美術館で、翼のついた靴を履いた彫刻を見たことがある人は多いのではないでしょうか?
それが今回の主人公ヘルメス神です。
泥棒達にも愛されたというあまりありがたくないエピソードもあるヘルメス神、さてどんな神だったのでしょうか?
多彩な才能を兼ね備えた神
ヘルメスの父はオリンポスの王ゼウス、母は巨人アトラスの娘マイアです。
ちなみにマイアを含む7人の姉妹はプレイアデス(昴)と呼ばれていました。
星座昴にちなんだ姉妹達です。
マイアを見初めたゼウスはヘラが眠っている隙に通っていたそうです。
これによって、策略家で、ずるがしこく、夜陰に乗じて行動するヘルメスが生まれたと言われています。
そういうところが泥棒達に神としてあがめられたということなのでしょうね。
竪琴や笛などを発明したり、商業の神、旅人の守り神、泥棒の神などとして尊敬される多彩な才能を持つ神として知られています。
ケリュケイオン
ヘルメスが持つ2匹の蛇が巻き付いたデザインの杖。
天界から冥界まで自由自在に行き来できる杖です。
また、あらゆる人を眠らせてしまうこともできるので、父親のゼウスにうまく使われたこともあるようですよ。
タラリア
ヘルメスが履いている「翼のサンダル」です。
翼がついているので、速いスピードで移動可能です。
孫悟空の金斗雲みたいなものでしょうか。
このヘルメスのサンダルは、「タラリア」と呼ばれており、ペルセウスがメデューサを倒すときに借りて、空高く飛び上がって逃げたというエピソードがあります。
鏡のように磨かれた盾
ヘルメスが持つ鏡のように磨かれた盾です。
このヘルメスの盾も、メデューサ退治の時に活躍します。
ペルセウスは、ヘルメスから借りたこの盾を持ってメデューサに近づいたといわれています。
一説には、メデューサ自身の顔をヘルメスの盾に映し出し、メデューサを石化させたともいわれています。
ハルパー
ヘルメスが持つ鎌のように弧を描いた鋭い刀身の内側に刃のついた刀剣です。
これも、ペルセウスがメデューサの首を切り落とすときに使っています。
鎌のように湾曲していることから「鎌剣」と訳されることが多い。
一体成形で作られていると考えられており、古い石像をみるとグリップは握りやすいように山なりになっています。
あまりに古い武器のため、「ハルパーはこれだ!」と言えるような具体的な形状は確定されていませんが、農具であったもいわれています。
湾曲した刃に引っ掛けて引くことにより、強力な切断力があると考えられますが、ペルセウスが使った逸話意外、何かの戦争や、戦い等で使われた記述が殆どないため、ヘルメスのオリジナル武器としての印象がつよいといえるのではないでしょうか。
水星(マーキュリー)
水星の英語名は【マーキュリー】。
これはヘルメスのことです。
太陽に近いので、観測が難しい星もあります。
太陽の近くを往来しているので、伝令神=ヘルメスに見立てられたと言われています。
惑星記号はケリュケイオンの図案をモチーフにしたそうです。
産まれたばかりで泥棒!?
最高神ゼウスの子であり、多彩な才能の持ち主でもあり、神々のメッセンジャーとして人気の高いヘルメスがなぜ泥棒にも人気があったのでしょう?
それは産まれたばかりの彼が行った犯罪=泥棒に関係しているのです。
母マイアは目でたくヘルメスを出産しました。が、ほんのちょっと目を話した隙に彼はゆりかごから出て行ったのです。
そしてあろうことか、異母兄アポロンが育てていた50頭もの牛を盗んでしまったのです。
空腹だったから…と言われています。
「なんで、生まれたての赤ん坊がこんなことができるんだ、あり得ない!」と否定したくなるとは思いますが、これはあくまでも神話ですから。
神のやることですから何でもアリです。
牛を盗まれたアポロンは国中を探し回りました。
神々を一人一人疑い、もちろんヘルメスも疑ったのですが、「この子はまだ産まれたばかりです」というマイアの言葉もあり、まさか赤ん坊が…と一度は疑いを捨てたのですが、そこはやはりアポロンも予言と占術の神です。
小さい異母弟が犯人とわかり、ヘルメスを詰問しました。
ところが、口のうまさは父親譲りなのか、ヘルメスはのらりくらりと言い訳をして、アポロンをごまかしました。
もちろん、アポロンの牛を盗んだのですから、ただでは済みません。
異母兄の性格を知っていたヘルメスは貢ぎ物を用意していたのです。
それが後にアポロンの愛用となった竪琴です。
ヘルメスは大きな亀を捕まえ、甲羅に弦を張り渡し楽器を作っていました。
これは牛を盗む前にやったことと言われています。
つまり、ヘルメスは赤子のときに、亀を仕留め竪琴を作り、牛50頭を盗んだことになります。
アクティブにもほどがある!
と思いませんか?
そんなヘルメスがこしらえた竪琴ですが、その音色の美しさに音楽神は魅了され、牛50頭の窃盗はこれでチャラにするということで落ち着いたのでした。
その後、異母兄弟はとても仲良くなり、ヘルメスがアポロンのお遣いとしてあちこち出歩いたというエピソードもあります。
縦横無尽に世界を駆ける神々のメッセンジャー
ヘルメスには《スピーディにあらゆる場所を走り回る神》というイメージがあります。
あまり良くない言葉ならゼウス達の《パシリ》的な役目を負っていたとも言えるでしょう。
トロイア戦争の発端となった【黄金のリンゴ】を巡る競争のためにヘラ、アテナ、アフロディーテの3女神をパリスのもとへ連れていったのも彼ですし、ヘパイストスが作ったパンドラをエピメテウスの元に連れていったのもヘルメスでした。
また、ヘラが執拗な攻撃をした異母弟ディオニソスをゼウスの頼みで養い親のところへ送り届けたのも彼でした。
また、雌牛に変えられてしまったゼウスの愛人イオはヘラによって百眼の怪物アルゴスにずっと監視されていましたが、アルゴスを倒すことによって彼女を解放したのもヘルメスです。
こういう場合、ヘラはゼウスには出だしせず、手先となった者に八つ当たりすることが多いのですが、ヘルメスに関しては何もしたことがないようです。
頭が良いヘルメスの立ち回りが上手だったのでしょうが、彼にはヘラがこぶしを下ろしてしまうほどの、愛嬌や可愛げがあったのではないかと思います。
ヘルメス~ケリュケイオンと竪琴、翼のサンダルを持つ泥棒の神~ まとめ
またまたアニメの話題ですが『美少女戦士 セーラームーン』にはセーラーマーキュリーこと水野亜美という少女が登場します。
ショートカットの頭の良い女の子で、主役より人気があったそうですよ。
星占いでも水星を持つ人は芸術的センスがあり、頭脳明晰と言われています。
やはり、ヘルメスの加護でしょうか?
最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。
「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)
もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。
現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。
マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。