『青春』という言葉がふさわしい美青年の姿で現される神アポロン。
弓矢を手にした凛々しい乙女姿のアルテミス。
ギリシア神話でも知名度の高い双子神の母は、ティターン族のレトです。
ゼウスに愛された彼女の苦難と栄誉を紹介します。
レトと星座
レトに関係があるとされる星座は一等星アンタレスで有名なさそり座です。
実はレトより、娘のアルテミスの方がサソリ座とは深い関係がありました。
サソリ座と対で語られることの多い星座がオリオン座ですが、アルテミスとオリオンは恋仲になっていました。
処女神であるはずのアルテミスが恋をしたことに、双子の弟アポロンは怒り、サソリを送りました。
膂力に自信があったオリオンですが、さすがに毒を持つサソリには敵わないと海に逃げました。
それを見計らったアポロンはアルテミスに「あんなに遠くの獲物を射ることはできないでしょうね」と弓の腕をからかうことを言って姉をそそのかし、恋人を射殺させてしまったのです。
オリオンの死を嘆いたアルテミスは恋人を天に送り、星座=オリオン座にしました。
その元凶となったサソリも天に送って星座になりましたが、天に送ったのはレトと言われています。
アポロンとアルテミスの母
オリュンポス12神の中でも、数多く石像にされるのが、光の神アポロンと狩猟の女神アルテミスの双子神だと思われます。
アポロンは青年の姿、アルテミスは弓を手挟む乙女の姿で海外の美術館などではおなじみですね。
この輝かしい双子の母がティターン族の女神レトです。
美しい女神は、オリンポスの王ゼウスの寵愛を一心に受けました。
ところが、ゼウスは既にオリンポス12神の一人ヘラを正妻として迎えていたのです。
誇り高いオリンポスの女王は、ティターン族のレトがゼウスの愛人になったと知り、怒り狂いました。
しかも、妊娠していることもわかったのですから、穏やかにいられるはずはありません。
妻の嫉妬に感づいたゼウスは、ヘラが何かやらかす前にと愛しい愛人をウズラに変えて逃がしました。
臨月近いおなかを抱えたレトは、出産するための場所を探し回りました。
ところが、ヘラは「一度でも日の光が当たった場所での出産は許さぬ」ときつい命令を出し、あらゆる場所からレトを追い立てたのです。
レトに同情する神もいましたが、何せ相手はヘラです。
自分が八つ当たりをされてはと文字どおり「触らぬ神に祟りなし」と多くの神が見て見ぬ振りをしていました。
さすがに困ったゼウスがやっと動き、海中から岩を持ち上げ、日の光を浴びたことのない新しい島を作ったのでした。
そしてやっと出産できたのです。
レトはまず娘のアルテミスを産みました。
ところが、出産の神エイレイテュイアをヘラが引き留めたため(エイレイテュイアはヘラの娘)、デロス島でのアポロンの出産には何と9日9晩もかかったと言います。
産婆さんとして母を手伝っていたアルテミスでしたが、あまりの母の苦しみを間近で見てしまったためか、出産がトラウマとなってしまったらしく、その苦しみを味わいたくないから一生結婚しません、とゼウスに願ったとか。
そしてアルテミスは処女神になったのです。
レト(ラートーナ)~ヘラの嫉妬を受け続けた美しき双子神の母~ まとめ
ゼウスの子どもの中でも人気と知名度では1、2を争うアポロンとアルテミス。
二人は正妻ヘラの子どもよりずっと優れていました。
そのため、ヘラの嫉妬と嫌がらせはすさまじいものになりました。
しかし、レトは誇り高かったのではないかと思うのです。
ヘラの嫌がらせに傷ついても【名誉の傷】と感じたのかも知れません。
レトにはヘラからいじめられている弱々しいイメージがありますが、本当は強い母だった気がするのです。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。
「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)
もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。
現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。
マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。