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夜空には季節毎に三角形や四角形など図形を模した星座同士の組み合わせがありますが、秋の夜空は《秋の大四辺形》があると言われています。
この中に四辺形の中に輝く一等星はないのですが、見つけやすいので天文ファンには親しまれている形です。
その一角を成しているのがアンドロメダ座のα(アルファ)星です。
この星座は岩に鎖で縛り付けられた女性の姿と言われますが、その由来はギリシャ神話のアンドロメダです。
エチオピアの王女
アンドロメダはエチオピア王ケペウスと王妃カシオペアの間の一人娘です。
美少女として名高い彼女は若い頃既に伯父に当たるピネウスという婚約者がいました。
評判の美少女だったら、縁談も選び放題、エチオピア国内に留めないで、他の豊かな国に嫁がせればいいのに……と思ってしまいますが、可愛い一人娘を手放したくないと思った両親が身内での婚姻関係を薦めたのかなと考えてしまいます。
口の軽い母カシオペア
アンドロメダは一人娘としておっとり王女らしく成長しましたが、母親のカシオペアはなかなか自我のはっきりした性格だったようです。
彼女も美女でしたが、娘の美貌に自信を持ちすぎていた彼女は「海神ポセイドン様が支配する大海原。そこに住む海の女神はたくさんいらっしゃるけど、誰一人私の娘アンドロメダの美しさに敵う方はいますまい」と言いふらしていたのです。
これに怒ったのが当の海女神達でした。
特にポセイドンの妻であるアンピトリテの怒りはすさまじいものがあったようです。
あるいはアンピトリテ自身の怒りと言うより、同族の女たちからの突き上げが強かったのかも知れません。
愛妻の訴えにポセイドンも動きました。
ポセイドンの怒りと王国の危機
ポセイドンは海からケートス(ティアマト、クラーケンという説も)という怪物をエチオピアに向けて送り出しました。
ケートスは好き勝手にエチオピアの海岸を荒らし回りました。
海産物を根こそぎ奪ったり、建物や船を破壊したり、挙げ句には住民を喰らったりなど多大な被害を与えたのです。
「なぜ急にポセイドンがお怒りになったのだ?」国王ケペウスは神託を求めました。
結果は《おまえの妻カシオペアがアンドロメダの美貌を自慢してポセイドンのお怒りに触れたのだ》でした。
あわてたケペウスがポセイドンの怒りを解く方法を尋ねます。
すると回答は《アンドロメダを生け贄としてケートスに捧げよ》という非情なものでした。
生け贄の姫 アンドロメダ
たった一人の可愛い娘を生け贄に……
神託に青ざめる両親でしたが、こうしている間にも怪物の被害は拡大するばかりです。
為政者としては国民の苦渋を無視することはできません。
そういうしているうちに「アンドロメダ姫が生け贄になれば怪物はいなくなる」という噂が広がってしまい、国民の中にアンドロメダの犠牲を期待する空気ができあがってきたのでした。
もはや時間は掛けられません。
嘆くカシオペアに「元々はおまえの軽率な言葉が原因だ。
まえのせいで私は娘を失ってしまうのだ」とケペウスも嘆いたのですが、ここで毅然とした態度を見せたのが当のアンドロメダでした。
自分が犠牲になっても国が無事ならば……と覚悟を決めたのです。
おっとりした彼女の唯一の自己表現だったように感じられます。
ペルセウス登場
荒々しい波の打ち寄せる岩場にくくりつけられたアンドロメダ。
両親や叔父、人々は遠くからかたずを呑んで見守っています。
そこへ天空から降りてくる白馬と人影がありました。
それがゼウスの息子ペルセウスで、彼はゴルゴン三姉妹を退治して国へ帰る途中でしたが、岩に縛られた少女の姿を不思議に思い、近づいてきたのでした。
美少女に一目惚れしたゼウスの息子は事情を聞くと「私がその怪物を退治しましょう。その代わりに姫を妻に頂けますか?」と申し出ます。
ワラにもすがる思いの両親は一も二もなく同意し、ペルセウスにケートス退治を依頼したのでした。
ちなみにこの時、アンドロメダの叔父にして婚約者であるピネウスは安全な場所に逃げていて、このやり取りを知らなかったと言います。
自分が大事な男だったのでしょう。
