
すーいーへーいーせーんの おわりにはああぁ~♪
なんてアニメの名曲を覚えてらっしゃる方も多いかと思います。
《ポセイドン》と聞いて私は即この歌が脳内再生されました。
巨匠手塚治虫原作のアニメ『海のトリトン』のオープニング曲です。
今回は海神ポセイドンについて紹介したいと思います。
荒れる自然を象徴する海神
オリンポス12神の一人で主神ゼウスの兄に当たり、海を支配するポセイドン。
美術館のブロンズ像などでは、「トライデント」という三叉の鉾を構えた姿が有名です。
この武器を使い、波を自在に操るポセイドンの気性は海のように荒々しく、地震などの天災も彼が引き起こすと言われています。
とは言っても、その反面、海のように深い包容力を持つ神でもあるそうです。
彼の司る星はその名の通り海王星です。ネプチューンと呼ばれますが、これはローマ神話でのポセイドンの呼び名です。
海王星の惑星記号にはポセイドンの持つトライデントをモチーフにしたマークが使用されています。
トライデント
トライデントは地震や洪水、突風などを引き起こすことができる三叉の鉾です。
その威力は強く、時には人の意志をも操ることができると言われます。
3本の歯は三権分立を意味するとも思われ、様々な国や企業のシンボルとして使われることもあるそうですよ。
ポセイドンとカシオペア座
北極星を探すときの目印となるカシオペア座ですが、実はポセイドンとも関わりがあります。
エチオピアの王妃カシオペアは「私の娘のアンドロメダは海のニンフよりも美しい」と自慢していました。
ところが、ポセイドンの妻アンピトリテは海のニンフ一族の出身だったのです。
人間のカシオペアに侮辱されたと怒る妻に同調したポセイドンは海の化け物クラーケンをエチオピアに差し向けました。
驚く国王たちに「アンドロメダを生け贄に」と命じたのです。
泣く泣く愛娘を海辺の岩にくくりつける国王。
クラーケンに一飲みされる-その瞬間にゼウスの息子ペルセウスが割って入り、クラーケンを倒し、アンドロメダを救出したのでした。
この辺は、ペルセウス英雄譚などに詳しく記されているはずです。
自分の浅はかな行為で娘はもちろん国をも失いそうになったカシオペアは深く反省したそうです。
さすがにポセイドンもそれ以上は追い詰めなかったとか。
ペルセウス、アンドロメダ、そしてカシオペアも死後天上に送られ星座となりました。
カシオペアが椅子に座った形で、しかも沈むことなく天上に浮かんでいるのは、休むことが許されずに、回り続けているためと言われています。
荒々しい海の神
穏やかな地中海とは言え、古代ギリシアの人々は日本と同様に津波や高波に苦しめられてきた歴史があります。
そんな海を象徴しているのが、海王神ポセイドン。
彼は海底深くにある黄金の宮殿に住んでいると言われ、気が向くと地上に現れ、白馬が引くチャリオット(戦闘馬車)に乗って世界中を駆け回るそうです。
そして、その手には必ず海を自由自在に操れる「トライデント」という三叉の鉾が握られているとか。
必須アイテムなんでしょうね。
ポセイドンは海を象徴しているためか、非常に荒々しい性格をしている神です。
女神アテナと領地争いをして負けた際には、その土地に津波、または塩水の泉を起こして都市を壊滅させようとしましたが、ゼウスに叱責され止めたとか。
また、女神ヘラと領土を争った際には川を干しあがらせてしまうなど、八つ当たりをすることもありました。
また海や水関係だけではなく、彼は地震を起こすこともできたのです。
敵に回すと非常に厄介な神と言えましょう。
恋多きポセイドン
荒ぶる神として名高いポセイドンですが、家族をはじめ身内には海のように広大で深い愛情を注いだと言われています。
古代ギリシア人、特に漁民や船乗りたちは、航海の安全と大漁を願い、ポセイドンの守護を受けるために供物などを捧げて祈ったそうです。
《海の都》と言われるベネツィアでは、中世まで海に指輪を投げ入れる「海との結婚」という行事があったとか。
これもポセイドンの加護を受け、海洋国としての座を守りたいためだったのでしょう。
トリトン
ポセイドンの正妻アンピトリテも海のニンフなので、強大な力を持っていたそうです。
彼女とポセイドンの間には三神の子供が生まれました。
この記事の最初に書いたアニメでも有名なトリトンは、知名度の高い神ですね。
愛妻家ではありますが、やはりポセイドンもオリンポス族。
ご多分に漏れず、あちこちでアバンチュールを楽しんでいたそうです。
オリオン
美女が大好きで、ミノス王の娘エウリュアレとの間にはアルテミスとの悲恋で有名なオリオンが生まれました。
ポセイドンの血を引く神や英雄は意外と多いのです。
あのメデューサとも恋愛関係があったとか。
二人はアテナ神殿でデートしていたため、処女神アテナの怒りを買いました。
しかし、叔父に当たるポセイドンを処罰できないアテナはメデューサの髪をヘビに変え、見た者を石にする呪いを掛けたのです。
メデューサにとっては災厄の恋愛でした。
アレイオン
また、姉の女神デメテルと交わった際には、彼女が馬になって逃げようとしたことから、ポセイドンも馬になり追いかけ、その状態でことに及んだと言われています。
ゼウスもたいがいですが、兄のポセイドンも目的のためには手段を選ばずといったところでしょうか。
二人の間には駿馬アレイオンが生まれました。
アレイオンは別名《アリオン》とも言います。
安彦良和氏の名作『アリオン』の主人公の名前です。
このアリオンは自分がポセイドンの息子と信じて父親の下へ向かったのですが…ネタバレは止めますね。
以前アニメ化もされましたので、機会があれば是非鑑賞してみることをおすすめします。
ポセイドン~トライデントを操る海王神とカシオペア座の誕生~ まとめ
ギリシア神話の神々は気まぐれで、指先一つで人間を生かすことも殺すこともします。
その中でも一番気ままなのはポセイドンのような気がします。
なぜなら、彼が体現する海は、刻々と姿を変えるのですから。
底知れない深さと峻厳さを持つ海。
海王神の魅力もそこのあるのかも知れません。

最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。
「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)
もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。
現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。
マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。