ヘイムダルという名前を聞いても「それ誰?」という方も多いと思います。
ただでさえ知名度が低い北欧神話。
その中でもヘイムダルを知っている人は【かなりの通】だと思いますよ。
知名度は低いけど、かなりの重要人物なのが、このヘイムダルなのです。
ラグナログを告げる番人
種族: アース神族
地域: ヒミンビエルグ(アースガルド)
別名: 神々の道の番人、人類階級制度の始祖など
ヘイムダルはアースガルドの出入り口である神々の道の番人で、巨人族が侵入してこないように見張る役目を請け負っています。
母親は海神エーギルの娘である9人姉妹と言われています。
姉妹の誰なのかと言うことについては後ほど説明します。
優れた聴力と眼力の持ち主で、アースガルドに危険が迫ると、すぐさま神々に知らせるという重要な役割を担っているのです。
アースガルドと人間の世界をつなぐ虹の橋ビフレストのそばのヒミンビエルグに建つ館に住んでいます。
別名の【人類階級制度の始祖】については、後で紹介しますね。
ボウズ
ヘイムダル所有の剣ですが、どんな力があるのか、詳しいことはわかりません。
ゲーム『神姫プロジェクト』では、ヘイムダルが造った剣として登場しています。
ギャラルホルン
へイムダル所有の角笛で、この角笛が吹き鳴らされると神々が集結すると言われています。
というのは、この角笛はただの楽器ではなく、最終戦争(ラグナロク)の開始を告げる角笛なのです。
巨人たちのアースガルドへの侵入を知らせました。
平時には知恵の神ミーミルのコップとして、泉の水を飲むときに杯として使用され、使わないときは世界樹と呼ばれるユグドラシルの根元にしまってあると言われています。
美形の見張り神
神々の国アースガルドと人間の国ミッドガルドをつなぐのが虹の橋ビフレストです。
ここで、巨人族が侵入しないように見張っているのが、今回の主人公ヘイムダルです。
ヘイムダルの母は海神エーギルの娘である9人の姉妹と言われていますが、ちょっと不思議な感じがしますよね。
この理由は、9人姉妹というのが海の波を擬人化したものであって、波間にきらめく光が神となった-つまりヘイムダルになったからと考えられているのです。
だから9姉妹の誰か一人が母というわけではないのですね。
ヘイムダルという名前には【宇宙の中心】という意味が秘められているとも思われているので、母とされる9人姉妹は、北欧神話の世界樹ユグドラシルを中心に広がる9つの国(アースガルドやミッドガルドの含む)を表しているとも考えられています。
このようにすばらしい名前の由来からも伺えるように、ヘイムダルが神々の中でもかなり重要な位置にいることがおわかりかと思います。
そしてヘイムダルは【アース神族の中で最も美しい】と言われているのです。
今まで美形の貴公子としてオーディンの息子バルドルや光の神フレイを紹介しましたが、それらよりもヘイムダルの方が美形なんですね。
そのヘイムダルのまたの名は【白いアース】と言い、黄金の歯を持ち、昼夜を問わず100マイル(約160㎞)先まで見通せる眼力と、研ぎ澄まされた聴力(草の生える音や羊の毛が伸びる音さえ聞き逃さない)を持っているのです。
ヘイムダルの睡眠時間は鳥よりも短いとされ、見張りには最適のふさわしい能力とも言えますね。
本人の体力が心配ですが。
彼の持つ超人的な能力は、知恵の巨人ミーミルに片耳を差し出した代償として手に入れたという説があります。
だとすれば【神々の番人】という大変重要な責務を全うするために、この取引を行ったのかも知れません。
仕事の鬼と言うべきでしょうか。
黄昏の到来と死
予言された最終戦争ラグナロクの到来に備えて、ヘイムダルは鋭い目で四方八方を見渡し、どんな動きも見逃さず、わずかな物音も聞き逃さず見張っていました。
虹の橋ビフレストのそばにある聖地ヒミンビョルグの館を構え、北と東の端の霧の巨人や山の巨人、南の端の炎の巨人ムスッペルなどのアースガルドへの侵攻をイチ早く関知し、神々に角笛ギャラルホルンを吹いて知らせる役目を担っているのです。
