ルーブル美術館にある《サモトラケのニケ》と呼ばれる石像をご存じですか?
頭部がないことで、逆にどんな顔だったろうと想像をかき立ててくれる美しい立像です。
この記事ではニケ神について紹介したいと思います。
勝者に降り立つ有翼の美しい女神
勝利の女神ニケは、翼を持つ若い乙女の姿をしています。
ニケ自身には特殊な能力を備えていませんが、勝利の栄誉をもたらすので、《勝利そのものの擬人化》と言われています。
ローマ神話ではウィクトーリアと同一視され、より好戦的な役割を担うことでローマ帝国兵士に崇拝されたそうです。
そう言えば、ウィクトーリアは勝利を意味する英語《ヴィクトリー》に通じますね。
ニケはティターン族のパラスと、冥界を流れる川の女神ステュクスの娘と言われます。兄弟にはゼロス(熱情)、クラトス(強さ)、ビア(活力)といった精神に関わる力強いメンバーがいます。
ニケに関する目立ったエピソードはほとんどないのですが、ティタノマキアの際には、ティターン族の血を引きながらも、ゼウス側について戦っています。
戦いの女神アテナの従神として数々の戦いにも参加しました。
現在ギリシアのアテナイ(アテネ)にあるアテナを祀ったパルテノン神殿。
そこにはあったアテナ神像の伸ばした右手の上にはニケが降り立つ姿が造形されていたと言われています。
また、ゼウスの城だったオリンピアには当然ゼウスの神像がありましたが、その伸ばした右手の上にもニケの降り立つ姿が造られていたそうです。
両方とも現存していないので、確かめるすべはありませんが、勝者側であるゼウスやアテナのそばにニケがいるのは似つかわしいと思います。
この言い伝えから、勝利の女神ニケは、高位の神格にとって欠かせない存在であったことがわかりますね。
またニケは戦争だけではなく、運動や演劇、音楽の競技などで優勝した個人、戦争に勝利した町や国にも栄誉を与えました。
ニケは勝者に《勝利の象徴》としてシュロの冠を与えました。
シュロの冠を手に舞い降りるニケの美しい姿が絵画や石像などに表現されています。
勝利の女神ニケを信仰していたギリシア人は、戦勝記念としてニケの神像を奉納しました。
前述した《サモトラケのニケ》像は、紀元前190年のシリア海軍との海戦で勝利したロードス島人がサモトラケ島の神域に奉納したものだと言われています。
他の神々と異なり、星座に関するエピソードもニケにはありません。
ただし、世界的なスポーツ用品メーカー【ナイキ】(ニケの英語読み)のロゴマークはニケの翼がモチーフとなっているそうです。
スポーツの勝利者にふさわしい品々を-という意気込みなのでしょうか。
人気のメーカーなので、馴染み深いものばかりですよね。
ニケ(ナイキ)~シュロの冠を手に舞い降りる勝利の女神~ まとめ
実物は見たことがないのですが《サモトラケのニケ》像は大きく広げた翼の美しさはもちろんですが、たくましい胸や腰つきなど、ギリシア人が理想とした体型を表現しているのではないかと思います。
顔は想像するしかないのですが、勝利の女神にふさわしい華麗な美しさを誇っていたでしょう。
その神々しい美神から栄誉を受けることは当時の人々にとっての最高の栄誉だったはずです。
そのために、過酷な競技や戦いを耐え抜いたのではないか、そんな感じを受けます。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。
「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)
もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。
現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。
マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。