シヴァ神のところを始め、いろいろな神との関連でちょくちょく名前の出るルドラ神。
暴風神、荒ぶる神と恐れられているルドラ神ですが、さて、本当のところはどんな神様だったのでしょう。
今回の主役はルドラ神です。
暴風神ルドラ
ルドラは神々と対立するアスラ族に属すると言われています。
赤褐色で屈強な肉体、黄金に輝きながら、雄の豚に乗る姿で描かれます。
破壊、暴風の象徴と言われていますが、単に破壊するだけではなく、人々に恵みをもたらすという二面性を持ち合わせた神と呼ばれています。
破壊神として有名なのはシヴァですが、シヴァ神も破壊だけではない別な顔を持っていました。
ルドラもシヴァ神同様、破壊行動によって被害を与えたり、時には命を奪うこともありましたが、その反面、薬を用いて人間達の病を治療するという素晴らしい医師でもあったそうです。
インドを含む東南アジア圏はモンスーンと呼ばれる季節風の影響で、湿潤な気候ですが、実は「この気象こそルドラ神そのもの」と言われています。
つまり、暴風雨という被害を起こしますが、作物の成長に必要な恵みの雨を降らせるという恩恵も与えます。
つまり良い面と悪い面がある表裏一体の気象を神格化したのがルドラ神ということになります。
ルドラ神は別名【ブータパティ】とも呼ばれます。
これはシヴァの別名と同じで【悪鬼の主】という意味です。
確かにルドラ神の破壊力という面なら人間に害を及ぼす悪鬼ではあるのでしょうが、筆者はちょっと釈然としない思いです。
【暴風神】というのはそのままですね。
ルドラの出生
「ルドラは破壊神シヴァの原型」という説があります。
元々はルドラが先だったのですが、ヒンディー教でのシヴァの力が強くなったおかげで、似たような職掌のルドラは吸収合併されたのだとか。
ちなみに“踊るシヴァ神”という像に象徴さるようにシヴァは踊りの王という一面を持っていますが、ルドラも歌や踊りの王と言われています。
そんなルドラ神はどうやって誕生したのかと言いますと、その出生には複数の説があります。
創造神プラジャーパティが父で暁の女神ウシャスが母であると言われていますが、プラーナ文献では創造神ブラフマーから誕生したとされているのです。
ブラフマーは4人の神を作りましたが、実の娘に恋して追いかけ回した父親に似ず、この4人は恋愛に疎く(愛欲が少なく)て、子孫を残そうとしなかったのです。
ちょっと前の言葉で言うなら草食系男子というわけでしょうか。
「俺の子どもなのに、不甲斐ない」と激怒したブラフマー。
その怒りのあまり、炎に包まれて真っ赤になってしまいました。
その時、この強い怒りの思念から生まれたのが、太陽のように光り輝くルドラだったと言われているのです。
また、別のエピソードでは自分の子を望んでいたブラフマーの膝の上に青い顔色の子ども(ルドラ)が突如出現したそうです。
何れの説も創造神ブラフマーの子どもとされていますから、ルドラが重要な神と考えられていた証拠と思われます。
また、プリシュニーという名前の雌牛との間に息子を何人かもうけたと言われ、マルト神群と呼ばれる彼らも暴風雨の神とされています。
ちなみにマルト神群は若々しい青年の姿らしいです。
エンタメ世界でのルドラ
ラグナロクオンライン
暴風神ルドラ神は“弓の名手”と呼ばれていることもあり、弓矢は重要な持ちものです。
昨今のゲームではルドラ自身だけでなく、彼の持つ弓矢が登場するものもあるそうです。
一例としてオンラインゲーム『ラグナロクオンライン』に、ルドラの弓が強力な武器として登場します。
状態異常になる確率を半減し、さらに状態異常になった時間も半減するという神武器です。
ヴァジュラとセットで装備することで、威力が上がるというのもインド神話の原典に沿った武器と言えるでしょう。
ルドラの秘宝
『ルドラの秘宝』は、1996年に発売されたスクウェアの作品です。
スーパーファミコンソフトとして発売されたRPGだった『ルドラの秘宝』は、結構人気があったんじゃないでしょうか。
キャッチコピーが「神への挑戦、16日間。」ということで、ボスモンスターとしてルドラが登場します。
雷属性ということで暴風の神という原典に沿っていますね。
WiiやWii Uのバーチャルコンソールで配信されているので、懐かしい気持ちになった方はプレイしてみてください。
ルドラ|治癒と防風という二面性を持つ弓の名手 まとめ
インドのムンバイ東方に位置するエローラ石窟寺院は教科書にも載るほどの有名な寺院です。
そこにルドラ神とされる石像がありますが、恐ろしいほどの怒りの形相でありながら、手には薬箱を持ち、即治療できる準備をしていると言われています。
この二面性が、アスラ出身でありながら、デーヴァ族になった理由なのかも知れません。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。
「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)
もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。
現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。
マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。