ギリシャ神話にはバラエティに富んだ様々な怪物、巨人が登場しますが、今回紹介するアルゴスは“100の目を持つ”と言われる怪物です。
日本の妖怪にもそんなのがいますが、このアルゴスはオリンポスの神々の手伝いをしていたようです。
眠らぬモンスター
アルゴスの100の目は一斉に閉じることがありませんでした。
必ずどこかの目が開いているというのです。
要するに、全方向に渡って隙が全然ないということですね。
厳しい上司などについて「あの人は全身に目が付いている=いつも全てを観察している」なんて言うようですが、アルゴスもそうだったようです。
この特徴を利用したのがゼウスの正妻ヘラでした。
年がら年中アバンチュールにいそしむ夫ゼウスに対し、年がら年中嫉妬していたのがヘラです。
二人の夫婦ゲンカはギリシャ神話でも有名ですが、夫の愛人に対するヘラの嫌がらせは相当酷いものだったということを知っている方も多いと思います。
ヘラがアルゴスを使って嫌がらせをしかけたのは、イオでした。
木星の衛星イオ
イオは河の神イナコスの娘とされ、一説にはヘラを祀る巫女だったとも言われています。
彼女の美貌に目を付けたゼウスが手を出したのですが、自分の巫女を愛人にされたヘラの怒りたるや恐ろしいですよね。
詰め寄るヘラに対し、ゼウスはイオを雌牛に変えシラッと「美しい雌牛だろう」とごまかそうとしたのです。
ヘラはだまされません。
「本当に美しい雌牛だこと…私にくださいな」と強引にもらい受けてしまったのです。
そしてアルゴスに見張りをさせました。
ゼウスがやってこないか、イオが逃げ出さないか、休めないよう(眠らないよう)いつもいつも監視していたのです。
せっかくの愛人と会えなくなったゼウスは策を練ります。
自分の息子であり、【泥棒の神】と呼ばれるほどの小ずるい知恵を持つヘルメスにアルゴスを殺して、イオを解放するように命じたのでした。
ゼウスより、雌牛にされた上、眠ることもできないイオの方がずっと苦しいと思いますよね。
ちなみにギリシャ神話の神々の名前は星に対応されるものが多いのですが、木星ジュピターがゼウスです。
そのジュピターの衛星の一つにイオがありますが、言うまでもなくこのイオにちなんでいるようですね。
アルゴスの死
命を受けたヘルメスは思案します。
頭脳では有利ですが、アルゴスには強力な武器があります。
【100の目】です。
力ずくで攻撃しても隙がないのですから、勝てる可能性は限りなく低くなります。
そこで考えついたのが【目を使えなくする】ということでした。
眠らぬはずのアルゴス、その目を閉じさせることに成功したのです。
葦で作った笛を吹き、その音色の快さにうっかり眠り込んだアルゴスの首をヘルメスはあっさりと斬り落としたのです。
意外と簡単に死ぬもんだなと思ったのは筆者だけではありますまい。
イオは解放されました。
しかし、それを知ったヘラが虻(アブ)を送り込んだのです。
雌牛の回りを離れることなく飛び回る虻(アブ)…イオは雌牛の姿で逃げ惑い、ギリシャからボスポラス海峡をわたり、トルコに入り、エジプトでやっと元の姿に戻り、安住したと言われています。
ゼウス、アルゴスから解放したときに元の姿に戻してあげればいいのに…と思いませんか?
イオはエジプトでゼウスの子を産み、その子がやがてエジプト王となったそうです。
彼女は何とか、幸せを掴んだようですね。
アルゴス~100の目を持つ眠らぬモンスターとヘルメスの葦笛~ まとめ
結局、ゼウスとヘラの夫婦ゲンカのとばっちりで命を落としたようなアルゴス。
何とも不憫なモンスターという気がしますね。
アルゴスという地名はギリシャ神話では重要な場所です。
アンドロメダ救出で有名なペルセウスが王位に就いたり、テセウスの仲間達が暮らしていた国でした。
同名とは言え、怪物アルゴスとは関係はないようで、ここでも割を食った感じがしますね。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。
「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)
もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。
現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。
マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。