ライトノベルやファンタジー小説の奥の手とも言えるルーン文字。
筆者の感想ですが、主人公が理解できない謎の文字が登場するとたいていはこのルーン文字なので、異世界小説などで【困ったときのルーン文字】というイメージが強いのです。
北欧神話でのルーン文字
オーディンはこのルーン文字に精通したいが為に、とんでもない苦行に取り組みます。
世界樹ユグドラシルに9日9夜に渡って首を吊り、自分愛用の槍でつき刺されたとか。
ここまで来ると、すごいのか、バカじゃないのか謎の行動と思ってしまいますが、とにかくこんなことをしてオーディンはルーン文字の秘密をゲットしたそうです。
自分の命と引き替えにしてまでも、オーディンはルーン文字の秘密を得たいと切望したのです。
ではなぜ最高神ともあろう者が、ルーン文字に固執したのでしょう。
それはルーン文字で魔術を行うことができたから、と考えられています。
実用されていたルーン文字
セイズ魔術については別章で紹介しました。
実はルーン魔術というものも存在していたのです。
そのルーン魔術をつかうためにはルーン文字が必要だったのです。
ルーン文字は、一つ一つの文字がそれぞれ意味を持ち、武器や身体、木や石などに刻むことによって効力を発揮するとされています。
表意文字というわけですね。
逆に文字を削り取ると効力を打ち消すことも可能だったのです。
ちなみに【ルーン】には【奥義】【秘密】【神秘】などの意味があるそうです。
いかにも魔術と結びつきやすい語ですね。
もともとルーン文字は、紀元1世紀頃に英語やドイツ語、北欧の言語を書き記すために考案されたもので、先輩であるギリシャ文字や北イタリアなどの文字を参考に生まれたと言われています。
次第に広まり、2世紀頃には碑文などに刻まれるようになりました。
完成した頃は実用的な文字として、4~7世紀頃にかけて広く使用されていたようです。
しかし、ラテン文字が普及し始めた7世紀以降になると、実用的な面でルーン文字はラテン文字の後塵を拝するようになり、魔術的な面が注目されるようになったのです。
確かに象形文字とでも言いたいような、図形的なルーン文字は確かに実用的という点では、ラテン文字には敵わないような気がしますね。
ルーン文字は北欧では14世紀頃まで使用されていたと伝えられています。
木に刻んで使うことの多いルーン文字は、字と木目が間違わないようにまっすぐな横線は使わないという特徴があるそうです。
ルーン文字
以前紹介済みですが、ここで詳細に説明してみましょう。
古代北欧において使用されたルーン文字は、文字そのものに魔力があり、木や石に刻むことでパワーが増し、削ると力が消えるとされていました。
現在でも、北欧各地の碑文にルーン文字は残されていますし、タロット占いに使用されることもあって、詳しい人はかなり精通しているのではないかと思われます。
ではルーン文字の意味や呼び方、英語での表記やどんな神々が関わっているのか、どんな魔力や呪力があるのか、調べてみました。
- 【富】はルーン文字で【フェオ】と言い、英語では【F】と表します。【富、豊かさ、家畜、所有】などに関係した魔力を持ち、美の女神フレイと深い関係があります。
- 【野牛】はルーン文字で【ウル】と言い、英語では【U】と表記されます。【力、スピード、不屈の精神】などと関係があり、家畜牛の祖先であり、今は絶滅してしまった【オーロクス】と関係があるそうです。
- 【トゲ】はルーン文字で【ソーン】英語表記は【Th】です。【魔除け、恐れなき心、傷】などの魔力があり、神としては灼熱の巨人スルトと深く関わっていると言われています。
- 魔術とは切っても切れない関わりがある【言霊】はルーン文字で【アンスル】と言い英語では【A】で表します。当然のことながら【言葉、伝達、ロ】などの魔力を持ち、最高神オーディンとの関係も深いようです。
- 【旅】はルーン文字で【ラド】と言い、英語では【R】と書きます。【勇者、タフな身心、旅の守護】などのパワーを持つとされ【風の神】と関係があるようです。なるほど、風も旅をするとも言えますよね。
- 【火】は【ケン】とルーン文字で表します。【C/K】と2文字で英語表記するので、何かが組み合わされたという意味があるのでしょう。【松明、情熱、灯火】など、火と関わりがあるのは言うまでもありませんし【火の神】とも当然つながりがあります。
- 【贈りもの】はルーン文字では【ギュフ】と言い、英語では【G】で示します。“Gift”を連想しますね。天からの贈り物Giftに縁があるのか【贈り物、才能、寛大さ、栄誉】などの魔力があり、Giftに恵まれた愛と美の女神【フレイヤ】と強い関係があるとされています。
- 【喜び】は【ウィン】です。英語では【W】で記しますが、“win”を連想させますよね。【幸福、実り、家庭平和】などに力を発揮するそうです。
