名前に「火」の字があるとおり、この神は【火の神】です。
しかし、本人にとっては不本意でしょうが、別の意味で有名な神様です。
それは【自分の命と引き換えに母が死んだ】という生まれながらにして母のない子だったという悲しい事実でした。
出生時の悲劇
火之迦具土神(カグツチ)の父はイザナギ、母はイザナミで日本初期の神の一人です。
イザナギ、イザナミは多くの国土と神々を生みました。
最後に生んだのがカグツチだったのですが、何しろ【火の神】です。
出産の時、イザナミの陰部(子宮)は焼けただれ、大やけどを負い、とうとう死んでしまいました。
生まれたばかりのカグツチは乳も与えられず、ほおって置かれたと思われます。
父のイザナギは動揺し、怒り狂い、なんと自分の子どもであるカグツチに刃を向けました。
完全な八つ当たりです。
イザナギは十拳剣でカグツチを斬り殺しました。
このとき剣先から滴り落ちた血から石拆神と根拆神、石筒之男神が生まれ、剣本体の血からは甕速日神、樋速日神、建御雷之男神が生まれたと言います。
また、剣の柄に滴る血からは、闇淤加美神と闇御津羽神が生まれました。
石拆神(いわさくのかみ)は岩をも切り裂くほどの力のある神ということでしょう。
根拆神(ねさくのかみ)は根を裂くほどの力を持つ神であり、石筒之男神(いわつつのおのかみ)も石や岩などに関係していることが名前からわかります。
また甕速日神(みかはやひのかみ)は甕(瓶)が入っていることから、生活に関係した神でしょう。
樋速日神(ひのはやひのかみ)も樋という水を流す生活に直結した名前が入っています。
建御雷之男神(たけみかづちのかみ)は雷という字が入っていますから、猛々しく荒々しい神だったと思われます。
闇淤加美神(くらおかみのかみ)と闇御津羽神(くらみつはのかみ)の2神には【闇】という字が入っていますが、夜の神だったのかも知れませんね。
カグツチの血から生まれた神々の特徴を見ると、共通しているのが【鉱山、農耕、工業】など人間生活に深く関わっているということです。
ですから、この神々を生んだ(?)カグツチは人間にとっての恩人というわけで、昔から【金運や招福、防火の神】として篤く信仰されているそうです。
火之迦具土神【カグツチ】~母なき子、父に殺された悲しき金運の神~ まとめ
自分がわざとしてことではないのに、母親を死なせ、父親によって殺されてしまったカグツチ。
彼の人生(神生?)は一体何だったんだろう?と思ってしまいますね。
現代にもありそうな悲惨な状況ですが、自分が死んだことですばらしい神々が生まれ、人間から尊崇されたカグツチ。
でも、そんなことより、母親のぬくもりが欲しかったのではないか…
なんて人間としては考えてしまいます。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。
「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)
もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。
現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。
マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。