【貞淑な女】を意味するサティは創造神ブラフマーの孫にあたり、破壊神シヴァの最初の妻になった女性です。
誰からもうらやましがられる華やかな立場にいたはずの彼女ですが、実は自ら命を絶った悲劇の女性でした。
サティの生涯
ブラフマーの子であるダクシャの娘として生まれたサティ。
美しく成長した娘の婿を選ぼうとダクシャは多くの神々を屋敷に呼びよせました。
ところがサティには既に心に決めた相手がいたのです。
それがシヴァ神でした。
しかし、ダクシャはシヴァを嫌っていました。
父の気持ちを知っていたサティは自分の思いを話すこともできずにいたことでしょう。
でも、婿選びの場に来てくれたら…と期待していたのかも知れません。
シヴァ嫌いの父親はわざと彼を黙殺し、屋敷に呼ばなかったのです。
がっかりしたサティは選んだ相手にかけてあげるはずの花の首飾りを宙に放ってしまいました。
「シヴァ様以外なら結婚したくない」と思っての行動だったのでしょう。
すると光が溢れ、その中からシヴァが登場したのです。
そしてサティの花の首飾りは導かれるように彼の首にかかったのでした。
その様子を見たダクシャは渋々ながらも娘の結婚を認めざるを得ませんでした。
とは言うものの、ダクシャは相変わらずシヴァをバカにしたり、大勢の前で面目を潰すようなことをしたりと陰険な婿いびりを続けます。
サティは抗議しますが、父親はシヴァだけでなく、サティすらも侮辱するようになります。
それに怒ったサティはなんと焼身自殺してしまったのでした。
妻の自殺を知ったシヴァは怒り狂います。
ダクシャの屋敷に乱入し、居合わせた神々たちに暴力を振るい散々暴れまくったあげく、ダクシャの首を切り落としたのでした。
サティ自殺の元凶を殺しただけでは収まらなかったのか、シヴァは妻の遺体を抱いたまま世界中を暴れ回ったのです。
そのせいでシヴァ神のいた後は次々に荒廃していったのです。
これを見かねた調和神ヴィシュヌがチャクラム(円盤)を投げ、サティの遺体を切り刻みます。
するとシヴァ神は正気を取り戻したと言われています。
ちなみにサティの遺体は各地に散らばりましたが、遺体の破片一つ一つがその土地の女神として崇められるようになったそうです。
なお、一昔前のインドには夫を失った妻が、夫側の親族によって強制的に殉死させられる “サティ”という風習がありました。
これは夫を火葬している炎に飛び込んで焼死させるという非人道的で理不尽なことですが、サティの焼身自殺にちなんだものと言われています。
それにしても、女性達に死を強いる風習に自分の名前がついているのをサティ自身は嬉しいとは思わないでしょうね。
エンタメ世界のサティ
女神転生シリーズ
神話といえばメガテンですが、初期の頃にサティは登場しませんでした。
サティがこのシリーズに登場したのはペルソナあたりからだったかもしれません。
ペルソナでのサティはPRIESTESS、聖職者です。
女性の聖職者ということで、つまりは巫女的な感じでしょうか。
魔法はディア、ディアラマ、リカームなど後方の回復支援ばかりで、清らかな女神にふさわしい内容となっていましたね。
次にペルソナ3で登場した時には焼身自殺をしたイメージで描かれており、見た目は清楚というよりも少しギョッとする印象を受ける悪魔です。
種族や属性こそライト属性の女神ですが、使用魔法はアギダインやマハラギダインなど炎属性の魔法に長けた悪魔として描画されています。
今のメガテンファンからしてみれば炎に包まれたサティのイメージが強いのではないでしょうか。
サティ~父ダクシャの悪言で焼身自殺した悲劇の女神~ まとめ
父への抗議のため自殺したサティ。
彼女の敵討ちとばかり、その父を惨殺したシヴァ。
似たもの夫婦と言いましょうか、愛も憎しみも振り幅の大きいカップルだったのではないかと思います。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。
「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)
もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。
現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。
マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。