エチオピア国王にお墨付きをもらったペルセウスはゴルゴン三姉妹の一人“見る者を石にするメデューサの首”を掲げ、ケートスを石に変えてしまいました。
自分の送り込んだ怪物を倒されたポセイドンはおもしろくなかったでしょうが、ゼウスやペルセウスに肩入れするアテナなどの説得でしぶしぶ自分の負けを受け入れたようです。
この“岩に縛られたアンドロメダ”“ペルセウスに救出されるアンドロメダ”というのは画家達の創作意欲を掻き立てる題材のようですね。
ルーブル美術館にはユトレヒトの絵が、プラド美術館にはルーベンスの絵があります。
異国へ嫁ぐアンドロメダ
さてめでたくケートスは退治されました。
ペルセウスは念願のアンドロメダを妻に……といったところで横やりが入ったのです。
今まで安全な場所で事態を見守っていたピネウスがのこのこと現れ「アンドロメダは私の婚約者だ、どこの馬の骨ともわからぬ者にやっていいのか!」とケペウスに詰め寄ったのです。
弟に難詰されるとケペウスも動揺します。
国を滅ばすかも知れない怪物を倒してくれた青年と言っても、素性もわからない、言わば通りすがりの青年です。
それに約束とは言え大切な一人娘をあげてしまうのは……と今さらながら惜しくなったのかも知れません。
この辺の事情はギリシャ神話にはよくあるパターンですよね。
あのヘラクレスでさえ、約束を反故にされそうになって大暴れしたエピソードもありますし。
ペルセウスはケペウス達の心情を察したのでしょう。
再びメデューサの首を掲げるとピネウスやその仲間を石にしてしまったのでした。
あわてたケペウスはペルセウスに謝ると共に、改めてアンドロメダを嫁がせたのです。
アンドロメダの心境はどうだったのかと心配になりますが、恋愛によくある《吊り橋効果》でペルセウスに心動いたとしてもおかしくないですよね。
何と言っても、ペルセウスはゼウスと美女ダナエの息子ですから、美青年だったでしょうし。
また婚約者とは言え、叔父ピネウスの行動から判断するとどうも誠意のある男とは思えないのです。
自分の危機に助けようともせず逃げたのに、安全になると当然のように権利を主張する……
アンドロメダが「この男サイテー」と思っても不思議はありません。
ピネウスに対する思いなどこれっぽっちもなかったのではないかと思われます。
狭量な男から逃れたアンドロメダはゼウスの息子ペルセウスの妻として、夫の故郷であるアルゴスへと向かいます。
アフリカ大陸のエチオピアからギリシャの一都市アルゴスへはかなりの距離ですが、アンドロメダはその距離を厭うことなくペルセウスに従っていったと思います。
親の言いつけに背かない良い子で生きてきたアンドロメダでしたが、結婚と言う自分自身の一大事には意志を貫いたような感じを受けます。
アンドロメダ|ペルセウスと生贄の姫 まとめ
プラネタリウムでは星の神話がつきものですが、必ずと言って良いほどこのペルセウスとアンドロメダの話が紹介されるようです。
それほど日本人には親しい神話であり、人気の証拠でしょう。
白馬の王子に救われる王女という設定は、小さい女の子達のあこがれをよぶのか、特に女子に人気のあるエピソードでした。
その知名度はエンタメでも無視できないようで、大人気少年漫画『聖★星矢』の主要キャラにはアンドロメダ瞬がいますし、1981年には『タイタンの戦い』という映画が封切られました。
これは2010年にリメイクされたそうですが、ギリシャ神話に沿ったペルセウスの活躍が目立った前作とはかなり内容が違ったようです。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。
「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)
もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。
現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。
マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。