世界に神話は数々ありますが、北欧神話は特に「誰それ?」と思う神が多いような気がします。
それだけ人口に膾炙していないということなのでしょう。
今回取り上げるアングルボザもその一人です。
アングルボザ
種族: 巨人族
地域: 不明
アングルボザのデータは少ないと言うより少なすぎます。
巨人族の女性というだけで、魔女という説もありますが、アース親族の最後の敵となったロキの妻になった女性でした。
魔獣たちの母
『新エッダ』の「ギュルヴィたぶらかし」によると、アングルボザは巨人の国ヨトゥンヘイムに住んでいたと言われています。
ロキとの間に3兄弟を生んだというは知られていますが、それ以外の彼女の人生については名にも伝わってはいません。
ロキの子どもは長男が魔狼フェンリル、次男が大蛇ヨルムンガンド、末っ子が死者の国の女王ヘルとアースガルドの神々に災いをもたらすと予言された3兄弟でした。
『古エッダ』の「バルドルの夢」には、ラグナロクが起こるきっかけとなった、光の貴公子バルドルの死(ロキが犯人と言っても過言ではありません)について書いてありますが、バルドルの父である最高神オーディンが一人の巫女を訪ねて質問するというエピソードがあります。
オーディンは巫女に「おまえは実は巫女でも賢者でもない。3人の巨人を生んだ母親だろう」と質問するそうです。
神々の黄昏=ラグナロクにも関わる人物や神、しかも3人の巨人と言ったらフェンリル、ヨルムンガンド、ヘルを連想しますし、事実この3兄弟の他に該当する者はいません。
その母親ですから、オーディンが訪ねたこの巫女こそがアングルボザではないかと推理されているのです。
だとしたら、ラグナログを予め知っていたオーディンがなぜ原因となるアングルボザの妻を訪ねたのかが疑問に感じるところですが。
実はアングルボザがロキとの間に生んだ3人の子ども達の出生については異なる説もあります。
『古エッダ』の「ヒュンドラの歌」にある文章ですが【ロキは菩提樹で焼いた女の心臓を食べ、ありとあらゆる怪物を生んだ】という説です。
自分の子を妊娠した女神メティスを飲み込んで、アテナを生んだゼウスを連想させる状況ですね。
この場合、該当の女は人間だという説と、巨人族の女アングルボザだという説などがあり、諸々の説が展開されているようです。
エンタメに登場するアングルボザ
邪神ロキの妻であり、神々と戦い、倒した凶悪な魔物達の母という重要な立ち位置にいながら、上述のようにアングルボザ自身の個性はほとんど不明です。
だからこそと言うべきか、色々と想像の翼を広げやすいというものではないでしょうか?
彼女は様々なゲーム作品に登場しますが、そのゲームによって見せる顔は違います。
ある作品ではロキに惚れぬいている愛情溢れる女性だったり、魔物達の母として恐ろしくも妖艶な雰囲気を漂わせていたり、あるいは子ども達以上に強力な力を持つ影の支配者(昔のマンガなら影バン?)のような存在だったりと、多様な姿を見せてくれるキャラクターになっています。
アングルボザ~魔女と呼ばれたロキの妻、そして謎多き巨人の母~ まとめ
実態がわからないからこそ、どんなふうにも想像できる-それがゲームや創作でのアングルボザの動かし易い点ではないかと思います。
ロキや子どもと共にアースガルドの神々と戦う女兵士、夫と子どもを気遣う母親…
彼女の行動によって逆にロキ達のキャラクターも変わってくるようですよね。
それがまた楽しいと思いませんか?
最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。
「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)
もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。
現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。
マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。