大母神ガイアはティターン族と呼ばれるクロノスやレアなどの神の他にも、多くの怪物と呼ばれる者達を産みました。
その中でも有名な一つ目の三兄弟キュクロプスを今回は紹介します。
キュクロプスといってもピンとこない方もおられると思います。
サイクロプスといったらみなさんご存知でしょう。
実はキュクロプスとはギリシャ語で、英語に転写されてスペルも変わり、英語圏ではサイクロプスと呼ばれているのです。
二度も幽閉された鍛冶職人の怪物
その語源に《丸い目》という意味を持ち、その名のとおり額に一つだけ丸い目を持つ兄弟です。
ブロンデス、ステロペス、アルゲスという雷に関連する名前なので、雷の精ではないかという説もあります。
荒々しい性格をしており、絵画には人を喰らう姿が描かれたものもあります。
その反面、意外と手先が器用で、火を自在に操り、色々な物を作り出す鍛冶職人としての才能も持っていたようです。
サイクロプスにはこういう性質があったので、後世の学者の中には火と創造物の化身ではないかと考える傾向がありました。
一つしか目のない彼らを父ウラヌスは忌み嫌い、奈落の底へ幽閉してしまいました。
ウラヌスが彼らだけでなく、自分の子を次々と閉じ込めたことは、それぞれの章で既に紹介していますね。
自分の子を虐待された母ガイアは怒り、子どもたちに「父ウラヌスを倒しなさい」と呼びかけます。
凶暴な父親に脅える多くの子どもたちの中で、母の訴えに応え、父を倒したのがティターン族のクロノスでした。
クロノスがウラヌスを倒し、権力を握った後、サイクロプスは解放されました。
地上に出た彼らは大喜びだったことでしょう。
しかし、何と言ってもサイクロプスは一つ目の巨人です。
その姿は恐怖でしたし、力も当然巨大です。
クロノスも脅威を感じたのか、兄弟を再び奈落の底へ落としてしまったのでした。
長い期間閉じ込められていた彼らは再び戦争によって解放されます。
ガイアとウラヌスの子ということで本来は神族ですが、モンスペディアではその容姿から巨人族にカテゴライズしています。
ティタノマキア
ゼウスがクロノス達ティターン族と戦ったときです。
ゼウスとしては強力な援軍にしたかったのでしょう。
手先が器用なサイクロプスは、ゼウスへの礼として、彼には雷霆ケラウノスを、長兄ハデスには隠れ兜を、ポセイドンには三叉の鉾トライデントを贈りました。
彼らの参戦もあり、ゼウスはめでたく勝利したのです。
ティタノマキア後はヘパイストスのもとで鍛冶業を続けたと言われています。
様々な文献に登場
映画やゲームなどでは額に目がある怪物が必ずと言って良いほど登場しますね。
人の目を引くという点では、わかりやすくて便利なのかも知れません。
この一つ目巨人はサイクロプスがモデルではないでしょうか。
手塚治虫の傑作『三つ目がとおる』では、一つ目ではありませんが、少年が普段は隠している一つの目が開くととんでもないことが起きるという展開で、これもまた【特別な一つ目】の怪物の話ではないかと思うのです。
また、トロイア戦争後のオデュッセウス放浪の10年を描いたホメロスの叙事詩『オデュッセイア』や地理学、天文学などあらゆる知識に関して記述しているプリニウス『博物誌』などにも何回も登場している怪物でもあります。
サイクロプス~実は手先が器用な鍛冶職人だった一つ目の巨人~ まとめ
一つ目巨人のサイクロプス。
古代人にとっては恐怖の対象だったことでしょう。
オデュッセウスの部下を次々に喰ってしまったエピソードは恐ろしいと思いますが、自分が望んだ姿ではないのに、父親から幽閉されるという悲惨な思いをした神にしては、人間に対してそこまでひどいことをしていないんじゃないかと思うんですね。
ところでウラヌスを一発ぐらい殴ることはできたのか、それも気になります。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。
「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)
もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。
現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。
マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。