アニメの名作『銀河鉄道999』を知らない人はいないでしょう。
ヒロインメーテルは憂いを漂わせる美女で、そのミステリアスな雰囲気に引かれた人も多いのではないでしょうか?
さて、この《メーテル》という名前ですが、実は《デメテル》から付けたのではないかと想像されるのですが、ギリシア語の母が《メーテル》なので、そこからだそうです。
デメテルには《母神》としてのイメージが強い女神ですが、そう言えばメーテルも主人公星野鉄郎の母の面影を宿した女性でした。
豊穣を司る女神
豊穣の女神デメテルはゼウスを始めとするオリンポス12神の一人です。
地上に種をまき、それを収穫する役目を請け負っていました。
古代ギリシア人の主食だった穀物の生産に深く結びついていると言われています。
兄弟であるゼウスとの間にペルセポネという娘をもうけ、文字どおり目に入れても痛くないほどかわいがっていたそうです。
この愛娘については長くなりますので別章で紹介したいと思います。
またポセイドンとの間にも娘と馬(!)を産んだそうです。
オセロニア
逆転オセロニアに登場したデメテルはまさに五穀豊穣を意味する稲穂を持った女神として描かれています。
また、ゲーム中、盤面で表になっている間、回復し続け、さらには最大HPをアップさせるコンボスキルなど《回復》に特化したキャラクターです。
ペルソナ2 罪と罰
「ペルソナ2」罪と罰の2作品にもデメテルは登場しますが、残念ながら適モンスター役「デメテール」としてのみです。
女神転生シリーズでは、モンスター(悪魔)を仲魔にしますが、このペルソナシリーズでは、モンスターと交渉してカードを貰い、それを合成することで新たなペルソナを生み出すというシステムでした。
従って、画像も小さいのですよ。
「ディアラマ」という回復魔法を使うところが、デメテルらしさが出ている点でしょうか。
アトラス作品の中では、魔神転生RONDE(ロンド)にも登場しています。
麦の穂
麦の穂はデメテルを象徴するものとされ、西洋の絵画などに手に麦の穂を持ったデメテルの姿がよく描かれます。
また石像にもかたどられているようです。
福岡市の大濠公園にもデーメーテールの石像があるそうです。
乙女座
デメテルの愛娘ペルセポネにちなんだ星座とされています。
または古星座図によると、麦を持つ姿をしているそうです。
星座図の麦の部分はスピカという一等星で、春の大三角形を成す星の一つです。
愛娘ペルセポネ(コレー)の身に起こった悲劇
デメテルの愛娘は最初はコレー(若い娘の意)と呼ばれていました。
とても美しい女神だったので、ゼウスはもちろん、他の男神に見つからないよう母は神経を尖らせて守っていたと言われます。
ところが、突然その娘がいなくなってしまったのです。
デメテルは気が狂わんばかりに泣き叫び、あらゆるものに「娘を見なかったか」と尋ねて歩き回りました。
その結果わかったのは、娘を連れ去ったのは自分の兄弟でもある冥王ハデスで、しかもゼウスがその誘拐に荷担していたということでした。
実はハデスは姪に当たるコレーを見初め、父のゼウスに何とかならないかと相談したのでした。
デメテルに話したら絶対許すはずはないから「サッサと既成事実を作れ」とか何とかそそのかしたのかも知れません。
というわけで、一応オリンポス12神の一人になってはいても存在感ゼロの冥王がこの時だけは積極的に動きました。
ゼウスの暗黙の了解の下、草原で花を摘んでいたコレーの前に地中から登場し、驚いた少女を連れ去ってしまったのです。
母心が大飢饉を起こす
ゼウスが愛娘の誘拐に協力したと知ったデメテルは激怒しました。
そして自分の役割-作物を育てることを投げ出してしまったのです。
彼女が何もしなくなったので、世界は大飢饉に見舞われました。
大地は荒れ、木々は枯れ果て、作物はしおれ、動物も人間も食べるものを失って次々と死んでいったのです。
人間界の有様を見たゼウスは、やっとことの重大さに気がついたのでしょう、デメテルを何とかなだめようとしました。
まずはハデスが自分たちの兄弟であることを改めて諭し「ハデスが治める冥界は地上にも劣らない巨大な国。
その支配者の妻になるのは私たちの娘なら不釣り合いではないだろう」と説得したのです。
しかし、デメテルは頑固に「娘が私の下に帰ってくるまでは一切の交渉に応じない」と言い放ち、ゼウスを恨むばかりでした。
冥界の女王と四季の誕生
このまま地上を荒れたままにはしておけないと、仕方なくゼウスはデメテルの訴えを聞き入れることにしました。
ハデスにコレーを返すようにと言ってきたのです。
冥界に連れ去られたコレーは、自分の意に沿わないことだったので、不機嫌でハンストをしていたため、やつれていました。
ハデスが食べ物を勧めてもガンとして口にしません。
この頑固さは母親譲りのようですね。
しかし、飲まず食わずでは体が持ちません。
コレーはザクロの粒を少し口に入れたのです。
そこへゼウスの使者が来たのです。
ハデスは「彼女は冥界の食べ物を口にしてしまった」と言います。
冥界の食べ物を口にすると、冥界の住人になってしまうというルールがあったのです。
と言うことは、コレーは地上に戻れないのです。
しかしコレーを返さないと、デメテルの怒りは収まらず世界は荒れ果てたままです。
どうしたらよいのか、ゼウスが折衷案を出しました。
つまり、コレーは食べてしまった粒の分、12か月のうち4か月は冥界に暮らし、残りの8ヶ月は地上の母デメテルのもとで生活をするということになったのでした。
紆余曲折の末、正式にハデスは姪の少女を妻にすることができました。
そして彼女はペルセポネという新しい名を与えられ、冥界の女王と呼ばれるようになったのです。
デメテルは再び愛娘と一緒に過ごせることを喜び、娘が地上にいる間は自分の役目=農耕に精を出しました。
しかし、娘が冥界で暮らす4か月は役目を放棄してしまうので、その期間が冬という季節になったと言われているのです。
これが四季が生まれたきっかけとされています。
デメテル(メーテル)~冥界の女王と四季を誕生させた豊穣の女神~ まとめ
母一人子一人のシングルマザー家庭では親子の結びつきが強くなると言うのは現在でもよくあることです。
しかし、デメテルとペルセポネ親子は、その結びつきが異様に強すぎる気がするのは私だけでしょうか?
子どもはいつかは自立するもの、それが強制的なものだとしても、認めようとしないデメテルはひょっとしたらギリシア神話の《毒親》だったかもと思ってしまうのです。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。
「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)
もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。
現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。
マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。