ヴァルナ

三権分立という言葉は御存知かと思います。
それぞれが生活にとって大事なものですが、今回はその中の司法神であるヴァルナ神を紹介します。

ギリシャ神話ではテミス、ローマ神話ではユースティアとそれぞれ女神でしたが、インド神話の法の神ヴァルナはどんなキャラなのでしょうか?

ヴァルナとは?

ヴァルナその起源は非常に古く、紀元前14世紀頃のミタンニ・ヒッタイト条約文にその名前が登場するそうです。
ミタンニもヒッタイトも世界史の授業では始めの方に出て来る名前ですから、どれほど古いかが想像できますね。
聖典『リグ・ヴェーダ』ではヴァルナは天空の神とされており、ギリシャ神話ではウラヌスにあたる立場です。
ということは、ヴァルナ神はかなり重要な神だったと思われます。

もともとはあの強力な雷神インドラと同格のアスラ族の代表的神だったそうです。
全ての物事を監視しつつ、時には処罰をする司法神という立場でした。
宇宙の秩序と道理を支配していたと言われます。
ヴァルナはとても厳しかったので、恐怖心を抱く神もいたようですが、反省した者を許してあげる広い心と優しさをも持ち合わせた神と言われました。

しかし、時代が下がるとヴァルナ神の役目は次第に他の神々に分散されてゆきます。
と同時に、ヴァルナ神の地位も相対的に下がっていったようです。

ヴァルナにも別名があります。【アディティプトラ】というのは【アディディの息子】という意味です。
このアディディというのは神々の母と称される女神のことで、無限を意味する名前ですから、ガイアのような原初母神だったのではないかと思われます。

他にも【水の王】という意味の【アムブパ】、職掌を表した司法神という別名でも呼ばれました。

ヴァルナは仏教に取り入れられると十二天の一人水天とされました。
この時、司法神であった職掌も考慮されたのか、水の神でもあり、司法の神としても奉られることになりました。
西方の守護神とされています。
水難回避のための雨乞いの呪術や水天法(雨乞いのために水天を供養すると言われています)を作り出したと言われています。

白鳥からマカラへ

7羽の白鳥(または7羽の白鳥が引く車)がヴァルナの乗り物でした。
天空の神が白鳥に乗って駆ける姿はさぞ華麗だったことでしょう。

しかし、ヴァルナ神の地位が下がると乗り物のランクも下がっていきます。
やがて彼に水の神の地位に落ち着くのですが、その時の乗り物は亀或いは海の獣マカラだったと言われます。
マカラは象のような鼻を持ち、とぐろをまいた尾を持つ怪魚だそうです。

契約神ミトラ

古代インドの聖典『リグ・ヴェーダ』中では、ヴァルナとともに讃歌を捧げられている契約の神です。
後代には盟約そのものを意味するようになり、友愛の守護神とも呼ばれるようになりました。
ヴァルナは天空神で、宇宙の秩序と道理を支配すると言われていました。
その職掌が契約=ミトラ神と重なるので、関係ある神と思われていたようです。

厳格な1柱の司法神から3神分立

ヴァルナは4本の腕を持ち、宝石などの装飾品を身につけ、ほら貝を手にした神々しい存在とされていました。
世界の全ての事象に目を配り、厳正に裁いていったとされています。
その厳しさ故に恐れる者も、また治療してもらったことに感謝する者もいたようで、尊敬される存在とされていたのです。

しかし、そんなヴァルナ神はいつの間にか神格を下げられてしまいました。
理由は彼の神格があまりにも多様で広すぎたからと言われています。
要するに「ヴァルナ神、凄すぎる」ということでしょう。
あまりにも一人が万能過ぎると他の存在の影が薄くなってしまいます。

と言うわけで、ヴァルナ神の役割は多くの神々に分担されるようになり、彼自身は絶対的な存在ではなくなりました。
司法神である彼の仕事の一部が契約神ミトラ、天則(リタ)の神アリヤマンに振り分けられたため、この3神は同等神として扱われるようになったのです。

