ヴィヤーサ

『ラーマーヤナ』と並ぶインドの有名な叙事詩が『マハーバーラタ』です。

今回紹介するヴィヤーサはその作者であり、ヴェータやプラーナなども編纂したとも言われる聖仙です。

ただの執筆者ではなく、多くの英雄達につながる存在とも言われています。

聖仙ヴィヤーサ|叙事詩『マハーバーラタ』の作者

【ヴィヤーサ】という言葉自体に【編纂、編者】という意味があるそうですから、ヴィヤーサの伝説から始まる『マハーバーラタ』に関しては、今考えられる著者とは異なるものだと言えましょう。

父親が聖仙なので、彼も仙人でした。

ヴィヤーサの別名には【風神の子】を意味するマルトプトラ【ランカー島を燃やす者】の意味のランカーダーヒンなどがあります。

二つとも直接ヴィヤーサと関わりがあるものではなく、『マハーバーラタ』やプラーナなどの書物に関わっての名前と考えられます。

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ヴィヤーサの出生

ヴィヤーサ個人について紹介しましょう。

まずヴィヤーサの出生ですが、父は聖仙パラーシャラ、母は猟師の娘でサティヤヴァティーという大変な美女だったと言われます。

二人の間にヴィヤーサが産まれた後、パラーシャラは妻に祝福を与え、処女性を復活させ、彼女の元を去ったそうです。

どういうこと?と不思議ですよね。

パラーシャラはヴィヤーサを産ませるだけの存在だったのかと思ってしまうような行動です。

パラーシャラと別れた後、サティヤヴァティーはクル族の王シャーンタヌと再婚します。

美女だったので、バツイチでも男たちは放っておかなかったのでしょう。

ちなみにヴィヤーサは母親と同行はしていなかったようです。

実家に置いていったのかも知れません。

実はシャーンタヌも再婚でした。

先妻との間には既に長子ビーシュマがいたのです。

しかし、サティヤヴァティーとの再婚の条件は“サティヤヴァティーが産んだ子どもを王位に就けること”でした。

この条件を出したのはサティヤヴァティーの父親だったと言います。

ビーシュマも自分の子ですし、無視したくない、しかもできが良く、回りからも期待されていたのです。

でも再婚の条件は…と苦悩するシャーンタヌ。

その悩みを知ったビーシュマは自ら王位を譲ることにしました。

それだけではなく、将来的な禍根を断つために、自分は独身を貫くことまで誓ったのでした。

そこまでしなくても、と思うのですが、ビーシュマの父親に対する誠意が悲しいですね。

ヴィヤーサとは血のつながりはありませんが、彼の行動にも考えさせられるものがあったのではないかと思います。

母の要求で義妹達と結婚

さて、サティヤヴァティーとシャーンタヌとの間にはめでたく二人の子どもが産まれました。

一人が早世したので残ったヴィチトラーヴィリヤが王位を継ぐことになります。

サティヤヴァティーの父親はしてやったりと喜んだことでしょう。

ヴィヤーサにとっては異父弟にあたるヴィチトラーヴィリヤはアムビカーとアムバーリカーの二人の妻と結婚しました。

ところが、二人の妻を持ちながら彼は子どもができないまま亡くなったのです。

さて困ったのが母親のサティヤヴァティーです。

どうやら彼女が自分の子を王にするように父親を焚きつけ、夫に脅しをかけたのではないかと推測されます。

彼女こそが、自分の家系の血にこだわっていたのではないでしょうか。

サティヤヴァティーは息子の妻だった二人の未亡人に自分の血を継ぐ子どもを産ませようと捨て置いたような息子ヴィヤーサを呼び寄せました。

ヴィヤーサは母親の頼みとあって、修行を中断してクル族の国へやって来ました。

一説では異父弟のヴィチトラーヴィリヤは非常な美形で、誰もが恋したほどだったそうです。

一方のヴィヤーサは仙人として修行していたので身なりにも構わずむさ苦しい格好で、体からは悪臭を発していたと言います。

疎ましいと思ったアムビカーはヴィヤーサと交わる時、目を閉じていたと言います。

彼女は妊娠し、子どもが生まれたのですが、その子ドリタラーシュトラは盲目でした。

もう一人の未亡人アムバーリカーはヴィヤーサが近づいていくと顔面蒼白になってしまいました。

そして彼女から産まれた子どもパーンドゥも青白い顔をしていたのです。

パーンドゥには【蒼白】という意味があるので、正に名は体を表すといったところでしょう。

ドリタラーシュトラとパーンドゥ。

ヴィヤーサの二人の息子から、さらに数多くの子ども達が産まれます。

そして後にこの一族を二分する大戦争が始まることになるのです。

ヴィヤーサ まとめ

産まれたばかりで父親が去り、母親はサッサと再婚して置き去りにされたヴィヤーサ。

それでも自分の運命と仙人修行に励んでいたら母親から「弟の未亡人と子どもを作りなさい」と呼び出され、命令に従って子どもを作る…現代にこんな男がいたら異性からは絶対断られるだろうなと思ってしまうヴィヤーサ。

だからこそ、彼はあの長い書物に自分の子孫達の争いを描くことに集中したのではないかとも考えてしまうのです。