突然ですが、北極星の見つけ方を知っていますか?
一番簡単なのは北斗七星を目印にする方法ですが、カシオペア座を目印にして見つけることも出来ます。
カシオペア座は北の空に位置するWの形の星座です。
この星座の名前はギリシャ神話のカシオペア(カシオペイアとも)に由来します。
カシオペア|美人で口の軽い王妃
カシオペアはエチオピア王ケペウスの妃でした。
二人の間にはアンドロメダという一人娘が生まれ、後継ぎの姫として大切に育てられました。
彼女自身も美女と呼ばれていましたが、アンドロメダの美しさは並びもないほどで国中の噂になるほどでした。
それに舞い上がったカシオペアはとんでもないことを口走ってしまうのです。
「海の精たちがどれほど美しいと言っても、私や娘の美貌には敵わないでしょう」アンドロメダだけでなく、自分のことも自慢しているのが「この人バカなんじゃない?」と言われてしまう理由でしょうね。
カシオペア自身には悪気はなく、単純に《我が子と自分の美貌を自慢した》それだけのことだったのでしょう。
しかし、比べる相手が悪すぎました。
海の精というのは海神ポセイドンに仕える娘達のことで、頂点に立つのはポセイドンの妻アンピトリテだったのですから。
「何言ってるの、人間の分際で!」ギリシャ神話ではあまり感情の動きが描写されないアンピトリテですが、カシオペアの言葉には激怒したようです。
妻の怒りにポセイドンが動きました。
たかが女の戯言と無視するわけには行かないと思ったのでしょう。
巨大な海の怪物ケートス(ティアマト、クラーケンとも言われます)を送り、エチオピアの海岸を襲わせたのでした。
生け贄の愛娘
国王ケペウスは突然の怪物出現に狼狽します。
神託を求めると「この怪物は海神ポセイドン様のお怒り。元はと言えばカシオペアの一言が海神を怒らせてしまったのだ」というお告げが下ります。
カシオペアを叱ったケペウスはポセイドンの怒りを鎮める方法を尋ねます。
お告げは「おまえの娘アンドロメダを生け贄として捧げること」だったのです。
カシオペアは恐慌状態に陥ったことでしょう。
自分の何気ない一言がポセイドンを怒らせ、国をメチャクチャにされたばかりでなく、アンドロメダを生け贄に…と言われるとは。
生け贄と言うことは怪物に喰い殺されるということです。
自分のせいで花の盛りの美しい娘が殺されてしまう…母カシオペアは泣き叫びながら、ポセイドンに許しを乞います。
しかし、ゼウスの兄の怒りは解けなかったのです。
国王であるケペウスは父親としての情に流されませんでした。
妻の軽率な行動を責めたあとで娘を説得したのでした。
アンドロメダは黙って父親の命令に従い、ケートスのエサになるべく、岩場に鎖で縛られました。
怪物の生け贄になるはずだった美少女を救ったのはゼウスの息子、ペルセウスでした。
その後アンドロメダはペルセウスに嫁ぎ、エチオピアから遠くアルゴスへと移ります。
一人娘がいなくなったエチオピアの王位ですが、アンドロメダがペルセウスとの間に生んだ次男(カシオペア、ケペウスの孫)がケペウスの後を継いでエチオピア国王になりました。
カシオペアの性格
美貌自慢をしたことで《傲慢》とか《うぬぼれや》《バカ親》などと言われるカシオペアですが、考え無しの単純な性格の女性としてはよくある行動のように思われます。
自分の美貌に自信のある女性、しかも身分の高い女性なら気心の知れた仲間うちでは「私は綺麗でしょ?娘はもっともっと綺麗なのよ」などと半ば本気で口に出してしまうことも無いとは言えません。
回りが生暖かく笑っているのにも気がつかず、いい気になっている女性は結構いますよ。
カシオペアの《口の軽さ》が災難を呼び寄せた原因ではありますが、思ったことを口にしてしまうというのは、心の中にそれだけしかない=浅い心の持ち主ということですが、裏の気持ちは何もないということではないのかと思うのです。
身分の高い人間だからこそ、空気を読んで、軽々しく自分の思ったこと(好悪も含めて)は口にすべきではないのでしょうが、ポロッと出てしまうところがカシオペアの良いところでもあったのでは?と感じます。
実際近くにいたら、いつもいつも自慢話ばかり聞かされる羽目になったとは思いますが、個人的にはギリシャ神話で《賢夫人》と言われているオデュッセウスの貞淑な妻ペネロペよりはつきあいやすいのではないかと考えます。
カシオペア|まとめ
ギリシャ神話ではペルセウス、アンドロメダだけでなく、カシオペアとケペウスも星座になって天を飾っています。
しかし、他の星座と違ってカシオペア座は沈みません。
他の星は夜が明けると地平線に沈み、疲れを癒していると言われますが、カシオペア座はポセイドンを怒らせた罰としてずーっと天を回っているのだとされています。
それもかわいそうな気がしますね。
余談ですが、少し前までJR東日本は寝台特急を運行していました。
惜しまれつつ引退した列車の名前は《カシオペア》と《北斗星》です。
共に北極星を探す目印となる星座ですね。
夜間運転する寝台特急の名前としては、とてもふさわしいものだと言えるでしょう。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。
「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)
もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。
現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。
マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。