水神(水天)として西方守護神に

ヴァルナは元々水と関係があると言われていましたが、この関係性は次第に強くなっていきました。
有名な叙事詩『マハーバーラタ』によると、神々がヴァルナに水を護るように勧めている描写が見受けられるそうです。
「雷神インドラが神々を支配するように、ヴァルナは水を支配することができる。
海も川も、全ての水が彼に従うだろう」そう説得され納得したヴァルナは水の神となったと言われています。

プラーナ文献によると、ヴァルナは八大世界守護神の一人とされています。
八大世界守護神は神それぞれが各方位を守護しているのですが、ヴァルナは西を護ると言われています。

ではヴァルナはどうして西を護ることになったのでしょうか?
その経緯は物語に残されています。
修行に励む富の神クヴェーラのところにある時創造神ブラフマーが訪れたそうです。
良い機会だと思ったのでしょう、クヴェーラはブラフマーに「自分を守護神に加えてほしい」と願ったのです。
ブラフマーは既に雷神インドラ、ヴァルナ、冥界の王ヤマを守護神にと決めていましたが、クヴェーラを加えれば4神ですから、ちょうど四方を割り当てることができると考えたらしく、クヴェーラの頼みを聞き入れました。
そしてインドラを東、ヤマを南、クヴェーラを北、そしてヴァルナを西の守護神に命じたとされています。

エンタメ世界でのヴァルナ

神々と時には戦う敵の悪魔であるはずのアスラ族なのに、法の番人という言わば表の顔と裏の顔を持つヴァルナ。
その二面性はエンタメ世界でもおもしろい役どころを与えられているようです。

『夢幻戦士ヴァリス』

ヴァルナ(夢幻戦士ヴァリスⅢ)
ヴァルナ(夢幻戦士ヴァリスⅢ)

ここではヴァルナは女性キャラです。
夢幻界の女王ヴァリアの娘で、夢幻界の王位継承者。
実は優子の双子の妹だが、姉と異なり戦士の素質を持っていなかったためか、メガスの侵攻を防ぐことが出来ず母を失ってしまいます。

メガスが優子の手で打倒された『ヴァリス3』では母の後を継いで夢幻界の女王に即位します、魔界の統治者グラメスの侵攻を防ぐことが出来ず囚われてしまいます。
優子に救われた後、魔導師としての力で姉をサポートすべく戦いに同行することになります。

『ヴァリス4』ではやはり魔幻衆の侵攻を防ぐことが出来ずに囚われてしまい、処刑の危機に晒されています。
プレイヤーキャラとしては使用出来ない

パソコン版『ヴァリス2』ではストーリーに直接関わらないチョイ役であり、優子との血縁設定は描かれませんでした。
エンディングシーンにおいて、戦いを終えた優子の元に現れて労をねぎらうとともに、母のあとを継いで夢幻界の女王に即位することを告げるというチョイ役としての登場のみでした。

『グランブルーファンタジー』

ヴァルナ(グラブル)

グラブルに登場するヴァルナは水属性の強キャラです。
7羽の白鳥でもマカラでもなく、タコに乗っている姿で描かれています。
グラブルのほか、『ロード オブ ヴァーミリオン』などタコに乗る姿で描かれることは珍しくないようです。
エンタメ世界では、ワニに乗る姿で描かれることもあります。

『モンスターハンター』

モンスターハンター3Gに登場するG級水属性ランスに「大瀑槍アクアヴァルナ」という武器があります。
20パーセントの会心率など、そこそこ良い武器なのですが、人気はいまいち。
見た目がイマイチと酷評されているんですよ。

大瀑槍アクアヴァルナ
大瀑槍アクアヴァルナ
画層出典:https://blogs.yahoo.co.jp/kizel2002/11332879.html

まとめ

ヴァルナはもともとアスラ族のトップリーダーでした。
それが神々の裁きを行う司法神になり、人間に必要不可欠な水の神となり、西方の守護神となり…次々と立ち位置が変わっていくのには驚きです。
悪が善になってしまう…インド神話の懐の大きさと言うか、大ざっぱさを感じさせるエピソードで、ヴァルナ神は混沌たるインド神話の代表的な神ではないかと感じさせられますね。