ミノタウロス

ギリシャ神話には数々の怪物が登場しますが、中でも有名なのが【ミノタウロス】でしょう。

ミノタウロスはクレタ島に住む頭が牛、体が人間の怪物でした。

何とも不気味な姿ですが、その出生にも忌まわしい秘密があったのです。

 

牛に恋する女

ミノタウロス
オセロニア

ミノタウロスは牛と人間の女性との間に生まれました。

牛は見事な雄牛でもともと神への生け贄として準備されたものでした。

そして女性は、その牛のすばらしさに目がくらみ神に捧げることを惜しんで、別の牛を生け贄にしたクレタ王ミノースの妻、パーシパエーでした。

ミノースはゼウスの息子の一人で、後に冥王ハデスの部下として仕え、死者の裁きにも立ち会ったと言いますから、決して傲慢な性格ではなかったと思われます。

しかし、ポセイドンに捧げるために見事な雄牛を望んだ彼は、ポセイドンが実際に与えてくれた牛のすばらしさに手放したくなり、自分の牛舎に閉じ込めてしまったのです。

代わりに捧げた牛もなかなかのものでしたが、ポセイドンが与えたものに比べればランク違いだったようです。

さて、ミノースの心変わりに怒ったポセイドンは王妃パーシパエーに目を付けました。

彼女の心に牛に対する恋心を燃え立たせたのです。

とんでもないことを思いつくものだとある意味感心しますが、ポセイドン自身も馬に変身して女性を追いかけていますから、ごく普通の発想だったんでしょうね。

それにしても、自分への生け贄を与えるというのも何か混乱してしまいますよね。

ポセイドンの思惑通り、雄牛に恋したパーシパエーはいても立ってもいられず、何とか思いを遂げようと策を巡らします。

そこで思いついたのが名工ダイダロスでした。

 

牛の子どもを産む

パーシパエーはダイダロスを脅し、強制的に牛の形の模型を作らせました。

美しい雌牛の模型の中に入ったパーシパエー。

雄牛は何も知らず雌牛だと思い交尾したのです。

どういう仕組みになっていたのか不明ですが、思いを遂げたパーシパエーはその結果として雄牛の子どもを身ごもりました。

そして生まれたのが、頭は牛、体が人間のミノタウロスだったのです。

夫のミノースは愕然としたことでしょう。

しかし、立場もありますから表面上は冷静で、生まれた子どもを隔離しました。

隔離したのがダイダロスに作らせた迷宮=ラビリンスだったのです。

クレタ島の奥深く、誰も近づくことを禁じられた迷宮に怪物はただ一人閉じ込められました。

 

退治されるミノタウロス

ミノタウロス
Il Maestro di Cassoni Campani 作

ミノースにはポセイドンの計略ということがわかっていたはずです。

しかし、元は自分のせいですから、怪物ミノタウロスをひと思いに始末することもできず、人前には絶対出さず、迷宮に閉じ込め、ただ生かしておこうとしました。

生き物ですからミノタウロスは食料を要求します。

彼の食料は人間でした。

ミノースはクレタ島ではなくアテナイへ命令を出し、9年ごとに7人の少年少女を差し出させたのでした。

さすがに自分の国民を犠牲にはしたくなかったようです。

このアテナイから来る食料=犠牲者の中にテセウスがいました。

彼はアテナイ王の息子でしたが、事情により自分の出自を証明しなければならなかったのです。

その条件がミノタウロスを倒すことでした。

ミノースの娘アリアドネはテセウスに恋し、彼に協力しました。

例えば迷宮に入ってしまえば帰り道がわからなくなるから-とテセウスに糸を渡したというエピソードは聞いたことがありませんか?

恋する少女アリアドネの協力でテセウスは見事に怪物ミノタウロスを倒し、意気揚々とアテナイへ凱旋したのです。

ちなみにアリアドネとミノタウロスは異父兄妹ということになります。

アリアドネの運命については別の機会に紹介することもあるかと思いますが、こうやってアテナイだけではなく実はクレタ島にとっても災厄であったミノタウロスは消えたのでした。

 

ミノタウロス~迷宮ラビリンスに閉じ込められた悲しきモンスター~ まとめ

ミノタウロスの死に対してパーシパエーが何を思ったか、何も記載はありません。

しかし、ポセイドンによってほんの一時欲情が燃え上がったにすぎないのなら、異形の息子など忘れたい存在だったのかも知れません。

何も知らず、本能だけで人間達を喰らったミノタウロスが本当は一番の被害者だったのかも知れないとも考えるのです。