櫛名田比売【クシナダ】~八雲立つ~ スサノオと八塩折の酒~

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クシナダ廻(モンスト)

日本が誇るキング・オブ・モンスターこと『ゴジラ』を知らない人はいないでしょう。

去年『エヴァ』の庵野秀明監督による『シン・ゴジラ』が大ヒットし、再びゴジラに注目が集まっています。

そのゴジラの最大のライバルといったら【モスラ】でもなく【キングコング】でもなく【キングギドラ】ではないでしょうか?

そしてそのキングギドラのモデルになったのが【ヤマタノオロチ】と言われています。

そのヤマタノオロチを倒したのがここで紹介するスサノオです。

天照大神の弟?

スサノオ(モンスト)

スサノオ(モンスト)

スサノオ(素戔嗚尊)はイザナギイザナミの間に生まれた子どもの一人とされ、天照大神、月読と兄弟で三貴子とも呼ばれています。

しかし、性格は乱暴者で単純、末っ子にありがちな自立心旺盛と言えばいいのですが、Going My Way的な言動が目立つ神でした。

筆者には【心が子どものままに図体だけでかくなった青年】というイメージがあります。

神々が集う高天原。その頂点に立つ姉天照大神の宮殿で汚物をまき散らかしたり、機織女の部屋に馬の死骸を放り込んで驚いた女を死なせてしまったり…

可愛い弟をかばっていた天照大神も我慢できなくなって岩戸に隠れてしまいました。

彼女がいないと世界は暗闇に沈んでしまう…

神々は岩屋の前で女神に踊らせ、はやし立て賑やかに宴を開きました。

「自分がいないのに、なぜ神々が喜んでいるのか」不思議な思った天照大神が岩をそっと開いたとき、力持ちの神が強引に岩戸をこじ開け、天照大神を引っ張り出し、世界に光を戻しました。

しかし、【天照大神が隠れる=世界から光を消す】というとんでもない事態を招いた元凶であるスサノオはそのままではすみません。

高天原から追放されてしまったのです。

ヤマタノオロチ退治

ヤマタノオロチ(モンスト)

ヤマタノオロチ(モンスト)

高天原から追い出されたスサノオはあちこちとさすらっていました。

やがて彼は出雲の肥河の上流、鳥髪という地に立ち寄ります。

河をぼんやり眺めていると箸が流れてきます。

上流には人がいると判断したスサノオは川上へと上っていきました。

スサノオの噂はきっと広まっていたでしょうし、あまり人と会う機会もなかったでしょうから、多分人恋しかったのではないかと思います。

川上に行くと年老いた夫婦、一人の美少女がいたのですが、彼らは涙を流していたのです。

びっくりしたスサノオはまず彼らのことを聞きます。

老人は「私は出雲の国津神で、大山津見神の子、足名椎(あしなづち)と申します。

妻は手名椎(てなづち)、娘は櫛名田比売(くしなだひめ)と申します」と答えます。

「おまえ達はなぜ泣いているのだ」

「私達の娘はもともと8人いたのです。しかし高志のヤマタノオロチが毎年来て一人ずつ食べてしまうのです。今日がその日なので、このたった一人残った最後の娘が食べられてしまうので泣いているのです」

ヤマタノオロチという初めて聞く名前に興味をそそられたのでしょう、スサノオはなおも問いかけます。

「そのヤマタノオロチというのは一体どんな姿形をしているのだ」

「その目はホオズキのように赤く輝き、体の一つ一つに8つの頭と8つの尾を持っています。その体には苔や古木が生え、恐ろしい姿をしています。そして長さは8つの谷から8つの峰に渡るほどの巨大なのです」

父である老人の言葉に改めて脅えたのか、少女が再び泣き出します。

その可憐な美しさにひかれたのでしょう、スサノオは意気揚々と「では私がそのヤマタノオロチとやらを退治してやろう。私は天照大神の弟スサノオである。高天原から降りてきたところだ。ヤマタノオロチを倒したらおまえの娘をくれぬか」

