ヌン|古代エジプト全ての神の始まりとヘリオポリス神話

  • ヌン|古代エジプト全ての神の始まりとヘリオポリス神話 はコメントを受け付けていません

この記事は3分で読めます

エジプト全ての神の始まりヌン

世界に神話は沢山ありますが、その始まりについても種々雑多です。有名なのは大地(ガイア)が最初にあったというギリシャ神話、真っ暗な世界に巨人と牛がいたという北欧神話などでしょうか。
これから紹介するエジプト神話にも様々な話があります。今回は最も古い創世神話の一つと言われる『ヘリオポリス神話』のエピソードを紹介していきたいと思います。ここで世界の始まりとされるのは【水】です。その水がヌンと呼ばれる神です。

ヌンとは?

又の名を【ヌウン】とも言い、【原初の水】とも呼ばれ、古代エジプト全ての神の始まりとなったと言われています。また混沌を擬人化したものとも言われています。
この名前が登場する『ヘリオポリス神話』ですが、エジプトなのにギリシャ風な感じがしませんか?ギリシャにはアクロポリスという世界遺産になっている有名な古代遺跡がありますよね。
実はヘリオポリスというのはギリシャ人によって付けられた名前なのです。元々は現在のエジプトの首都カイロ近郊にあった都市で、古代名は【イウヌ】または【オン】だったと言われています。

インド神話もですが、エジプトにも複数の創世神話があります。そして、やはりと言うべきか、当然と言うべきか、ヌンは様々な話に出現しています。と言っても、特筆すべき活躍はしていないのですが。
創世神話内では“未だに誕生しない世界の全てを内包する、超巨大な澱んだ水の固まり”がヌンとされています。
無の世界で、動くものも光もない漆黒の闇に浮かんでいた水=ヌン。ヌンの中では、自分の形すら成り立たない生命や物質がひっそりとかすかに息づいているだけだったと言います。
この文章を見ながら、筆者は【羊水】を連想しました。言うまでもなく、羊水は妊婦さんが赤ちゃんを育てている水のことです。ヌンは神々にとっての羊水だったのではないかと思われます。

深く澱んで何がいるかもわからない巨大な水の中から現れたものがありました。それが【アトゥム】です。彼はヌン(水)の中から自分自身を生み出し、太陽をもたらして世界に光を与えました。アトゥムは自分の意志によって自分自身を創造したということになります。
だからでしょうか、ヌンこそ全ての元であり、【神々の父】と呼ばれますが、その子であるアトゥムより劣った存在と見なされていたようです。
何と言っても、自らだけでなく、世界すら造り出したのがアトゥムです。しかしヌンは何も生み出すことはなく、始まりの水として単純に存在するだけでしたから、神としてはアトゥムよりレベルが下と考えられてしまったのでしょう。

ヌンの姿と仕事

滅多に表現されることのないヌンですが、太陽神の創造を表現した場面などでは、ひげの男性或いはカエルの頭部をもつ男性として表されるようです。
頭には2本の羽または自身の名を表したヒエログリフが飾られているそうです。ヒエログリフというのは古代エジプトで使用されていた文字のことです。余談ですが、ヒエログリフが彫られたロゼッタストーンについては世界史の授業などで習った方も多いのでは?

何もしないと思われるヌンですが、重要な役割を持っているという説もあります。その一つが、ヌンは宇宙を航行する太陽の舟を持ち上げる任務を負っていたというものです。誕生したばかりの太陽を乗せた舟を原初の海(自分自身?)から持ち上げて、地平線へ運んでいくそうです。ヌンの仕事が毎日繰り返されている日の出のサイクルを表現しているとされます。

また、死産した赤ん坊は来世と関わりをもたない存在とされ、この子どもたちの魂や罪人達の魂もヌンのもとに送られると言われました。
ヌンという存在は、言わば創造された世界の外にあるもので、文字どおり深い淵のようなものとして有ることによって、死者の魂が還る場所になったようです。
またエジプトにとって“母なるナイル川”の水とヌンが同一視されたことによって、太陽も死者もエネルギーを与えられ、再生することが可能になると考えられました。

エンタメ世界のヌン

存在感の薄さ故か、エンターテインメントの世界でもヌンはあまり登場しないようです。子であるアトゥムなら『鉄腕アトム』などすぐに連想が浮かぶのですが…。

※ヘリオポリス テレビアニメ『ガンダムSEED』

神話群の名前である“ヘリオポリス”はガンダムSEEDに登場していました。主人公の一人であるキラ・ヤマトが住んでいたコロニーの名前で資源衛星でもありました。ここで開発されていたガンダムを奪おうとしてザフト軍が襲撃し崩壊してしまったコロニーです。

ヌン|古代エジプト全ての神の始まりとヘリオポリス神話 まとめ

最初の人間はあまり重要視されないというのは、北欧神話の巨人ユミルのエピソードが良い例でしょう。ユミルは何もせず、子どもを作っただけで、その子ども達(オーディン達)に殺されてしまったのですから。ヌンも全ての神の父でありながら、あまり尊敬されているようには感じられません。でも、太陽の運行を担っているという説もあることですから、子どもに殺されるよりはずっとマシかな?と思ってしまいます。

  • 2021 03.03
  • ヌン|古代エジプト全ての神の始まりとヘリオポリス神話 はコメントを受け付けていません
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

関連記事

  1. thoth
  2. アヌビス|ミイラの発祥と死者の魂を計る冥界の神
  3. ラー|ファラオ含め数多くの人々に信仰された太陽神
  4. セルケト|サソリの毒を解毒できる女神セルケトヘティト
  5. セト|暴風の神と太陽の守護神の二面性をもつ破壊神
  6. イシス

記事の編集ページから「おすすめ記事」を複数選択してください。