「支える者」「刃向かう者」「耐える者」を意味する《アトラス》
ティターン族の一人である彼は【天を支える者】として知られています。
筆者などは「地図帳のことをアトラスって言ってたよな」と思ったのですが、メルカトル(メルカトル図法で有名ですね)が地図帳の表紙にアトラスを描いたことにちなんでいるそうです。
アトラスと星座
天を担ぐアトラスの姿が牛飼い座のモデルとされています。
牛飼い座の中で一番目立つのが全天の中でも、3番目に明るいアークトゥルスです。
この星と乙女座のスピカ、獅子座のデボネラで春の大三角形を形作っているので、春の夜空では見つけやすいと思います。
アークトゥルスの次に明るい星がイザールです。
両肩に天空を背負う
さて、アトラスが天を背負うことになった理由を説明します。
古代ギリシア人たちは、空が落ちて来ないのを不思議なことだと考えていました。
この理由をティターン族の巨神アトラスにこじつけたのです。
別章で紹介したようにゼウス率いるオリンポス族との戦い【ティタノマキア】で敗北したティターン神族は、タルタロス=奈落に落とされてしまいました。
しかし、アトラスはティターン族の中でも有力な高い神だったので、ゼウスはタルタロスには落とさず【世界の西の果てで天空を背負う】罰を課すことにしたのです。
とは言え、いくら神と言ってもずーっと空を支え続けているのは過酷なことです。
何とかこの状況から抜け出したいと思ってもおかしくはないと思われます。
そんな日々の中、筋肉脳男ヘラクレスがやって来ました。
彼はゼウスが人妻を誘惑して産ませた子どもで、勇猛ではありますが、激情的な性格であちこちで問題を起こす男でもありました。
ヘラクレスはミュケナイ王に、黄金のリンゴを探しだし、持ち帰るよう命令されていました。
(ミュケナイ王の命令に従わなければならなくなったのも、元々はヘラクレスの自業自得のせいです)
しかし、どうしても黄金のリンゴは見つかりません。
色々な神に聞き込み、最後にアトラスの下にやって来たのです。
アトラスは「リンゴを取って来てあげるから、その間空を支えてくれ」と言い、ヘラクレスに天を背負わせました。
そして、約束を守ってリンゴを持ってきたのですが、そのままこの重荷をゼウスの息子に押しつけてしまおうと考えたらしいのです。
千載一遇のチャンスですからね。
ところが(珍しく)頭の働いたヘラクレスは相手の企みに気がつきました。
なので、うまく理由を作って再びアトラスに天空を担がせたのです。
結局アトラスは、今までどおり空を支えることになってしまったのです。
一説によると、アトラスはペルセウスが倒したメドゥーサの目を見て石になったとも言われています。
というのは、天を担ぐあまりの辛さにいっそ石になりたいとペルセウスに願ったとも、彼を追い払おうとしてメデゥーサを見せられたとも言われます。
理由はどうにせよ、石になって天の重みから解放されたことはアトラスにとっては幸いなことだったのかも知れませんね。
アトラス~世界の西の果てで天空を背負う罰を果たす巨神~ まとめ
天を支える巨神アトラス。
牛飼い座となっても天を支えているとも言われ、彼が石になってしまった名残がアフリカ北西部にあるアトラス山脈であるとも言われています。
辛い罰を受けることで知名度のあるアトラス。
ティターン族故の運命とも思えますが、タルタロスに落とされたティターン族は名前すら知られていない神も多いことを考えると、果たしてどちらが幸せなのだろうと考えてしまいますね。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。
「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)
もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。
現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。
マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。