シャンバラを征く者『シャンバラ』という単語を見て何を連想しますか?

筆者が先ず連想したのは、10数年前のアニメ映画『鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』です。

テレビ番組のヒットと相まって、映画も大ヒットしたので鑑賞された人も多いのではないかと思います。

ゲスト声優として、注目され始めたばかりの小栗旬が出ていましたね。

この映画の設定年代は、ナチスが台頭する20世紀初期のドイツ。

閉塞感あふれる空気の中で、権力を握った野心家の女性が【可能性にあふれる夢の世界、新世界=シャンバラ】を支配しようと攻め込もうとするが…という展開でしたね。

果たして『シャンバラ』とは一体どういう世界として考えられていたのでしょうか?

 

初期の『シャンバラ』

カルキ元々のシャンバラとはヒンズー教の文献に登場する理想郷のことでした。

ヒンズー教の神ヴィシュヌ(仏陀と同一視されることもあります)の10番目の化身カルキが治める国の名がシャンバラだったのです。

現在でもニュースになるヒンズー教の【カースト制】ですが、仏陀はこれを批判しました。

しかし、当時の社会ではそれが基本でしたから、変えるとか、無くすということはあり得なかったのです。

動揺する人々を抑えるために、仏陀はヴィシュヌ神の化身の一人とし、【カースト制】を維持するために、カルキという神を作り出し、シャンバラではちゃんとしたカースト制の元で人々が楽しく暮らしている-という説話を作り出したようです。

余談ですが、ヴィシュヌという名前を見ると20年以上前のアニメ『天空戦記シュラト』を連想します。

このアニメにも仏教やヒンズー教に関した名前や武器などが登場していましたね。

 

チベットにおける『シャンバラ』

時輪タントラやがて時代が進むと、新しい宗教=イスラム教が燎原の炎の勢いで広がり始めました。

その勢いは仏教発祥のインドも例外ではなく、次第に仏教、ヒンズー教は衰退し始めたのです。

インドから押される形で仏教は中国との国境チベット地方へと広がっていきました。

チベットではイスラム教の勢いに対抗すべくインド仏教最後の教典と呼ばれる『時輪タントラ』を作り上げたのです。

その中にもシャンバラは登場します。

そのミステリアスな雰囲気が実際のチベットに似合いだと考えられたのでしょう。

シャンバラはチベットの奥に実在すると言い伝えられるようになったのです。

伝えたのはエキゾチックな単語に引かれた欧米の人々でした。

それが現れたのが有名なジェイムズ・ヒルトンの小説『失われた地平線』です。

 

『失われた地平線』~ヨーロッパの視点

失われた地平線(ジェイムス・ヒルトン)筆者がこの本の名前を知ったのは、中国関係の著作が多い中野美代子氏のエッセイ集からでした。

その中に「欧米人に大変都合の良いユートピアとしてのシャングリラ(小説内ではラマ教の寺院)」についての一章があります。

言うまでもなく、シャングリラとシャンバラは字面も似ていることもあり、チベットに関する言葉ですから、よく混同されます。

と言っても、実際のチベット語のシャングリラには理想郷という意味は全然無いそうです。

ローマ字からの意味では、【肉屋】【包丁】【山道】ということなので、中野氏は【肉切り包丁峠】と訳しています。

どこが理想郷じゃ!と思ったのは筆者だけではありませんよね(笑)

それどころか、出刃包丁を持った山賊が待ち構える危険すぎる山道…という気がします。

チベットというヨーロッパから眺めたら極東の山奥であり、未知の地、ほとんど行った人のいない場所に「自分たちが思う理想郷」があると設定するのはいとも簡単なことだったでしょう。

深読みをすれば、当時激しくなっていた欧米列強のアジア侵略とも関わりがあると考えられそうです。

いずれにしても『失われた地平線』はオリエンタルブームに乗り、大人気を博したそうです。

そう言えばユーミンこと松任谷由実に『シャングリラをめざせ』という曲がありますが、【伝説の国を目指して飛び立とう】という歌詞なので、やはりシャングリ・ラをユートピアと考えているようですね。

 

モンストでのシャンバラ

シャンバラ神化(モンスト)モンストにもシャンバラが登場していましたね。

高難易度の爆絶降臨でタイトルは「輪廻へ導く菩提樹の仙峡」というところが、仏教を彷彿させます。

神化では「時輪金剛シャンバラ」と名付けられ、チベット仏教に見られる「時輪」の文字が書かれています。

ストライクショットの「究竟次第即身成仏」というのも仏教用語で、「血液や呼吸をコントロールする修行を行うことにより生きたまま仏に成る」という意味です。

これもまた、苦しみのない理想郷を表しているということでしょうか。

 

シャンバラとシャングリラ~カースト制の元で作られ混同された理想郷~ まとめ

シャンバラ(モンスト)シャンバラとシャングリラ、一方はカースト制に基づく理想郷、一方は架空のラマ教の寺院、この二つが結びつき、ナチス神話と呼ばれる宣伝活動に効果を上げたという説があります。

シャンバラには深部に空洞があり、そこでは地上より楽に豊かな暮らしができると考えられてもいます。

空想の理想郷なら他人を傷つけることはほとんどないと思われますが、ゆがんだ確信となり、他の人に強いるようなことになれば軋轢を生んでしまいます。

深い山の奥にある理想郷は、自分の心の奥で密かに愛しむのが良いのではないかと思うのです。