
『ベルセルク』は三浦健太郎原作の青年漫画ですが、平成元年連載開始から既に30年過ぎていますが、未だに連載中です。
漫画から火が付き、アニメも大ヒットしました。
この名前をアニメで知ったという方も多いと思います。
獣の皮をかぶり、我を忘れて戦う戦士
種族: 人間
地域: ミッドガルド
別名: バーサーカーなど
ベルセルクという名前は、英語の【バーサーカー=狂戦士】や【バーサーク=凶暴な】などの語源となった言葉です。
別名の【バーサーカー】は漫画などで見かけることがあるかと思います。
元々は古ノルド語の【熊の毛皮】を表していると言われています。
北欧神話に題材を取った絵にはオオカミの皮で作った服をまとった戦士が描かれており、【ウールヴヘジン=オオカミの狂戦士】と呼ばれています。
またイギリスの叙事詩『ベオウルフ』の主人公英雄ベオウルフの名前は、【ベルセルク】にちなんだものとも言われています。
中世、古ノルド語で書かれた『ユングリンガ・サガ』によると、【鎧をつけず熊やオオカミの獣をかぶったベルセルクは、一旦戦場に立つと犬や狼のような猛々しさと、熊や牛のような力強さを発揮して戦った】と言います。
ベルセルク達は、戦いに勝つためには己や仲間の命を犠牲にすることも気にせず突進していったそうです。
その勇猛果敢さから、自らの一族から【オーディンの眷属】として尊敬を集め、称賛を受けることができました。
獣の皮をまとう
アースガルドの最高神オーディンの加護を受けて戦う戦士は、獣の霊力を得るために熊の毛皮をまとっていたと言われます。
獣の皮を身につけることで、獣の持つ能力を自分のものにできると信じていたのでしょう。
人間とは思えないほどの怪力で、斬られても痛みを全く感じることなく、まるで狂ったかのように戦い続ける戦士がベルセルクです。
忘我状態はオーディンのセイズ魔術によるものと思われていましたが、最近では毒キノコなどによる錯乱状態で、回りの現実が見えなくなってしまったのではないだろうかと言われています。
また、狼男などでおなじみのライカンスロープ(半獣人)が自身で獣に変身するときも獣の皮を被るという呪術を用います。
この点からも、ライカンスロープの原点ではないかと考えられています。
熊の毛皮
ベルセルク達が戦いの際に好んで身につけたのが熊の毛皮です。
彼らは獣の体の一部を自分の物にすることで一体化し、獣の霊力が身体に入ることで、戦場においては人間離れした規格外の戦闘力が手に入ると信じていたそうです。
日本や中国などでもこのようなエピソードが多々ありますね。
また、熊の毛皮ではなく、狼の毛皮をかぶった戦士ウールヴヘジンとベルセルクが同じ者と考えられることもありました。
ベルセルクの狂気の秘密
狂戦士とも呼ばれるベルセルク。
彼らには痛みに対する感覚がありませんでした。
人間ですから、斬られたり、殴られたりしたら当然痛いはずが、ベルセルクは平然としていたと言われます。
この無感覚の理由は、彼らが儀式的な行為によるトランス(酩酊)状態に陥ったからだと考えられているのです。
時代は下がってモンゴル帝国が興隆しつつあった時代、現在のイラン北部にあるアラムートという山岳要塞から遣わされた暗殺者達がいました。
彼らはベルセルクと同じように、目的のためには平然と命を差し出したそうです。
彼らが何も恐れずセルジューク朝トルコや十字軍の要人を暗殺しまくったのは、麻薬によって酩酊状態にされていたからと言われています。
いずれの世も命を捨てさせるには、酩酊状態にさせるのがポイントだったようですね。
やはりベルセルクも、戦いの前に強い自己暗示、或いは麻薬作用を持つ薬草や茸類を摂ることにより錯乱状態へと陥り、常時では外せないはずの身体能力のリミッターを解除できたという説もあります。
認知度はとても高いのですが、ベルセルクの神話の登場回数はほんの数回です。
なので、彼らが行っていたという秘儀の詳細も明らかではありません。
わずかな資料などから想像するだけなのです。
エンタメワールドのベルセルク
始めに紹介した青年漫画『ベルセルク』を始めとして、後世の創作にも【謎めいた狂戦士ベルセルク】は多くの影響を与えています。
『FF』シリーズ
人気ロールプレイングゲーム『FF』シリーズはとても有名ですが、そこに【バーサク】という魔法が登場します。
これは、敵味方関係なく攻撃力がアップするというもので、代わりに守備力はダウンするというものですが、猪突猛進、後のことは考えず戦い抜くというベルセルクの戦闘スタイルに由来したものと思われます。
いずれのゲームやメディア作品でも、ベルセルクは彼らの【己に返ってくるリスクを完全無視したケタ外れの攻撃力】を中心にした設定が多いようです。
ベルセルク~獣の皮を纏い痛みを感じない狂戦士の語源となった人間~ まとめ
筆者が“バーサーカー”という単語を見たのは、古代中国を舞台にした少女マンガのキャラの一人が敵を殺しまくるのが楽しい-というシーンででした。
当時は意味がわからなかったのですが、今回のやっとわかった次第です。
それにしても、ベルセルクはベルセルクという一塊の扱いになっているようですね。
ベルセルク一人一人にも家族がいただろうに、神話では人間など十把一絡げの扱いなんだなと改めて寂しい気持ちを感じたところです。

最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。
「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)
もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。
現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。
マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。