ドゥルヨーダナと武術師範のドローナ

世界最大の叙事詩であるインドの『マハーバーラタ』は18日間に亘る同族の血で血を洗う凄惨な戦争絵巻ですが、この戦いのきっかけを作ったのが今回の主役ドゥリヨーダナです。

正に諸悪の根源にふさわしい自分勝手でずる賢い性格の100王子の長子について、お話ししたいと思います。

ドゥリヨーダナ|美女ドラウパディーを奪った100王子の長子

古代インド北部のクル族の王の家系に産まれました。

父はクル族4代目の王ドリタラーシュトラで、母はガーンダーリーです。

父親のドリタラーシュトラは盲目だったので王位は一旦彼の弟パードゥが継ぎました。

母のガーンダーリーは2年間も身ごもっていたので、いい加減嫌になったのでしょう、ついに自分の大きな腹を叩いてしまいました。

すると出てきたのは子どもではなく、肉の塊だったのです。

肉の塊だったというドゥリヨーダナですが、人間です。

彼女にとって義父にあたるドリタラーシュトラの父、聖仙ヴィヤーサはその肉塊を100個に切り分けます。

すると一つ一つの肉から100人の男子が産まれたのです。

100人の男子のうち、長子がドゥリヨーダナですが、彼が誕生したとき、宮廷の外では動物が泣き騒いだため、不吉な兆しと噂されたそうです。

後から考えれば、ドゥリヨーダナの暗い運命が予告されていたようにも思えます。

 

さて、王となった伯父のパーンドゥが早くに亡くなってしまったので、父ドリタラーシュトラが盲目ながらも王位を継ぐことになりました。

パーンドゥには5人の王子(パーンダヴァ)がいました。

ドリタラーシュトラは父を亡くした甥っ子達を引き取り自分の子どもたちと分け隔てなく養育したのです。

ドゥリヨーダナは従兄弟のユディシュティラやアルジュナ達と一緒に成長しました。

ところがパーンダヴァの5王子は100王子(カウラヴァ)よりずっと優秀だったのです。

誰が見ても王位にふさわしいのはパーンドゥの方でした。

ドリタラーシュトラは父としての情より王としての責任を重視し、自分の後継ぎにはドゥリヨーダナではなく、5王子の長子ユディシュティラを指名したのです。

普段から優秀な従兄弟達に嫉妬心と競争心を抱いていたドゥリヨーダナは彼らを暗殺しようと動きます。

幸い失敗しましたが、父のドリタラーシュトラは心を痛め、国を半分に分け、カウラヴァとパーンダヴァの国を別にしたのです。

別名:バーラタ、スヨーダナ

【バラタ族】を意味するバーラタという別名はバラタ王という伝説の王の子孫であるという証です。

また【スヨーダナ】には【公明正大な戦士】という意味があるそうです。

マハーバーラタを読むと「名前負け」と思ってしまいますが。

悲劇の同族戦争

父ドリタラーシュトラの心遣いも空しく、ドゥリヨーダナのパーンダヴァへの嫉妬心は募るばかりでした。

与えられた領土インドラプラスタを見事に統治し、繁栄させたユディシュティラ達は即位式にドゥリヨーダナを招待します。

堂々とした従兄弟の姿と傍らに立つ絶世の美女ドラウパディーを見た彼は奸計を巡らし、イカサマ賭博によってパーンダヴァの領土とドラウパディーを取り上げてしまいます。

イカサマ賭博
画像出典:ウィキペディア

そして従兄弟達を13年間追放したのでした。

ちなみにこのドラウパディーは5王子共通の妻となっていました。

13年後無事帰還したパーンダヴァは領土の返還を求めますが、ドゥリヨーダナは突っぱねました。元々返す気などなかったのです。

約束不履行に怒るパーンダヴァ。

クル族内部も二つの陣営に割れて争うようになりました。

そして、遂にカウラヴァ対パーンダヴァの戦争が始まってしまったのです。

 

元々は同族で従兄弟同士の二つの陣営です。

力も拮抗していたのでしょう。

両軍ともに一歩も引かずよく戦ったのですが、パーンダヴァ側にはヴィシュヌの化身であるクリシュナがいて力強い味方となっていました。

カウラヴァ軍はこのクリシュナの策にはまり続け、一族の長老であった司令官ビーシュマと賢明な軍師ドローナを失いました。

そして一番の勇士と名高いカルナもパーンダヴァ一の勇士アルジュナとの戦いで命を落としたのです。

カウラヴァ軍の敗北は決定的でした。

 

戦いの結末は大将同士の一騎打ちでした。

パーンダヴァの長子ユディシュティラの申し出を受けたドゥリヨーダナの前に立ちふさがったのは5王子中一番勇敢で猪突猛進タイプの次男ビーマでした。

彼はドラウパディーを「奴隷女」と侮辱したドゥリヨーダナに対する憎しみを膨らませていたのです。

ビーマとドゥリヨーダナは棍棒で打ち合います。

激しい応酬の末、力で勝っていたビーマはドゥリヨーダナを殴り殺しました。

仮にも王であった者にしては屈辱的な死に方でした。

ドゥリヨーダナ まとめ

国王の長子として産まれたドゥリヨーダナは当然自分が時代の国王と思っていたことでしょう。

優秀な従兄弟に気圧されながらも「自分は国王の息子だ」というプライドで気持ちを抑えていたのだろうと推測します。

ところがいきなり自分ではなく従兄弟に王位を…と言われたら驚きますし、父親を怨みもしますし、当の従兄弟への憎しみは言いようのないものがあったでしょう。

だからと言って卑怯な手で恨みを買い、結局自分も一族も滅ばす羽目になったのは自業自得とばかりは言えない気がします。

戦争にまでならなくても、ドゥリヨーダナのような不満を抱えている人間は現代も多いでしょう。

そう考えると、このキャラクターが一番現代人に近い性格なのではないかと思われるのです。