数年前死去した漫画家和田慎二は『スケバン刑事』などで人気がありましたが、彼の名作に『ピグマリオ』という作品があります。
アニメ化もされたのでご存じの方も多いでしょう。
『ピグマリオ』では悪役として登場したメデューサでしたが、最後にはその正体が《善悪表裏一体》と解明されました。
深く洞察させる漫画だったと思います。
さて、実際のギリシャ神話のメデューサはどんなモンスターだったのでしょう。
メデューサ誕生
もともとメデューサは見事な髪が自慢の美しい少女でした。
ポセイドンに愛されたため、彼の正妻アンピトリテの怒りを買って、二目と見られない醜い姿にされ、自慢の髪も蛇に変えられてしまったと言います。
また、アテナの嫉妬によって変えられたという説もあるようです。
しかも彼女だけではなく、エウリュアレー、ステンノという姉妹もろとも怪物にされ、ゴルゴン3姉妹と呼ばれるようになってしまったのです。
彼女たちの両親は一体どんな思いをしたことでしょう。
この点も神の仕業の理不尽さを感じますね。
ゴルゴン3姉妹はペルセウスのエピソードに登場します。
メデューサの髪は1本1本が蛇で、その目が合ったものを石に変えてしまうという能力を持っていたため、英雄も苦労したことはペルセウスの記事で紹介しました。
『獄門島』横溝正史
余談ですが、恐ろしい3姉妹とか迫力ある3姉妹、ちょっと変な3姉妹をゴルゴンの3姉妹と小説などで形容されることが多いようです。
横溝正史の傑作『獄門島』にはかなりヘンテコな3姉妹を金田一耕助が心の中で「ゴルゴンの3姉妹」と呼んでいました。
グライアイ
【灰色のものたち】という意味を持ちます。
ゴルゴン3姉妹たちとは姉妹だったと言われる3人の老婆たちですが、3人で1つの目を持ち、それぞれが時間を決めて利用していたとか。
その目を手放すと誰一人見えません。
さて、母親の求婚者からゴルゴンの首を取ってくるように命じられたペルセウスは、姉妹達の居場所を知るグライアイのもとへやって来ました。
しかし、グライアイが簡単に口を割るはずはありません。
同族ですから。
そこでペルセウスは、彼女たちの共有している目を奪ったのです。
何も見えずあわてふためく老婆達を脅して、やっとゴルゴン3姉妹の居場所を聞きだしました。
この時、グライアイからハデスの兜を奪ったとも言われています。
ペルセウスに倒される
グライアイからゴルゴン3姉妹の住処を聞き出したペルセウス。
彼女たちの元へたどりつくと、メデューサと目を合わせないように後ろ向きに進みました。
ヘルメスから借りた「翼のサンダル(タラリア)」と「鏡のように磨かれた盾」、そして「ハデスの兜」を装備し、そこに映るメデューサの姿を確認しながら近づいたのです。
ある説によると、この鏡のように磨かれた盾にメデューサを映して自身の姿を反射させて、石化させたとも言われています。
アテナ達の良いアドバイスもあったのでしょうが、ペルセウスは優れた計略でメデューサの首を切り落としたのです。
メデューサの悲鳴を聞きつけた他の姉妹達が騒ぐのを尻目に、すぐさまキビシスという袋の中にメデューサの首を入れると、姿の消える兜を身につけ、翼のサンダルで飛び上がり、逃げ去ったのでした。
また、ペルセウスは流れ出るメデューサの血を集めアテナに献上しました。
右側の血管から流れた血と左側の血管から流れた血にはそれぞれ違う効果があったようで、異母弟からもらったこの血をアテナは自分のために有効活用したそうです。
ゼウスが鍛冶の神ヘパイストスに作らせ、アテナに送った《メデューサの首を埋めこんだ神界最強の盾》、アイギスの盾が有名ですね。
ペガサス
ペルセウスが切り落としたメデューサの首から滴り落ちる血から産まれたとされる有翼の馬です。
これに乗り、ペルセウスは怪物ケートスを倒し、アンドロメダを救出しました。
一説ではポセイドンとの間に産まれたとも言われます。
西洋美術とメデューサ
ギリシア神話で知名度バツグンなペルセウスのエピソードは芸術家達のモチベーションをかき立てたらしく、西洋美術の多くの題材となっています。
メデューサの《見る者を石にしてしまう》という恐ろしい力は、戦場に立つ兵士達にとってはあこがれの能力だったようで、是非あやかりたいと彼女の首を甲冑や盾などに描いたそうです。
有名なところでは、ポンペイの遺跡にメデューサ柄の胸当てをつけたアレクサンドロス3世(ペルシャを滅ばし、インド遠征途中で亡くなったアレキサンダー)が描かれたモザイク画が残っています。
また有名な画家カラヴァッジョにはメドゥーサの盾(頭上の蛇が踊り狂い目を見開いた女)などの作品もあります。
メデューサ~蛇の髪と石化させる眼を持つゴルゴン3姉妹~ まとめ
あまりエピソードがなく、唯一登場するのは負けて殺されたペルセウスのエピソードしかないというメデューサですが、蛇の髪を持つ怪物になったいわれを知ると可哀相な気がしてなりません。
キルケーにしろ、魔女と言われる女性達は自分にはそれほど責任のない理由で、取り返しのつかない悲惨な運命に落とされることが多いと思います。
当時の女性達は自分に引き寄せて同情したのではないでしょうか。
メデューサが単なる感情だけの恐ろしい怪物だったら神話として語り継がれては来なかっただろうと思うのです。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。
「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)
もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。
現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。
マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。