世界の終わりが迫り来る時、ヘイムダルは世界樹ユグドラシルの根元から取り出したギャラルホルンを力強く吹き鳴らし、アースガルドの神々をヴィーグリーズの野に集結させました。
角笛は世界を揺るがすほどの大きさで響き渡り、その恐ろしさに、死者達も震え、9つの世界を貫くという巨大なユグドラシルさえ揺れ動いたと言います。
ラグナログが始まり、神々と巨人が死闘を繰り広げます。
ヘイムダルも参戦しましたが、相手は邪神ロキでした。
ロキはアースガルドの神々にとっては友人でもあり、不倶戴天の敵でもあるという表裏一体の存在でした。
ヘイムダルとはお互いの利益が一致した場合には、共に手を携えて共闘することもあったのです。
事実、巨人族に奪われた雷神トールの大槌を取り戻す作戦はヘイムダルが立案し、ロキもトールに協力して見事取り戻しています。
こんなふうに好悪の感情が複雑に絡み合うヘイムダルとロキの因縁は、双方が共に命を失ってしまうという相討ちの形で決着したのでした。
人類の階級制度の始祖
神々の見張り番という役目にしているヘイムダルは自分の館にばかり引き籠もっているようなイメージがありますが、実は意外とアウトドア派だったらしく、しばしば【リーグ】という別名で世界中を旅していたそうです。
この旅の途中で出会った3人の女性との間にそれぞれ子どもが生まれ、スレール、カルル、ヤルルという名前を付けたそうですが、3人が後に奴隷、自由農民、王侯となったので、ここで人間の階級制度の基本ができたと言われています。
これがヘイムダルの別名【人類階級制度の始祖】の由来とされているのです。
ちなみにこの3階級は中世のヴァイキング社会を構成した階級制度と一致しています。
人間ではコントロールできない海で生き抜くヴァイキング達は、ヘイムダルの持つ能力を切望していたことでしょう。
それがあってのことではないかと思われます。
エンタメ世界のヘイムダル
ヘイムダル愛用の角笛ギャラルホルンですが、数多くのゲーム作品に登場し、味方を集めたり、士気高揚のアイテムだけでなく、敵を破滅させるような強力な武器とされています。
『ヴァルキリーコネクト』
ラグナロクを防ぐために戦うという北欧神話を下敷きにしたアプリゲーム『ヴァルキリーコネクト』には、味方全体をバリアしてくれる防御力に優れた前衛キャラヘイムダルが登場しています。
ヴァルキリーとは北欧神話における【戦乙女】のことです。
アニメ『ガンダム 鉄血のオルフェンズ』
ところで、この【ギャラルホルン】ですが、筆者はアニメ『ガンダム 鉄血のオルフェンズ』を連想しました。
このアニメに登場するギャラルホルンとは、主人公達と対立する治安組織のことで、組織を象徴するマークの角笛を吹く姿が印象的です。
神々の黄昏=神々の死の始まりを知らせる角笛と同じ名前が敵側に付いているということで、鉄血のオルフェンズでは主人公達は新しい世界の神(のような者)だったのではないかと考えました。
ヘイムダル~ギャラルホルンでラグナロクを告げる階級制度の始祖~ まとめ
知名度は低くても重要度はトップクラス、しかも美形で能力もあるヘイムダル。
ファンになってしまったら、深くはまりそうなキャラクターです。
ラグナログで因縁浅からぬロキと相打ちとなりましたが、その子どもたちは新しい世界で生き抜いていきました。
自分のなす事をきちんとし遂げて、子どもたちに血を受け継いだヘイムダルは、まさに神様らしい生き方をしたという感じがします。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。
「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)
もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。
現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。
マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。