アース親族とは敵対していた巨人族の男神です。
もともと巨人族のロキをそそのかし、アース親族にとって大切な物を奪おうとしました。
オーディン達にとって幸いなことに、その企ては失敗したのですが、すさまじい復讐をうけることになりました。
スィアチ
種族: 山の巨人
地域: スリュムヘイム(ヨトゥンヘイム)
別名: シアチ
巨人族の一つ山の巨人族の神で、住んでいる所は巨人の国ヨイゥンヘイムにあるスリュムヘイムとう館です。
鷲の羽衣
スィアチ(シアチ)の持ち物で有名なのが【鷲の羽衣】です。
これはとても便利なもので、身につけるとなんと鷲に変身できるというシロモノです。
最高神オーディンも度々使用していたようです。
ではシアチはどんなふうに使ったのでしょうか?
大鷲、ロキを誘拐する
スリュムヘイム館に住む、莫大な財宝を持つ巨人スィアチ(シアチ)。
彼はある日、アースガルドの神々の威厳に関わる大事件を起こしてしまったのです。
最高神オーディンと、ロキは巨人の国ヨトゥンヘイムを旅していました。
この二人の組み合わせは珍しい気がしますが、ロキはアース親族の仲間扱いされていますので、トールを始め、神々と出かけたり、いたずらしたりということも結構ありました。
さて、オーディンとロキです。
空腹の彼らは牡牛を1頭しとめ、解体した肉を火にかけ焼こうとしたのですが、時間を掛けても、火力を上げても、どうしても肉に火が通らず、生焼けのままでした。
さすがの神であっても、腹をこわしたくないと思うのか、生肉は口に入れようとしません。
つまり、いつまでたっても空腹を満たすことができなかったのです。
空きっ腹を抱えて困り果てたオーディン達の前に巨大な鷲が飛んできました。
「自分にその肉を分けてくれたら、肉が焼けるようにしてあげよう」と鷲が申し出たので、二人は渡りに船とばかり、頼んだのです。
さて、鷲のおかげで牛肉は見事に焼き上がったのですが、肝心の美味しい部分は鷲が全部食べてしまったのです。
報酬と言うことだったのかも知れません。
空腹のせいなのか、激怒したロキは鷲に襲いかかったのですが、逆に爪で引っかけられ、空高く持ち上げられたまま、連れ去られてしまったのでした。
もう、おわかりですね。
この巨大な鷲こそ、巨人スィアチが羽衣を使って変身した姿だったのです。
それにしても、人一倍ずるがしこくて、頭の回るロキが、不意を突かれたとは言え、鷲に誘拐されたというのはびっくりしますね。
若返りのリンゴとイズンの誘拐
正体を表した巨人スィアチ。
ロキに取引を持ちかけます。
最初からこのつもりだったのかも知れなません。
「おまえを逃がしてやる代わりに、若返りのリンゴを管理している女神イズンを連れて来い」という命令でした。
おそらく、リンゴを食べて神々のように若い姿でいたいと思ったのが動機ではないかと思われます。
アースガルドの神々にとって大切な若返りのリンゴを育て管理している女神イズン。
彼女が離れてしまったら若返りのリンゴがどうなってしまうのか、ロキには想像はついたでしょう。
でも、我が身が一番可愛いロキはスィアチとの取引に乗りました。
「このリンゴよりすばらしい若返りのリンゴがある」とイズンのプライドを刺激し、アースガルドからムリヤリ連れ出してしまったのです。
さあ大変。
イズン以外に若返りのリンゴを扱える者はいないのですから、たとえオーディンであってもリンゴを獲ることはできません。
と言うことは食べられないわけですから、神々はみるみるうちに老いていったのです。
自分たちの若々しく、たくましかった姿がよぼよぼの醜い姿に変わっていくので、神々は当然ながら血相を変えて原因を探りました。
そしてイズン不在の原因を作ったロキを問いつめ(つるし上げ?)て「すぐにイズンを取り戻せ」と厳命したのです。
イヤイヤながらも保身のため、再びヨトゥンヘイムに入ったロキは捕まっている女神を木の実に変え口にくわえると、自分は鷹に姿を変えてアースガルド目指して飛び立ちました。
しかし、それを見逃すスィアチではありません。
再び大鷲に変身して鷹のロキを追いかけますが、あと一歩というところでアースガルドの神々が仕掛けた炎の罠にかかって墜落してしまいました。
そしてとうとう焼け死んでしまったのです。
この時スィアチの両目が焼け残ったので娘スカジへの償いとして天上の星にされたと言われています。
シアチ~鷲の羽衣 vs 鷹の羽衣~若返りのリンゴを騙し取る巨人 まとめ
羽衣で姿を変えられるスィアチはロキを誘拐したときのように鷲に変身するなど、風の属性や鳥をモチーフにしたキャラクター設定されることが多いようです。
でも、己れの欲望で引き起こしたイズン誘拐事件の結末がかなり悲惨ですから、それと並べて考えるとムダに爽やかな設定のような気もします。
裏と表、二重人(神?)格でもあったのかなと考えてしまいます。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。
「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)
もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。
現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。
マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。