インドの蛇神様の名前をナーガと言います。
これは男性名で、女性名はナーギです。
1柱の神というわけではなくて、一族があるようです。
ちなみにインドで蛇が信仰されるのは【蛇は脱皮をして生まれ変わるから=不死の象徴】とされるからと言われています。
現在でも信仰されている蛇神
ナーガの姿は【蛇の尾と人間の顔を持っている首回りがコブラのように膨らんだ】姿で表現されることが多いようです。
ヒンドゥー教が発生する以前から、インドでは神として深く信仰されていました。
古代インドの聖人カシュヤパは聖仙ダクシャの娘で創造神ブラフマーの孫娘に当たるカドゥルーを妻としました。
彼女は千個の卵を産んだのですが、そこから孵ったのがナーガ達です。
ナーガは地底の世界(パーターラ)に住んでいると言われています。
毒蛇ですから、相手を即死させるほどの猛毒を持っていますし、前述のように脱皮を繰り返して生きて行く強い生命力との連想から、“死と永遠の再生を象徴するもの”として篤く尊崇されているのです。
ナーガ族の中にもやはり力の優劣があります。
特に強大なナーガは「ナーガラージャ(蛇の王)」、「マハーナーガ(大蛇)」と呼ばれました。
これらの強力なナーガ族は、霊水アムリタの水滴を嘗めたため、不死になったとも言われています。
このエピソードについては次章で詳しく紹介しますね。
毒蛇という性質から、ナーガには【悪魔】のイメージが強いような気がします。
確かに猛毒を持つ、巨大な蛇の神という存在には恐怖しか感じないでしょう。
事実、ナーガは神々と敵対することもあるのですが、たまに手助けもしてくれるのです。
例えば天地創造の乳海攪拌のときには、攪拌する棒として自分の身を差し出しました。
ナーガと神々の友好関係エピソードはいろいろありますが、これもナーガの強力なパワーを神々が自分の身に取り入れようとしたためではないかと思われます。
ナーガは意外なことに人間に対しては友好的です。
人間と恋に落ちてしまったケースもあるそうですよ。
因縁の対決 ナーガ vs ガルーダ
蛇神ナーガは、調和神ヴィシュヌの神鳥ガルーダとは敵対関係になっています。
それはガルーダの母ヴィナターとナーガの母カドゥルーが同じ夫をもっていたことが原因でした。
要するにカシュヤパは二人の妻を持っていたのです。
聖人なのに-と思いますが、それは現代の感覚で、当時は聖人であっても複数の妻を持つことは許されていたのでしょう。
二人の妻は日常的に対立していたようです。
それが高じてあるとき賭をすることになりました。
しかも、とんでもない条件付きでした。
「賭に負け方は勝った方の奴隷になる」という条件だったのです。
賭の結果はカドゥルーの勝ちでした。
しかし、この結果はデタラメでした。カドゥルーがナーガに命じて、イカサマをしたのです。
ヴィナターは約束通り、カドゥルーの奴隷としてこき使われる日々を過ごす羽目になったのです。
ガルーダは母の苦境を知るとナーガに母を解放するように訴えました。
ナーガは「じゃあ、霊水アムリタを持って来たら君の母親を解放してもいいよ」と約束したのです。
アムリタは神々の飲み物ですから、ガルーダが手に入れるのは苦労したようです。
でも何とかかんとかして、ガルーダはナーガへアムリタを届けました。
「やったーラッキー♪」受け取って喜ぶナーガに「神々の飲み物だから、身を清めてから飲むんだよ」とアドバイスをするガルーダ。
その言葉に従って沐浴するために、一旦アムリタをクシャ草という薬草の上に置きました。
するとナーガが沐浴している隙に、雷帝インドラが盗んでしまったのです。
インドラから言わせれば「アムリタは神々の物。取り返しただけだ」ということなのでしょう。
せっかく手に入れかかったアムリタを鼻先で取られたナーガはさぞ悔しかったことでしょう。
諦めきれなかったのか、アムリタを置いていたクシャ草をなめ回したのです。
このクシャ草は鋭い葉を持っている植物だったので、このとき、ナーガの舌が2つに分かれてしまったのだという説があります。
蛇の舌は確かに2つに割れていますよね。
このナーガとガルーダ、因縁の対決はガルーダの章でも紹介します。
仏教とナーガ
ヒンドゥー教と仏教の融合はインドで特有のものですが、ナーガも仏教に取り入られ、仏教を守る8神=八部衆とさて、【龍】と同一視されるようになりました。
龍は水中に住み、雨や雲をもたらすとされています。
【龍】は“水に縁のある神”で、仏陀が誕生したとき産湯(湯ではなく清水)を注いだのも龍と言われています。
エンタメ世界のナーガ
『はるかなるレムリアより』高階良子
ガーリー神のところで紹介した少女マンガです。
古代レムリア大陸を統治していたラ・ムーと女神アムリタデヴィ。
彼女の生まれ変わりであるルイを守るノンとして転生したのがナーガラージャでした。
【蛇の王】ではありますが、ここのナーガラージャは龍として描かれ、なかなか凛々しい青年でした。
前世でアムリタデヴィをレムリアから掠い、レムリア滅亡の原因を作った鬼神ガアリィ(ガーリー)を倒したナーガラージャはアムリタデヴィと心を1つにし、新たなラ・ムーとなったのでした。
テレビアニメ『天空戦記シュラト』
天空界を治める調和神ヴィシュヌを守る八部衆の一人として龍王リョウマというキャラがいます。
龍なのに必殺技は“龍王火炎戟(かえんげき)”など火に関係したものでした。
制作エピソードによると、龍王だから水というのは安易だから、あえて火を武器にしたということです。
友情に厚く、誠実で頑固な熱血漢をまだ新人だった山寺宏一が演じ、人気キャラになりました。
ナーガ|蛇の舌が2つに分かれた理由と不死の象徴 まとめ
もともとナーガは“コブラ”を神として崇めたのが始まりと言われているそうです。
しかし、インドから中国に入ったとき、コブラは中国にはいませんから漢字で龍と翻訳され、それが仏教の八部衆龍になったそうです。
いずれにしても強大な力を感じされる神様ですね。
私見ですが、コブラのままだったら、日本ではあまり信仰されなかったのではないかと蛇が苦手な筆者は感じたところです。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。
「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)
もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。
現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。
マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。