阿修羅像

【ジャランダーラ】あまり目にすることのない名前ではないでしょうか?
筆者も初見の名前でした。

でも、このアスラは意外な運命の持ち主でした。
登場かる神や悪魔の数が膨大すぎて、隅々まで理解しにくいのがインド神話の特徴でもありますが、こんな発見もあるのだとちょっと驚くジャランダーラです。

ジャランダーラとは?

楽器か、音色のような名前ですが、実はシヴァ神が作ったアスラ族です。
別名を持っていますが、そのものずばりの【シヴァの破壊欲】というのもあって、「そのまんまじゃん」とつっこみたくなりますね。

また【マハーグラハ=偉大な捕獲者】という名前や、【サインヒケーヤ=シンヒカーの息子】という名前も持っていますが、これは神々を騙して一口だけアムリタをすすって首だけになった不死の悪魔ラーフと同じ別名です。

別名を並べただけで、神々にとってのジャランダーラがどんな存在だったのか、何となくわかるような気がしませんか?

ジャランダーラ誕生の秘密

阿修羅像
阿修羅像

破壊神シヴァが作り出した不死のアスラ、ジャランダーラ。
彼の誕生には雷神インドラが関わっていました。
ある日、シヴァの元に数多くの神々が集まりました。
破壊神という性格には似合わないような気がしますが、彼は来客をもてなそうと「叶えたい願いはあませんか?」と質問したそうです。
するとインドラが遠慮なく「私はあなた(シヴァ)に匹敵するほどの強い破壊力が欲しいのです」と言ってしまったのです。
バカ正直にも程がある-と誰かがつっこんでいれば、この後の展開も変わっていたのですが…。

自分の望みを素直に口に出したインドラ。
彼が強い力を求める欲望にシヴァ神は自分の破壊欲を刺激されてしまったのかも知れません。
或いは「俺が一番。俺の強さには足下にも及ぶまい」という自己顕示欲故だったのか、シヴァ神はその破壊力を解放してしまったのです。
その強大な破壊力から誕生したのが、ジャランダーラでした。
つまり、シヴァがインドラに当てつけようとしてジャランダーラを作り出したと思われます。

超強力なジャランダーラ

破壊力から作られたジャランダーラは文字どおり破壊するだけのアスラだったようです。
その勢いはすさまじいもので、誕生から間もなくアスラの中心人物となったようで、アスラの軍勢を率いると神々のいる天界に攻め入ってきました。

神々も当然負けるわけにはいきませんから、ジャランダーラ軍に抵抗します。
しかしジャランダーラは強力。
負傷する神々も続出したそうです。
霊水アムリタがこぼれて、不死を得られる草になったクシャ草で負傷した神を治療しながら戦い続けました。

しかし、ジャランダーラの勢いを止めることはできなかったのです。
一説ではジャランダーラは創造神ブラフマーから【神々を打ち破る力】を授かっていたとも言われます。
ブラフマーは一体何を考えてたんでしょう?

そんなわけで、無敵ジャランダーラによって、発端となった雷神インドラを始め、維持神ヴィシュヌまで倒れてしまいました。

困り果てた神々は破壊神シヴァに助けを求めます。
実は神々はジャランダーラがシヴァ神によって生まれたアスラと言うことは知らなかったようです。

神々がすがってきたのに気をよくしたのか、さすがにこれ以上暴れられては困ると思ったのか、シヴァは神々の頼みを聞き入れました。
そしてジャランダーラの元へ行くと、自身の化身【ハラ=万物を破壊するもの】の力を使って自分が作り出した、言わば我が子であるジャランダーラを倒したのです。
神々は暴れ者ジャランダーラを倒してくれたシヴァを信頼するようになったそうです。

でも、これってずるい手段だと思いませんか?
自分が黒幕で、皆を苦しめておきながら、救世主として登場して喝采を浴びる…ずるがしこい手でなんだかなあ…と思ってしまいます。
ヴィシュヌ達がジャランダーラの正体に気がつかなかったというのも、情けないですし。

ヴリンダの悲劇

さて、神々はジャランダーラに手も足も出ないという散々な目に遭ったのですが、痛烈な一矢を報いています。

ジャランダーラにはヴリンダという妻がいました。
他の者には厳しくても自分の身内に優しいというのはよくあることですが、ジャランダーラもそんなキャラだったような気がします。
きっと妻ヴリンダには優しかったのではないかと思うのです。

そのジャランダーラが大事にしているヴリンダにヴィシュヌが迫ったのです。
と言ってもそのまま迫ったわけではありません。
ヴィシュヌの得意技は化身です。
彼はジャランダーラに変化してヴリンダの前に現れたのです。
まさか夫の敵が化けているとは思いもしないヴリンダは言われるまま彼と夫婦の交わりを行ってしまいます。
やがて真実がわかるとヴリンダは悲しみのあまり死んでしまいました。

ジャランダーラ本人ではなく、最愛の妻を傷つけるというのは神々のやり方としては、卑怯で残念な感じがします。
ヴリンダの死についてジャランダーラの行動は不明です。
あるいは既にシヴァ神に倒されていたのかも知れません。

ジャランダーラ|破壊神シヴァが作り出した不死のアスラ族 まとめ

ジャランダーラとヴリンダの運命を考えると、シヴァやヴィシュヌのやり方に疑問を感じてしまうのは筆者だけでしょうか?
己の力を誇示するために生み出されたジャランダーラは用済みになるとあっさり始末され、何も知らないヴリンダは騙され傷ついて死んでしまいました。

この二人の悲劇は、神は優しく恩恵を与えてくれる存在では絶対無いと痛感させられるエピソードだと思います。