ガンガーという名前を見ると怪獣かと思ってしまいそうですが、れっきとした女神です。
しかも、インドの人々にとってはとても大切なガンジス川という聖なる川の女神と言われています。
ガンガーは元々山神ヒマラヤの娘だったそうですが、なぜガンジス川と関わることになったのか、そして破壊神シヴァとの関わりについても紹介したいと思います。
ガンガーとは
インド文明発祥の源インダス川、チベットに源を発し、バングラディシュでガンジス川と合流し、ベンガル湾に注ぎ込むブラマプトラ川、そして沿川に多くの聖地を持つガンジス川の3川を称して【インド3大聖河】と呼びます。
2,500㎞にも及ぶ長大なガンジス川は、7本の支流をも持ち古からインド亜大陸を潤し、そこに住む人々を守ってきました。
このガンジス川を神格化したものが女神ガンガーです。
ガンジス川はヒマラヤに源がありますから、ここでガンガーと結びついたのでしょう。
ヒマラヤの娘だった頃には別の名前で呼ばれていたのではなかいと思います。
ガンジス川は現在でも【聖なる川】としてヒンドゥー教徒の信仰の場であり、この川で沐浴すれば罪は清められるという考えや、死後遺体を焼いた灰をガンジス川に流せば解脱できると信じられているそうです。
水の入った壺
壺は川の神なら当然の持ち物だと思われます。
水を溜めておくには壺が一番ですよね。
ガンジス川巡礼の人々は壺にガンジス川の水を入れて家に持ち帰るそうです。
ガンガーの別名
1. バドラソーマ
【神聖な飲み物】という意味がバドラソーマにはあります。
もともとソーマというのが【神々の飲み物】という意味ですから、ガンジス川の水は聖水と見なされていたのでしょう。
神々はソーマを引用して、鋭気と知恵を養ったと言われています。
2. ハラシェーカラー
【シヴァ神の頭髪】という意味です。
シヴァ神との関わりについては次に詳しく説明しますが、シヴァ神の絵には、髪の中に口から水を吹いている女性の顔が書いてあるものがあります。
この顔がガンガーだと言われています。
3. ガンジス川の女神
理由は言わずもがなですね。
ガンジス川を神格化したのがガンガーですから。
ガンガー=ガンジス川というわけです。
彼女はシヴァの妻パールヴァティの姉妹と書かれているものもありますが、一説ではシヴァの妻の一人とも言われています。
しかし『マハーバーラタ』などの叙事詩が生まれる頃には、ガンガーは“神の怒りに触れて人間に生まれ変わってしまった【天人】を天へと帰す役割を務めていた”女神と描写されています。
ガンジス川 天から地へ
伝説によると、ガンジス川は地上を流れる川ではありませんでした。
維持神ヴィシュヌの指先を流れ下って天界を潤していた【空の川】だったというのです。
しかしある時、コーサラ国王サガラの6万人の王子が地下の世界で殺されるという事件が起きました。
両親も祖父母達も息子達を弔いたかったのですが、供養することができなかったのです。
なぜなら、6万人を供養するには地上で供養しても効果はなく、ガンジス川の神聖な水で浄めるしか方法はなかったからです。
と言ってもガンジス川は天上を流れる川、人間がそこに行けないのだから、ガンジス川に地上へ降りてもらわなければならない…と神々は考えたのです。
ガンジス川の水を地上に流そうという壮大なプロジェクトが立ち上がりました。
まずはガンジス川=ガンガーに地上に降りてもらうため、サガラ王の孫バギラタ王は潔斎沐浴し、苦行しながらガンガーに祈りました。
この祈りを聞き入れたガンガーは地上に降りることを了解したのですが、そのまま降りてこられては困るのが地上です。
一気に大河の水が流れ込んでは地上は洪水被害に襲われてしまいます。
神々はワンクッション置いて勢いを弱めようと考えました。
そこでシヴァに助けを求めたのです。
シヴァ神は自分の髪の毛でガンジス川の流れを受け止め、勢いを弱めてから地上に流したと言います。
この水で6万人の遺体は浄められ、供養することができたそうです。
こうしてガンジス川は地上へ降り、天の川から地上の川に姿を変え、広大なインド大陸を潤す聖なる川となったのです。
ところで、シヴァが髪でガンジス川の水を受け止めると知ったガンガーは「ガンジス川は激しい流れ。こんな強い流れをシヴァ神の髪の毛だけで受け止めきれるはずがない」とたかをくくっていたと言います。
ところがシヴァは見事に役目を果たしました。
ガンガーにバカにされたことを知ったシヴァは激怒し、彼女を自分の髪の中に閉じ込め、数年も監禁し続けたと言われています。
それがシヴァ神の髪の中にガンガーがいるとされるハラシェーカラーの由来と言われています。
エンタメ世界でのガンガー
東方プロジェクト 『東方憑依華』
主人公のひとり聖白蓮の必殺技が【ガンガーの一滴】と言います。
聖白蓮が真上に投げたヴァジュラが巨大な光の剣となって落下するというビジュアルです。
天から地上へと落下するガンジス川をイメージしたかのような技です。
ハヌマーンの舞、ガルーダの爪、インドラの雷、ドゥルガーの魂、スカンダの脚などインド神話に関連した技の名前が多数登場します。
ガンガー~神格化されたガンジス川の女神~ まとめ
ガンジス川を降ろすときにはケンカしていたガンガーとシヴァ。
なぜ夫婦という説もあるのかと不思議でした。
しかし、自分の悪口に腹を立てて髪の毛に監禁したものの、長い間一緒にいるので、お互いに情が移り、結ばれてしまったのではないかと考えてしまいました。
やはり、シヴァは人間くさい神様ですね。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。
「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)
もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。
現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。
マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。