「天照大神の弟君とは…誠に畏れ多いことでございます。はい、よろこんで娘は差しあげましょう」

八塩折の酒とクシナダ

スサノオは婚約者となった櫛名田比売を櫛に帰ると自分の髪に挿しました。

このヒロインの名前については【櫛にされた姫だから櫛名田比売という名前が付いた】という逆説的な見方もあるようです。

ともかく、櫛にされるほど小柄な愛らしい少女だったのでしょう。

一目惚れした少女を自分の身近に置いて守る算段を整えると夫婦に命じ、酒を作らせました。

それは8回も醸造した美酒でした。

その後足名椎の館に垣根を作り、その垣根には8箇所の門と桟敷を作らせたのです。

桟敷には一つずつ美酒を入れた瓶を置きました。

この酒は【八塩折の酒】と言われています。

そう、『シン・ゴジラ』の【ヤシオリ作戦】はここが由来なんですね。

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やがてヤマタノオロチがその恐ろしい巨大な姿を見せます。

生け贄の少女を探す怪物は酒の香りに気がつくと、8つの瓶に8つの頭を突っ込みゴクゴクと飲み干したのです。

よほど美味しい酒だったのか、何度も醸造してアルコール度数が相当高くなっていたのか、ヤマタノオロチは酔っ払い、やがてあたりの山が震えるほどの大いびきを掻きながら寝入ってしまいました。

スサノオの計略は見事的中したのです。

泥酔したヤマタノオロチをあっさりと切り刻むと肥河に投げ捨てるスサノオでした。

肥河はそれ以後血の川となったと言われています。

ちなみに肥河とは現在の島根県の斐伊川と言われ、川沿いには砂鉄が産出されることからたたら製鉄が盛んになりました。

真っ赤に燃えるたたらの炎がヤマタノオロチの血を連想させるとも言われています。

ヤマタノオロチの尾を斬ると、刀が欠けたので奇妙に思い、尾を割いてみると、都牟刈之大刀(つむかりのたち)という名刀が出て来ました。

スサノオは見事なこの大刀を取りだし、姉天照大御神に献上したそうです。

そして、この刀は後に『三種の神器』の一つとなる草那芸之大刀(くさなぎのつるぎ=草薙の剣)となりました。

ちなみに都牟刈之大刀という名前は古事記にしか登場しません。

日本書紀には現れない名称です。

スサノオの行動は全国平定?

スサノオ(神姫プロジェクト)

スサノオ(神姫プロジェクト)

宣言通り見事にヤマタノオロチを退治したスサノオはそのまま出雲にとどまり、めでたく櫛名田比売と結婚し、須賀の地に宮を建てました。

新婚生活の始まりの時、瑞祥を意味する8色の美しい雲が立ちのぼったと言われています。

スサノオはそこで歌を詠みました。

「八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣つくる その八重垣を」

古事記にある日本最古と言われる有名な歌です。

多くの雲が沸き立つ出雲の地で 妻と暮らす良い場所が見つかった
妻のために 幾重にも 垣根を作ろう

というような意味だそうです。

要は、新妻との生活にウキウキしている男のノロケですね。

それにしても、脳筋男のイメージがあるスサノオですが、歌の才能は持っていたんですね。この辺は天照大神の弟と言うべきでしょうか。

スサノオの伝説は一見すると【一目惚れした少女を救うために男がヤマタノオロチという怪物と戦い、めでたく少女と結ばれた。めでたし、めでたし】の話に思われます。

しかし、真実はそんなハッピーエンドなラブストーリーで終わるものではなかったという説があります。

この伝承が書いてある『古事記』は公的な歴史書です。

その成立理由を考えると(天皇の権威付け)、当時の中央政権=高天原を追われた有力者が地方に下って、その土地を征服していった過程を寓話的に記したとも読めると言うのです。

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櫛名田比売(クシナダ)~八雲立つ~ スサノオと八塩折の酒~ まとめ

スサノオと櫛名田比売の間には多くの子どもが生まれました。

一番有名なのは出雲大社の祭神である大国主命(おおくにぬしのみこと)でしょう。

(彼はスサノオの息子ではなく、6代目の孫という説もありますが)高天原を追われ世界をさすらっていたスサノオは出雲の地で愛する女性と巡り会い、しっかりとこの地に根を下ろしたのでしょうね。

  • 2017 10.09
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