誰しも一度は【奈落】という言葉を聞いたことがあるでしょう。
仏教における地獄のことですが、今回紹介するのはそんな地獄の神タルタロスです。
死なない神々さえも忌避した【奈落】
この世の始まり=カオスから誕生したタルタロス。
大地神ガイアのように子どもを産む神ではなく、大地の奥深くの奈落=地獄そのものだったとされています。
タルタロス自身に神としてのエピソードはほとんどありませんが、ガイアとの間に怪物テューポーンが産まれたと言います。
テューポーンは巨大な怪物で、ヘビの体をしていたそうです。
その強大な力はオリユンポスの神々でさえ震え上がらせるほどでした。
全能の神ゼウスに戦いを挑み、なんと深手を負わせるまで追いつめるほどだったそうです。
その他にタルタロスの子どもとされるのは、エキドナという毒蛇女神で、なんとテューポーンとの間に怪物を産んだそうです。
実の兄妹で子どもを産む…
神話ですから、そういうものだと思ってください。
特にギリシア神話では近親婚は山ほど出て来ますよ。
タルタロス自身でもある【奈落】は死者の行く国=冥府よりもっと地の底にあると言われます。
同じく死者が行く国ではありますが、ハデスの治める冥府とタルタロスは異なります。
神々ですら忌み嫌う澱んだ空間で、そこには重罪を犯した者や、神の怒りに触れた者が閉じこめられ、永遠に拷問を受け続けなければならない場所だったのです。
タルタロスから逃げたくても、そこはポセイドンが作った青銅の門と壁で包囲され、恐ろしい門番に見張られているので、決して逃れることはできないのです。
そんな「一度入ったら二度と出られない」タルタロスに閉じこめられたのは、ウラノスの子で怪物のキュクロプスやヘカトンケイルなどです。
その他にも神々の戦いに負けたティターン神族をゼウスが閉じ込めました。
人間もタルタロスに閉じ込められることがありました。タンタロスやシシュポス達です。
タンタロス(タルタロスと紛らわしいですね)は一説によると自分の子どもを殺し、その肉を神々に食べさせようとしたため、怒りを買ったとか。
シシュポスは、ゼウスが掠った少女の行方をその父親に教えたため、ゼウスを怒らせたと言います。
二人はゼウスの怒りに触れたため、タルタロスに落とされてしまいました。
タンタロスはともかく、シシュポスについては、八つ当たりだと思うのですが、こういうところがギリシア神達の人間くさいところであり、魅力なのですね。
タルタロスに閉じ込められた二人のその後ですが、タンタロスは水辺の果樹の下に縛られ、空腹で目の前の果実に手を伸ばしても、風が吹いて絶対手に掴めず、喉が渇いて水を飲もうとしても、水がひいてしまい、絶対飲めないという永遠の飢餓に苦しめられました。
シシュポスは大きな岩を押して険しい坂道を登ることを命じられ、何とか頂上に近づくのですが、毎回岩は元の位置まで転がり落ちてしまうのです。
そのため、一から出直して始めから押して登らなければならないという永遠の責め苦を味わうことになってしまいました。
タルタロス~冥府より深い奈落!不死の神々が恐怖する地獄の神~ まとめ
神に逆らった者が落とされ、二度と出られず、絶対終わらない永遠の責め苦を受け続ける恐怖の世界タルタロス。
そこは不死の神々でさえ恐れる場所でした。
「悪いことをするとえんま様に舌を抜かれる」「悪いことをすると地獄に墜ちる」などと昔の人は言ったものでした。
地獄=タルタロスだとしたら、人間の思いはあまり変わっていないのではないかと感じます。
古代のギリシア人はタルタロスに落とされることに怯え、神の意志に逆らわないよう、身を慎んで凄そうとしてのではないかと思います。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。
「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)
もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。
現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。
マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。