- 【雹】は【ハガル】と言います。【H】が英語表記なのは、“は行”だからではないと思われますが…。【変革、崩壊、災い】などの魔力、呪力があると言われています。
- 【必要】は【ニード】と言い、英語では【N】で表します。英単語の“need”の意味が“必要とする”ですから、ここから派生したのではないかと考えてしまいます。【必要な学び、困苦、先手必勝】などにパワーを貸してくれるそうです。神ではなく【ミョルニル】が関係しているそうですが、トール愛用のこの大槌はラグナログでヨルムンガンドを倒した武器でした。神々にとっては必要なものだったわけですね。
- 【氷】はルーン文字で【イス】と言うそうです。英語では【I】で表しますが“ice”ですよね。【停止、静寂、時を待つカ】など、不動の氷のイメージをさせる魔力があるそうです。また関係するのが【巨人族】というのは、彼らの誕生から考えると当然でしょう。
- 【収穫】は【ヤラ】と言います。英語では【J】【1年の収穫、豊作、恵み】などの魔力を持ち、【地の神】と関係があると言われます。収穫には地が関係しているのは神話ではよくあることですね。
- 【イチイ】はルーン文字で【エオー】と言い、英語では【Y】で表します。【死、再生、防御、強靱な身心】などのパワーがあり、木ですから【木の神】とは深いつながりがあるそうです。
- 【イス】は【ペオス】と言います。英語では【P】ですが、“chair”ではないのかと思いました。【挑戦、選択、陽気】の魔力があるとされていますが、イスとどうつながっていくのか、不思議ですよね。
- 【鹿】は【エオルフ】とルーン文字で言い、英語ではアルファベット最後の【Z】で表します。【守護、危険の察知、仲間】などの呪力があるそうです。
- 【太陽】はルーン文字で【シゲル】英語では【S】で表します。“sun”のSでしょうか。【光、健康、夢の実現】などに魔力を発揮し、関係する神は【アースガルドの貴公子】ことオーディンの息子【バルドル】です。美形で性格良しの王子様が太陽とは、できすぎですよね。
- 【チュール神】は言うまでもなく軍神【チュール】で英語表記は【T】です。【勝利、正義、不可能を可能にする】などの戦いに関したことに魔力があり、当然ながら【チュール】が関わっているそうです。
- 【白樺】はルーン文字で【ベオーク】と言い【B】が英語表記です。【新しいはじまり、繁茂、母性】などの魔力があり、オーディンの妻【フリッグ】と関係が深いと言われます。バルドルに関する母フリッグの言動を見ると、母性=フリッグと言われるのも、不思議ではないと思われます。
- 【馬】は【エイワズ】と言い、英語では【E】で表します。【協力者の出現、早い進歩】など、なかなか良い方面の魔力があるそうです。オーディンの愛馬8本脚の【スレイプニル】と深く関わっているのは言うまでもありません。
- アースガルドよりずっと下のミッドガルドに住んでいる【人間】ルーン文字でも【マン】と言い英語も【M】と言うのがわかりやすいですね。【宿命、内なる自己】などに魔力が関係しているとされ、当然【人間族】とつながりがあります。
- 【水】は【ラグ】と言い、英語では【L】で表します。【豊穣、浄化、船出】など水の力が関わるものに力があるそうです。
- 【イング神】はフレイの古い呼び名とされ、ルーン文字では【イング】英語では【Ng】と表記されます。【受胎、性的魅力、本能のカ】など、巨人族の娘に恋したフレイを彷彿させるようなパワーがあるそうです。もちろん、つながりがあるのはイング(フレイ)神です。
- 【1日】は【ダエグ】とルーン文字で表し、英語では【D】です。【1日の守護、朝日が昇る、希望】などに魔力が及ぶそうです。
- 神々でも財宝には目がなかったようで【世襲財産】と言う単語があります。ルーン文字では【オセル】と言います。英語は【O】で【不動産、相続、祖先】など、一見すると財産関係の裁判用単語みたいな事柄に力を貸してくれると言います。
ルーン文字の起源とは まとめ
石などに刻まれ、今に残るルーン文字は幾何学的と言うか、現在の感覚からすると不思議な文字ですね。
文字に意味があるのは漢字も同じですが、読解が難しい文字であればあるほど、ミステリアスな雰囲気を感じますよね。
ルーン文字がゲームやライトノベルでは便利なアイテムとなるのも当然と言えば当然なのかも知れません。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。
「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)
もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。
現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。
マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。