シューとテフヌト|空気と太陽の通り道をも遮る熱愛

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シューとテフヌト|空気と太陽の通り道をも遮る熱愛

世界に初めて登場した男女神がシューとテフヌトです。
この二人を作りだしたのはアトゥムただ1神で、母という存在はいません。しかし、この2神は他の神々の父となり、母となる神でした。

世界初の夫婦神

古代エジプト最古の神話とされる『ヘリオポリス神話』によると、原初の水(ヌン神)から己の意志で誕生したアトゥム神(のちに太陽神と同一化)が産みだしたのがこの2神と言われます。と言っても、アトゥム神には相手がいませんでした。しかし彼の手は女だったので、一人エッチの結果としてシューとテフヌトという2神が誕生したのです。一人エッチではなく、アトゥムのくしゃみやつばが変化したという説もあるそうです。いずれにしても、シューとテフヌトがアトゥム神だけから誕生したというのは間違いないようです。
個人的な感想ですが、子孫の誕生(生殖)に女が必要ないというこのエピソードがエジプト神話における女性の位置を象徴しているような気もしますね。
閑話休題。
アトゥムが産みだしたシューとテフヌトの兄妹は、この世界で最初の夫婦神でもありました。

兄であり夫シュー

まず兄であるシューですが、彼は人々が生きていくために不可欠な空気や太陽の光を司り、生命に息吹を与えるという重要な役割を担っています。風や雲などの比較的危険度が低いと思われる気象現象も職掌としていますが、聴覚や思考能力など人間の感覚もシューが支配する分野とされています。その理由として「音は空気の中を通って伝わるという仕組みを古代エジプト人が理解していたから」と言われています。
彼のたくさんの任務の中で最も重要なのは、天空を支えて太陽が通る道を確保することとされています。
なぜシューがそういう役目をするのかと言いますと、彼の子どもが関わっているのです。
シューとテフヌトの子どもである大地の神ゲブと天空の女神ヌトは兄妹で夫婦となりました。ところがこの二人、ラブラブなのは良いのですが“過ぎたるは及ばざるがごとし”の格言通り、ラブラブすぎました。つまり年中ラブラブ中(エッチ中)で体を離そうとはしませんでした。大地と天空の間を太陽(神々も)が通るわけですから、道がなければ当然通れません。ということは、世界に太陽が現れない、つまり世界は夜のままだったのです。
怒ったシューは自らの手で娘であるヌト神を持ち上げて太陽の通り道を確保したのでした。このおかげで、人間が住める空間もできたとされます。
それにしても、エッチ中の息子夫婦をひっぺがすという状況を想像すると…何というか言葉を失いますね。

妹であり妻テフヌト

テフヌト|空気と太陽の通り道

ではシューの妹であり妻であるテフヌトですが、彼女は湿気や霧など、水分を含んだ空気や太陽熱を司る神とされました。
彼女は、人間の身体に雌ライオンの頭という姿などで表されます。天空を押し上げるシューを助けながら、夫婦仲良く一心同体として世界の安定のために働いていると言われています。

夫婦ケンカなど一回もないだろうと思われるのですが、実はシューと結ばれる以前、家出したことがありました。独身時代暇を持て余したテフヌト。「自分探しに行きます」というわけではないでしょうが、父であるアトゥム(=太陽神ラー)に何も言わず、ヌビア砂漠へ向かってしまったのです。ヌビア砂漠はエジプトの南方にある砂漠で、現在はスーダンにあります。

さて自由を満喫していたテフヌトですが、あまりに我が儘気ままな娘を野放しにしてはおけないと思ったのか、アトゥムは息子(シュー)と知恵の神トトに依頼し、やっと娘を連れ戻すことができたと言います。彼女は獰猛な雌ライオンの姿で砂漠を駆け回っていた(暴れ回っていた)そうですから、かなりのじゃじゃ馬だったのでしょう。
その後、兄シューと夫婦になってからは家出もなく落ちついて夫を助ける妻になったようです。

シューとテフヌト|空気と太陽の通り道をも遮る熱愛 まとめ

世界初の兄妹神であり夫婦神シューとテフヌト。ただし、存在感はあまりなく、父であるアトゥムの印象の影に霞んでいるようにも感じられます。というのも、今後紹介していく予定の二人の子孫たちが現在でも知名度のとても高い神々なのです。挟まれた形になったシューとテフヌトは単なる架け橋的存在になってしまったように思われます。

  • 2021 03.23
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