またまた「誰それ?」キャラの登場です。
この名前を聞くのは初めてという人も、この人の夫の名前はイヤと言うほどご存じでしょう。
アースガルドの神々にとって最大最後の敵ロキが夫です。
シギュン
種族: 不明
地域: 不明
ロキの妻としては巨人族のアングルボザの方が知られていますが、シギュンについてはほとんど知られていません。
ただ、ロキがもともと巨人族だったこと、フェンリル達の母が巨人族だったこと、アース親族と対立したことを考えるとシギュンも巨人族だったのではないかと筆者は推理します。
ヴァーリとナリ
ロキはシギュンとの間に、ヴァーリとナリという2人の息子がいました。
シギュンの名前が登場するのは、オーディンの息子光の貴公子バルドルを死なせた事件でアース親族の怒りを買い、捕らえられてしまった時です。
自分の気分次第で好き勝手なことをやっていたロキもさすがにかなり参ったようで、夫を気遣う妻として名前が示されています。
ロキの子どもとしてはラグナログでオーディンを飲み込んだ魔狼フェンリルを始めとするアングルボザとの間の3兄弟が有名ですが、シギュンの息子達には哀しい運命が待っていました。
バルドルの件を始めとして多くの問題行動を起こしたロキはアースガルドを追われました。
行き先々で人間をいたぶったり、神を騙したりしていたのですが、とうとう鮭に変身して川に逃げ込むところまで追い込まれ、ロキの変身を見破ったアースガルドきっての力自慢であり、ロキとも悪友関係のトールに捕まり、洞窟に閉じ込められてしまったのです。
ところが本人のロキだけではなく、アース親族の怒りはその息子達にも及びました。
シギュンが生んだ長男ヴァーリがオオカミに変えられてしまったのです。
オオカミとなったヴァーリは人間の心を失い、本能だけになってしまったのか、弟ナリを捕らえ、引き裂いて殺してしまったのです。
アースガルドの神々はナリの腸でロキを岩に縛りつけました。
すると、ナリの腸はまるで鎖のように強く変化し、ロキがどんなに暴れてもほどけなかったと言います。
それにしても、兄に弟を殺させ、息子の腸で父親を縛るとはアースガルドの神々は残酷なことをしますね。
ところで、ヴァーリが人間の心を失ったというエピソードで筆者は中島敦の『山月記』を連想しました。
ロキ拷問を受ける
これまた自業自得と思うのですが、ロキはある男を殺したためにその娘の憎しみを受けることになります。
それが巨人族の女性スカジ(スカアハ)でした。
父親を殺された恨みを晴らすべく、スカジは捕まえたロキの頭上に毒蛇を置くと、その毒液がロキの顔に滴り落ち続けるようにしたのです。
夫の苦しみを見たシギュンは、ロキが可哀相だと洗い桶を手に持ち、ずっと毒液を受け止め続けたのです。
しかし、毒液は常に滴り落ちるので(よほどの大蛇だったのか、数が多かったのか)、洗い桶はすぐ満タンなりました。
シギュンが洗い桶の中身を捨てに行く時にはロキの顔に毒液がかかるので、激痛にのたうちまわって苦しんでいたそうです。
『古エッダ』中の「ロキの口論」によると、ロキが苦悶するとその振動が大地を揺らしたので、人間界(ミッドガルド)では大きな地震を感じたと記されています。
ロキがこの苦しみから解放されたのは、ラグナロクが訪れたときでした。
イギリスの東北部ゴスフォースという古い町には、北欧神話を記した十字架の石碑【gosforth cross】が残っているのですが、そこに描かれているのは蛇の毒に苦しむロキと夫を気遣うシギュンではないかと言われているそうです。
この石碑はヴァイキング時代の8~10世紀頃のものとされ、北欧神話がスカンジナビア半島から南下して広まっていたということを示す証拠の一つと思われます。
エンタメ世界のシギュン
ロキの拷問にみられる献身的な女性というキャラクターがあるにもかかわらず、あまりゲームやアニメなどのエンタメ世界には姿をみせません。
ブラウザでできるカードゲーム「ディヴァイン・グリモワール」やモバゲーの「大連携!!オーディンバトル」に適役として登場しますが、カードゲームではキャラ設定がイマイチつかめないのでなんともいえませんが、女戦士として描かれているのが意外ですね。
大連携!!オーディンバトルでは、蛇の毒を涙を流しながら器で受ける姿で描かれており、北欧神話のイメージそのものです。
追記:喜多川阿弥
シギュン~ヴァーリとナリの悲劇!拷問を受けたロキを支えた妻~ まとめ
その生涯も不明なシギュン。
彼女が生んだ子どもも異母兄弟のフェンリル達と比べて存在感が薄く、一昔前のメロドラマの【日陰の女】のようなイメージを感じてしまいます。
でもこういう女は同性受けは良くないですし、ゲームキャラとしては動かしにくいでしょうね。
逆にヴァーリ達のことでアース親族に恨みを抱き続けていた彼女がロキをそそのかしてラグナログを導いたという【黒幕説】もアリかなと思います。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。
「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)
もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。
現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。
マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。