メティス、この名前は知らない方もいるかも知れません。
しかし、娘はギリシャ神話でも1、2を争う知名度と人気の高さを誇る女神です。
人気漫画『聖★星矢』でおなじみ、戦いの女神アテナがメティスの娘です。
メティスとは?
海神オケアノスとテーテュースの娘であり、ティターン族の神とも見なされています。
メティスという言葉には【知恵】という意味があるそうで、彼女は【叡智】【思慮】などの知性の神と言うことですね。
ちなみにオケアノスはクロノスの兄弟ですから、その娘であるメティスはゼウスにとって従妹ということになります。
ゼウスとの結婚
オリンポスの主神ゼウスの妻は姉であるヘラが有名ですが、実は最初にゼウスと結ばれたのはこのメティスでした。
ゼウスが最高神となる前段階として父のクロノスを倒したのですが、これにもメティスの助けがありました。
メティスは嘔吐薬を作ると神の飲み物であるネクタルに混ぜてクロノスに飲ませたのです。
クロノスはゼウス以外の5人の子ども(ヘスティア、デメテル、ヘラ、ハデス、ポセイドン)を飲み込んでいましたから、まずは自分の力になる兄弟姉妹を救い出そうとゼウスは考えたようです。
ゼウスの陰謀は成功し、クロノスは最初に石(ゼウスと言われて飲み込んだ物)を吐き出し、次々と飲み込んだ順とは逆(つまりポセイドン、ハデス)の順で吐きだしたと言います。
ゼウスは助け出した兄弟達と協力し、父クロノスを倒し、最高神と認められたのでした。
メティスはその知性を認められゼウスの妻となりました。
しかし、賢明さにかけてはゼウス以上だったメティス。
彼女が妊娠したときゼウスは無視できない予言を聞きます。
世界で最初に誕生した女神であり、ゼウスの偉大な祖母大母神ガイアか「メティスが身ごもっているこどもが男だったらゼウスはその地位を奪われるだろう」と予言したのです。
ゼウスは自分が父クロノスを倒して権力を握ったこと、クロノスもその父ウラヌスを倒したことなどを思いだし、不安に駆られたでしょう。
どうしたら良いものか…ゼウスは悩みました。
メティスを飲み込むゼウス
子どもに自分の地位を奪われるかも知れない…恐れたゼウスがやったのは、自分が倒した父親と同じことでした。
そうです、ゼウスは腹の子どもごと、メティスを飲み込んでしまったのでした。
あわれメティスは一巻の終わり…とはなりませんでした。
何と言っても神ですから、ゼウスの胎内で子どもと一緒に生き続けていたのです。
これはクロノスに飲み込まれたゼウスの兄弟達が生きていたのと同じパターンと考えられるでしょう。
しかも一説によるとメティスはゼウスの体の中で子どものために鎧兜を作っていたそうです。
そして剣を作るために鉄を叩いたので、その音がゼウスの頭に響き、ゼウスは頭痛に悩まされることになったのだとも。笑っちゃうような展開ですよね。
頭痛の酷さに耐えかねたゼウスは鍛冶の神であるヘパイトスに自分の頭をたたき割るように命じます。
息子ヘパイトスはためらいながらも父の頭に斧を振るったのですが、そこから飛び出したのが、母親手作りの鎧兜に身を固め武器を手にした女神=アテナでした。
娘を送り出したメティスは、その後完全にゼウスと同化したとされています。
ゼウスはメティスを飲み込んだことで、彼女の知性や叡智を自分のものにしたと言われています。
まとめ
賢すぎるメティスはそのおかげでゼウスの妻となりましたが、それが仇となって飲み込まれてしまう羽目にもなりました。
彼女はゼウスのために行動し、ゼウスのために娘を産んだというそれだけの役割しか与えられなかったように感じてしまいます。
ヘラのように感情的な女神も好悪が分かれるところですが(筆者は人間的で好きです)メティスは存在感が薄すぎて親しみが感じられないのが、つくづくもったいないと思います。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。
「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)
もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。
現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。
マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。