ダイダロスと言うと、第1期マクロスの“ダイダロスアタック”を連想してしまうのですが、皆さんはいかがですか?
変形したマクロスが敵艦隊に強烈な攻撃を仕掛けるのは印象的でしたが、今回の主役とはあまり関係がなさそうです。
この章で紹介するのは、クレタ島であのラビリンスを作り上げた名工ダイダロスです。
アテナイからクレタ島へ
ダイダロスはアテナイで活躍した名工でした。
腕も良く、人気もあったのですが、その分プライドが高かったらしく、自分より腕の良い後輩を恐れ憎み、殺してしまったのです。
その罰としてアテナイを追放され、クレタ島へとやって来たのでした。
クレタ島ではミノースの女奴隷と結ばれ、息子イカロスが産まれました。
イカロスについては以前紹介しましたが、彼の悲劇と、後輩を殺したという事実がダイダロスのイメージを混乱させますね。
まあ、職人気質で自分の腕が世界一と思い込んでいた驕りのせいで殺人まで犯してしまったということかも知れません。
アテナイの事件を忘れることはなかったでしょうが、クレタ島では名工として重宝されていたようですし、それなりに楽しい日々を送っていたダイダロスでしたが、その平穏がぶち壊される時が来たのです。
模型の牛
クレタ王ミノースはゼウスの息子で、妻パーシパエーとの間に複数の子どもをもうけ、穏やかな気候の島で豊かな暮らしを送っていたようです。
ところがある時、海王ポセイドン(叔父ということになります)に雄牛を捧げることになりました。
望みを叶えてもらうための貢ぎ物だったのかも知れません。
ミノースの祈りに応じてポセイドンはそれはそれは優れた雄牛を贈りました。
ところがミノースは欲が出て、その雄牛を自分のものにして、ポセイドンには別の雄牛を捧げたのです。
それに起こったポセイドンはパーシパエーの心に激しい恋情を燃え上がらせたのです。
相手はなんと例の雄牛でした。
人間が雄牛に恋する-考えられないことですが、神であるポセイドンなら簡単にできたのでしょう。
パーシパエーは夜も昼も雄牛に対する思いで気がおかしくなりそうになったあげく、ダイダロスの元を訪ねました。
天下の名工に、雌牛の模型を作れと命令したのです。
もちろん眺めるための模型ではありません。
自分が中に入り、本物の雌牛のフリをして雄牛と交わろうという魂胆でした。
ダイダロスは断ったでしょう。
しかし、相手は王妃、逆らったら命の危険もありますし、やっと手に入れた平穏な日々を離したくはなかったはずです。
職人としての意地もあったでしょう。
本物の牛革を貼り、精巧な雌牛の模型を作り上げたのです。
王妃パーシパエーは喜んでその中に入り、思いを遂げました。
ミノース王の八つ当たり
パーシパエーは恋い焦がれる雄牛と結ばれ、子どもまで産みました。
それが有名な怪物ミノタウロスです。
パーシパエーは自分の思いが叶い幸せだったでしょう。
或いは思いが叶った途端、憑き物が落ちたように雄牛に対する思いが消えてしまったのかも知れません。
ギリシャ神話にはミノタウロス出産後のパーシパエーについての記述が亡いので想像するしかないのですが。
さて、妻は良いとして寝取られ男になった夫ミノースの心中は穏やかではなかったはずです。
と言ってもパーシパエーを罰することは自分の恥をさらすことですし、もともとは自分の欲のせいですから、どうしようもなかったようです。
不満を抱えたミノースの怒りはダイダロスに向きました。
パーシパエーの願いを聞いておぞましい牛の模型を作ったということで、高い塔に息子イカロスとともに閉じ込められてしまったのです。
イカロスの失落
目の回るような高い塔に閉じ込められてしまったダイダロス親子。
理不尽な扱いに我慢する親子ではありません。
発明家の面目躍如と言うべきか、二人は“翼”を作ります。
羽ばたいて塔から脱出する心づもりでした。
ところが、イカロスは若さ故の高揚感からか、高く羽ばたき太陽に近づき過ぎてしまったのです。
人工の翼を貼り合わせた糊が溶け出し、少年は遙か地上に叩きつけられ、若い命を散らしてしまいました。
ダイダロスは息子の失落をその目で見たでしょう。
しかし、どうすることもできず、遺体をそのままにしたまま、クレタ島からイタリアのシチリア島へ逃げ延びたと言われています。
ダイダロス~ラビリンスを造ったアテナイの名工とイカロスの翼~ まとめ
あまりに腕がよすぎる職人は、まともな最期を迎えることが少なかったということは、日本の城を作った職人達が秘密を守るため殺されたことでもよくおわかりかと思います。
名工だったダイダロスはラビリンスだけではなく、王宮の守備などにも詳しかったでしょうし、パーシパエーのことがなくても長生きはできなかったかも知れません。
そう考えるとイカロスは自分の命で父親を救ったとも言えるのではないかと思うのです。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。
「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)
もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。
現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。
マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。