一昔前の少女マンガなどでは、主人公の冴えない女の子がカッコイイ男子と廊下でぶつかり、目があった途端、胸に矢が突き刺さった-なんてベタな恋愛スタートシーンがありましたね。
この時の矢が恋愛の神キューピッドの矢です。
人の心を自在に操るエロスの矢
これもまたちょっと前のドラマに『ラブとエロス』というのがありましたよね。
ここでのエロスは精神的なものではなく、肉体的な行為そのものを指していました。
エロスの別名であるキューピッドと聞くと、【弓を持って微笑む羽の生えた子ども】というかわいらしい赤ん坊の姿を想像する人が多いと思います。
○○キューピッドという名前の企業でも、そういう赤ちゃんをトレードマークにしているところが多いようですね。
とは言っても、エロスは実は原初の神の一人です。
ガイアやウラヌスと同時期に誕生したとされているのです。
本当は赤ちゃんどころか、老翁の姿が似つかわしいのかも知れません。
ところが、時代が下ってローマ神話とギリシア神話が混じり合っていくと、美の女神アフロディーテに付き従うお伴のような存在になってしまいました。
エロスは手に金の矢と鉛の矢を持ち、神や人の愛情を自在に操る能力があります。
その金の矢で射られると、相手がどんな者であろうと恋に落ちてしまうので、実の父親に恋した少女の悲劇なども生まれました。
また、逆に鉛の矢で射られるとどうしようのないほどの嫌悪感を抱くことになり、アポロンがこのため失恋したということもありました。
矢の力は絶大で、エロス自身も自らの矢の力で人間の娘に恋をしてしまい、大騒動になったこともありました。
相手は絶世の美少女と呼ばれるプシュケです。
我こそ世界一の美女と自信を持っていたアフロディーテはエロスに命令し、「プシュケが世にも醜い男と恋に落ちるように」仕向けたのです。
ところが、エロスは醜い男に金の矢を向けたのですが、どうしたことか自分の指を傷つけてしまい、プシュケに恋してしまったのです。
二人はすぐさま相思相愛の仲になりました。
神であるエロスの本当の姿は見ないことという約束で、二人は夜ごとに愛しあうようになったのです。
神の本当の姿を見てはいけない-というのはゼウスの恋愛でもありますし、日本でも三輪山の神と倭迹迹日百襲姫命の逸話がありますね。
ちなみに三輪山の神の話は箸墓の伝説として伝わっています。
さて、恋愛を満喫していたプシュケでしたが、「姿を見せないのは見にくい怪物だからではないか」と姉にそそのかされ、つい約束を破って寝入っているエロスの姿を見てしまいました。
一説では姉に疑いを吹き込んだのはアフロディーテと言われています。
約束を破ったことに怒ったエロスはプシュケと別れようとします。
しかし、プシュケはエロスを愛していたために何とかもう一度会いたいと切望し、ならばと提案されたアフロディーテの数々の試練を乗り越え、ようやく再会を果たしたのでした。
ゼウスはそこまでの思いがあるなら…
とプシュケに不老不死の酒を与え、彼女はオリンポスの神々の仲間に入ることになったのです。
そしてやっとエロスの正式な妻になることができたのでした。
エロスと星座
エロスにまつわる星座は魚座です。
この星座は2匹の魚の尾がリボンで結ばれた形をしています。
怪物テューポーンに襲われ、逃げようと魚に姿を変えて川に飛びこんだエロスとアフロディーテの姿だと言われています。
恋愛と美の神の姿なので、星占いでも魚座生まれの人は恋愛上手でモテモテらしいですよ。
エロス(キューピッド)~神や人の愛情を自在に操る金の矢と鉛の矢~ まとめ
人間にとって第一次欲求の一つが《性愛》でしょう。
肉体的なものだけではなく、精神的に相手を思いやる、愛しいと思う気持ちから全てが始まるのではないかと思います。
その愛しさが高じて恋愛感情になる…
そう考えるとやはりエロスは始まりの神ではないかと改めて感じますね。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。
「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)
もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。
現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。
マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。