ゼウスの息子ペルセウスが、アンドロメダを颯爽と救い出したときに乗っていたとされる翼ある白馬です。
青空を駆ける白い馬-想像しただけでも美しい光景ですが、今回はペルセウス以外のペガサスのエピソードを紹介しましょう。
→ 「ペルセウス~メデューサ、ケイトスを倒してアンドロメダと結ばれたペガサスに乗る英雄~」
ポセイドンとメデューサの子ども?
ペガサスの誕生にはポセイドンが関わっていると言われています。
元々美しい乙女だったメデューサをポセイドンが愛し、彼女は妊娠しました。
ところが、ペルセウスによって首を切られ殺された部分から生まれたと言われているのです。
また、ポセイドンとは無関係で、メデューサの首から滴った血から生まれたという説もあります。
いずれにしても、メデューサとは関わりが深いようです。
→ 「ポセイドン~トライデントを操る海王神とカシオペア座の誕生~」
→ 「メデューサ~蛇の髪と石化させる眼を持つゴルゴン3姉妹~」
英雄たちの相棒
ペガサスはペルセウスだけではなく、多くの英雄達の活躍を助けた心強い相棒だったようです。
ここでは、有名なエピソードを取り上げてみます。
映画化された『陰陽師』でも有名な夢枕獏に『キマイラ』という長編小説があるのはご存じですか?
実はペガサスはこのキマイラ退治にも関わっています。
テュポーンとエキドナという巨大怪物の娘であるキマイラとは、3つの動物を組み合わせた怪物で、合成獣という異名を持つ複雑生物です。
現代では異なる遺伝子を同時に併せ持つ合成生物のこと『キメラ』と表現しています。
遺伝子研究で使われる《キメラマウス》などは一般的にも知られていますが、このキメラの語源がキマイラです。
この名からは【禁断の遺伝子操作】という闇を連想させますね。
そう言えば漫画やアニメで大ヒットした『鋼の錬金術師』にも父親によって犬と合体させられ、キメラにされてしまった少女の悲しいエピソードがありました。
キマイラは《後ろ足と体が山羊、頭と前足はライオン、尻尾は蛇》の姿で描かれたり、《ライオン、山羊、蛇の3つの頭》を持つ姿という説も存在します。
やはり想像上の生物ですから、色々な説が出て来るのはしごく当然ですね。
女性の顔を持つ絵もありますが、美人です。
その口からは火を吐き、しばしば山を燃やし尽くしたとか。
父のテュポーンと同じように凶暴なので人々は脅えていたと言われています。
キマイラはカリア王アミソダレスに飼われていました。
彼女を飼える人間がいるのもびっくりですが、やはり大人しくしているはずもなく、暴れ出すこともあり、アミソダレスも困っていました。
そこへベレロポンという青年が現れたのです。
思いがけなく自分の兄弟を殺してしまったことから、故郷を追われ、罪を浄めてもらうため他国の王宮に身を寄せていたベレロポンでしたが、王妃に恋され求愛されたのですが、断ったため王妃に逆恨みされ、国王に讒言され、追放されてしまったのです。
次に身を寄せたリキュア王イオバテスはキマイラ退治を命令されました。
実はこれには以前世話になった国王からの「ベレロポンを殺して欲しい」という依頼ありました。
イオバテスは自分の手を汚さず、ベレロポンを始末しようと考えたのでした。
ベレロポンはまずペガサスを捕まえて、キマイラ退治に利用しようと考えました。
コリントスへ行ったのですが、ペガサスはそう簡単に言うことをきく馬ではありません。
困っていたところへ女神アテナが現れ、黄金の轡を与えてくれたので、やっとペガサスを手懐けることができたのでした。
ベレロポンはペガサスに乗り上空から矢を放ち、口に鉛を突き入れてキマイラを殺したそうです。
キマイラ退治以降も次々とイオバテスは無理難題をふっかけましたが、ベレロポンはどれも完遂させました。
イオバテスはその偉業に感嘆し、全てを告白した上で、娘婿に迎えたのでした。
ところが、歳と共に傲慢になったベレロポンはペガサスに乗って天に昇ろうとしたそうです。
神になろうとでも考えたのでしょうね。
この所行に怒ったゼウスは蛇を放ち、ペガサスの尻を刺したそうです。
驚いたペガサスは、ベレロポンを振り落としてしまいました。
落ちたベレロポンはそのまま墜死したとも、足が不自由になって放浪したまま客死したとも言われています。
→ 「テュポーン~タイフーンの語源!?無常の果実を食べてしまった巨竜~」
→ 「アテナ~アイギス(イージス)をもつ美と知性を兼ね備えた軍神~」
ペガスス座
アンドロメダ座のα星とともに、秋の四辺形の一つを成すペガスス座は、ベレロポンを振り落としたペガサスがそのまま天高く昇っていって星座になった姿と言われています。
ペガサス~忌々しい出生から英雄たちの相棒となった天を駆ける白馬~ まとめ
メデューサの血というある意味おぞましいものから生まれたはずなのに、《汚れない白》のイメージがペガサスにはあります。
同時に純白には《正義》のイメージもあると感じます。
アニメ『聖闘士星矢』のオープニング曲のタイトルが『ペガサス幻想』でしたね。
アテナ女神のもと、正義の戦いを繰り広げる聖闘士たち。
やはり、天駆ける白馬というのはファンタジーでは必須の生き物なのかも知れません。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。
「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)
もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。
現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。
マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。