今回の主人公は以前紹介した【竜殺しの英雄】です。
人間の王子シグルズはシグムンドという王の息子として生まれました。
このシグムンドはオーディンとも関わりがあったため、シグルズは生まれたときから神話の登場人物になる運命を背負っていたと言えるでしょう。
シグルズ
種族: 人間
地域: ミッドガルド
別名: ジークフリード
人間であるシグルズの住む場所は当然ミッドガルドです。
シグルズには【ジークフリード】という別名がありますが、この名前はゲームやSF、ライトノベルなどでよく見かけますよね。
グラム
シグルズの父、シグムンドはオーディンに剣をもらいました。
しかし、オーディンの手で折られ、使えなくなってしまったのです。
その剣を息子のシグルズは、養父の鍛冶師レギンに鍛え直してもらったのです。
グラムの切れ味はすばらしいもので、川に立てて毛糸の房を流してみると、真っ二つになってしまうほどだったとされています。
わかるような、わからないような例えですが、川の流れだけで毛糸を切ってしまうほど、優れていたということでしょう。
リジル
養父レギンの依頼により、シグルズは竜に変身したファフニールを倒します。
彼は竜を切裂くと、その心臓をリジルを使って取り出したとされています。
フロッティ
カワウソに変身した息子をロキに殺された父フレイズマルは賠償として黄金を要求しました。
彼が持っていたのがフロッティという剣です。
その後、フレイズマルは息子のファフニールに殺されたので、その手に渡りましたが、シグルズが倒したため、結果的にシグルズのものになりました。
ヒーローにふさわしい竜殺しの英雄
北欧にはさまざまな英雄譚がありますが、代表的なものの一つが『ウォルスンガ・サガ』に登場する英雄、シグルズのエピソードです。
彼はドイツにあるニーベルンゲン伝説の主人公ジークフリードと同一人物と見なされています。
シグルズがグラムという魔剣を持っていたことは前述しました。
この剣はシグルズの父シグムンドが最高神オーディンから与えられたものでしたが、シグムンドの勇敢さにエインヘリヤルにしたいと思ったオーディンによって戦いの最中にグラムを折られてしまったのです。
エインヘリヤルというのはオーディン直属の戦士で、死者の中から選ばれるものです。
つまり、シグムンドはオーディンにより、死に追いやられたのでした。
父シグムンドは自分の運命を悟り、折れた剣を幼い息子シグルズに与えて戦場に斃れました。
その後、シグルズは鍛冶師のレギンに引き取られ、勇敢の青年に成長します。
また、自分の欲望のために、シグルズを育てていたレギンは魔剣グラムを鍛え直して、養子に授けました。
レギンは、父フレイズマルの黄金を独り占めし、竜となってその財宝を守る実の兄ファフニールをシグルズに殺させようと企んでいたのです。
無論ファフニールが死んだら、シグルズも始末し、莫大な黄金を自分だけのものにするつもりでした。
養父の期待に応え、魔剣グラムを振るったシグルズは、激闘の末、ファフニールを倒します。
その時、全身に竜の返り血を浴びたため、シグルズの身体はあらゆる刃物を通さなくなった(つまり剣では斬れなくなった)と言われています。
ただし、風の気まぐれによって1枚の葉が背中にくっついたため、その部分だけは刃を通す=弱点となったそうです。
このあたり、『耳なし芳一』を連想させますね。
シグルズは竜を解体し、その心臓を食べました。
すると動物の言葉が理解できるようになったのです。
最初に聞いた小鳥の言葉は「レギンはシグルズを殺して黄金を独り占めしようとしている。シグルズを育てたのも、ファフニールを殺させるためだ」という恐ろしいものでした。
育ての恩はあったでしょう。
しかし【やられる前にやる】と思ったのか、シグルズは養父レギンを殺したのでした。
ヒーローには悲劇がつきもの
竜となったファフニールが守っていたのは黄金だけではありません。
指輪アンドヴァラナイトというすばらしい財宝もあったのです。
レギン殺害後、シグルズは当然のこととして、これらを自分の手中に収めました。
力も富も手に入れたあとに若い男が望むのは【美しい女性】でした。
シグルズは運命の恋に落ちます。
相手は戦乙女ブリュンヒルデ。
勇気も知性もある凛々しい美女でした。
ところが、シグルズが手に入れた指輪アンドヴァラナイトには「持つ者に破滅をもたらす」という作者アンドヴァリによる呪詛がかけられていたのです。
そのせいか、シグルズとブリュンヒルデの恋は悲劇的な終わりを迎えることになったのでした。
エンタメワールドのシグルズ
父を幼い頃に失い、育てた養父は自分を利用し、いずれは殺そうとしていた…
シグルズの運命もなかなかハードですね。
竜の血を浴び不死の肉体になり、魔剣を手にすることで無敵の強さになったシグルズ。
しかし、最後は…
という悲劇的な運命を背負うシグルズは、ファンタジーではお手本のようなキャラクターだと思います。
戦士としての麺だけではなく、ドラマ的な要素も多いので、ゲームや漫画など多くの作品に登場し、主人公としてプレイヤーの人気も高いそうです。
シグルズ(ジークフリード)~魔剣グラムと竜殺しの英雄~ まとめ
シグルズの別名【ジークフリード】筆者にとっては田中芳樹『銀河英雄伝説』の主要キャラ、ジークフリード・キルヒアイスですね。
主人公の一人ラインハルトの親友にして唯一の理解者ジークフリードは物語の開幕初期に姿を消してしまいます。
読者が肩すかしを喰らった気分になり、反響もすごかったと聞きました。
ラインハルトとキルヒアイスの二人の関係が、今のライトノベルにおける主従の形の一つを作ったような気がします。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。
「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)
もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。
現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。
マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。