがけなく乳海が攪拌されたため、水面に姿を現すことになってしまったというわけです。
姿を現した美女ラクシュミに破壊神シヴァや魔族のアスラ達が我先にとプロポーズしたのですが、さすがは最高神と言うべきなのか、すばしこいと言うべきなのか、ヴィシュヌがラクシュミを手に入れてしまったのです。
「俺が先に見つけたのにー」と叫んだかどうかはわかりませんが、出し抜かれたシヴァ神はナーガという魔族の蛇を噛んで悔しがったと言います。
ナーガ、とんだ迷惑ですね。
ラクシュミの立ち位置
バラモン教が盛んなヴェーダ時代にはラクシュミは運命を司る女神という位置を与えられました。
バラモンの聖典『リグ・ヴェーダ』によると、【幸福】の意味だったのですが、呪術的な聖典である『アタルヴァ・ヴェーダ』では【幸運と不運】という二面性を持った女神とされました。
また、後のプラーナ文献『パドマ・プラーナ』には、不運の女神はラクシュミではなく、その姉アラクシュミーと記載されているようです。
ちなみにラクシュミはヴィシュヌと結婚する際、「姉にも配偶者を見つけて下さい」と願ったと言われ、ヴィシュヌがその願いを聞いて結婚相手を授けたという説もあります。
また、ラクシュミの職掌である豊穣と幸運の任務を与えられた女神としてシュリーという名前の女神がいました。
しかし、後世にはラクシュミと合体され、同一神として見られるようになりました。
なので、乳海攪拌の際にはシュリーが登場する説と登場しない説があるそうです。
ヴィシュヌと常に一緒
ラクシュミの夫ヴィシュヌは数多くの化身となって様々な神話に登場しますが、ラクシュミもそれに対応する化身となったと言われます。
例えば、有名な叙事詩『ラーマーヤナ』では、ヴィシュヌの化身であるラーマが主人公ですが、ラクシュミは彼の愛妻シーターに化身しています。
シーターは畑の畝から産まれたと言われます。
と言うのは前述したシュリー神とラクシュミが同一視されたため、豊穣を司る大地母神として崇拝されたからという理由付けがされているのです。
ラーマ&シーターカップル以外にも、ヴィシュヌがクリシュナに化身すればその妻ルクミニーと恋人ラーダーとなり、パラシュラーマになったヴィシュヌのそばに妻ダーラニーとして寄り添っていたと言われます。
要するにヴィシュヌの隣にいる美女は全員ラクシュミの化身と思われます。
夫婦仲が良いと言って良いのか、夫の浮気を心配したのか…などと考えてしまいますね。
エンタメ世界のラクシュミ
『天空戦記 シュラト』
平成初期に放映されたアニメです。
人間界から異世界(天空界)に飛ばされた少年二人。
そこはヴィシュヌが統治する世界で、親友だったのはずの二人が敵に別れ死闘を繰り広げることになるのですが、シュラトに一目惚れした天空界の少女がラクシュというツインテールの少女です。
声優は先日亡くなった水谷優子で、ハイテンションなカワイイ声で演じていました。
落ち着いた大人の美女ではなく、あくまでも主役にくっついていくおてんばキャラ(アニメあるあるの主役の足手まといキャラ)でしたが、天空界の支配者である調和神ヴィシュヌ(女神です)が亡くなった後、後継者となりました。
『吉祥天女』 作:吉田秋生
『BANANA FISH』『海街diary』などで有名な吉田秋生の長編漫画です。
お寺などに鎮座なさっている本物の吉祥天は、美しくも優しく微笑んでいらっしゃいますが、この漫画は美しいタイトルとは正反対の、ドロドロした人間の愛憎関係が展開する重い内容でした。
主役である小夜子は妖しい雰囲気の謎めいた美少女。
その美貌故の理不尽な運命に平然と立ち向かっていく姿が恐ろしくも凛々しいと思った記憶があります。
ラクシュミ~乳海攪拌から誕生したアムリタを持つ14の貴重な宝 まとめ
シンガポールやスリランカでは【デイーワーリー】という祝日があるそうですが、これはラクシュミを家に招き入れるお祝いだそうです。
断食をしたり、もちろんお祈りをしたりして、ラクシュミが自宅に入ってくれるようにお願いするのだとか。
現代でも脈々とラクシュミ信仰は続いているのですね。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。
「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)
もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。
現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。
マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。