【イカロス】と聞くと何を連想しますか。

太陽に近づきすぎて落ちた少年、身の程知らずな思い上がりで身を滅ばした少年、届かぬ夢を追い求める理想家…

そんなところまで連想が発展することがありませんか?

 

歓喜の絶頂から暗転

イカロス像イカロスの父ダイダロスは高名な天才職人で、母ナウクラテはクレタ王ミノスの奴隷出身でした。

ダイダロスの指導を受けて修業していたら、イカロスも父親譲りの腕利きの職人になったかも知れません。

しかし、不幸なことに、彼はほんの少年のうちに死んでしまったのです。

そう言えば『超時空要塞マクロス』の必殺技は「ダイダロスアタック」でしたね。

親子が暮らしていたのはゼウスエウロペの子、ミノスが治めるクレタ島です。

ミノスはクレタの王位ほしさに「王位を手にしたら、見事な牛を供えます」とポセイドンに願いました。

その願いは叶ったのですが、牛を捧げるのが惜しくなり、ランク下の牛を捧げたのです。

ポセイドンは嘘をつかれたと怒りました。

そのせいで、ミノスの妻パーシパエーが雄牛に恋い焦がれるようになってしまったのです。

元はと言えば自分の蒔いた種なのですが、パーシパエーは雄牛と交わり、あろうことかその子どもを産んだのです。

妻の不義で産まれた牛頭人身の怪物ミノタウロス。

外には出せませんから、ミノスはこの怪物を閉じ込めるための迷宮(ラビリンス)の建設をダイダロスに命じたのでした。

ダイダロスはミノスの命に従って、一旦中へ入ったら最後、二度とは外へ出られない迷宮ラビリンスを造り上げました。

そこに、ミノタウロス退治のため、アテナイ(アテネ)の王子テセウスがクレタにやって来たのです。

簡単には叶わない目的でしたが、イアソンの時のメディアと同じように、ここにテセウスに味方する王女がいたのです。

ミノスの娘アリアドネ。

そらのおとしものテセウスに一目惚れした彼女は自分の異父兄弟でもあるミノタウロス退治への協力を申し出ました。

テセウスは自分の武芸には自信があったので、ラビリンスからの脱出だけが問題と考えていたようです。

恋するアリアドネは、ラビリンスを造ったダイダロスに脱出方法を聞き出しました。

なぜダイダロスがあっさりと教えてしまったのか謎ですが、やはり神々の加護がテセウスにあったから、ついうっかりしゃべってしまったのかも知れませんね。

テセウスはアリアドネから聞いたダイダロスの助言を活用し、ミノタウロスを退治したのでした。

その後のミノスの怒り、テセウスとアリアドネの逃避行、ディオニソスとの関わりなど、興味深いエピソードもあるのですが、今回はダイダロス・イカロス親子の話だけにしておきます。

怪物ミノタウロスの存在で、アテナイを脅していたミノスは大いに怒り、ダイダロスとイカロス父子を投獄してしまいました。

一説にはラビリンスに閉じこめたとも言われますが、造ったダイダロスにとっては出るのは朝飯前だったと思われますから、ラビリンスへ閉じ込めることはないでしょう。

さてダイダロスは牢の中でも手に入る鳥の羽根を集めると、蝋で塗り固めて大きな翼を作り上げました。

その翼は背中に背負って腕に固定し、鳥のように羽ばたくと空を飛べるというすぐれものだったのです。

親子はこの翼を身に着けると、牢から逃げ出しました。

まずはクレタを離れなければなりませんから、高く飛び上がったことでしょう。

この時ダイダロスは息子に厳重に注意しました。

「太陽に近づきすぎるな、蝋が溶けてしまう」と。

しかし、イカロスはまだ少年です。

脱獄の達成感と解放感、大空を飛ぶ高揚感で大喜びした少年は、父の戒めをコロッと忘れてしまったのです。

高く、高くと飛んでいるうちに翼を固めた蝋は溶け始め、翼はバラバラになり、イカロスは海に落下して死んでしまったのです。

 

まとめ

イカロスの悲劇は《父の忠告を忘れたこと》が原因でしょう。

しかし、彼自身にはなんの咎もないのに(ダイダロスについても100%咎があるとは思えないですよね)王女の恋心のせいで、罰せられたことはかわいそうなことだったと思います。

目の前で落ちていく息子を見たダイダロスはどんな辛い思いをしたことだろう、夫と息子が罰せられたことを知ったナウクラテの思いは…そう考えると、神々の気まぐれに振り回された最大の被害者はイカロス少年ではなかったかと思われるのです。

ちなみに、太陽のごく近くを通る小惑星にはイカロスという名前がついたものがありますが、イカロス的にはどうなんだろうと考えてしまいますよね。