ヴィローシャナという名前を見ると「イタリア人?」と思ってしまう人もいるのではないでしょうか?
まぁ、これは冗談として。
今回の主役ヴィローシャナはインド神話の神ですが、ちょっとマイナーかも知れませんね。
しかし、アスラ族の王とも称されることもある大変重要な魔神です。

この神が仏教に取り入れられ日本に入ってくると、密教の最高仏大日如来と混同されて厚く信仰されるようになるのです。

ヴィローシャナとは?

アスラ族の有力な神の一人、ヴィローシャナはインド神話に関わる多くのエピソードにその名前が登場しますが、それぞれの内容は異なっています。
一番有名なのが、雷神インドラとのエピソードでしょう。

この2神がそろって創造神プラジャーパティのもとを訪ねたことがあったそうです。
「アートマン(自我)の真理を知りたい」というのが訪問の理由でした。

プラジャーパティが言うには「美しく着飾って、水や鏡に映る姿こそがアートマンであり、真理なのだ」とのことでした。
その言葉がストンと落ちたのか、ヴィローシャナは「よし、わかった」真理を得たと歓喜し、いそいそとアスラ一族のもとに帰ると、この教えを広めたそうです。
筆者にはプラジャーパティの言葉は“見かけが美しいのがアートマン”という意味に思えて、ホント?と疑問に思うのですが…。

一方、インドラは“そんな単純なことではあるまい。
盲目であれば姿を見ることはできないのだから”と悟ったのか、プラジャーパティがわざとウソを言っていたと気がつき、彼の元で修行に励みました。
その修行の結果【肉体や見た目ではなく、意識こそアートマンである】という真理に辿りついたそうです。
早合点したヴィローシャナと疑ったインドラの差でしょうか。

また一説では、ヴィローシャナとインドラはすさまじい戦いを起こしたそうです。
雷神インドラの強さは言うまでもありません。
ヴィローシャナは敗れてしまいます。
しかし、その息子バリ(マハーバリ)は厳しい苦行を積み、父の敵であるインドラを倒し、3界を支配する悪魔の王になったのです。
その結果、維持神ヴィシュヌの化身である小人ヴァーマナと対決することになり、とんちのような罠にかかって、敗れてしまいます。
とは言え、バリの誠意に感心したヴァーマナは彼を許し、地底に安住の地を与えたとも言われています。

大日如来とヴィローシャナの関係とは?

密教は平安時代に広まった仏教の一派です。
遣唐使として中国に行った最澄、空海のことは授業で習うと思いますが、この二人が日本へ持ち込んでから、民間の間に広まるようになりました。

【大日如来】は密教の本尊です。
この如来はこの世の全てを照らしてくれる存在であり、宇宙の真理、あるいは仏法そのものと言われています。
この大日如来がなぜヴィローシャナと結びついたのかという理由ですが、密教で大日如来とされる摩訶毘盧遮那(まかびるしゃな)=ヴァイローチャナとヴィローシャナがよく似ているからというのがあります。
だからヴィローシャナ=大日如来となったのだと。
と言われますが、ヴィローシャナとヴァイローチャナは似てると言えば似てますが、違うと言えば違いますから、はっきりした理由は不明というのが正しいところでしょう。
インド神話では敵や悪魔とされるアスラ族が仏教に入ると神になってしまうのが不思議でもあり、おもしろいところでもあると思われます。

大日如来
大日如来

エンタメ世界でのヴィローシャナ

ヴィローシャナはプラジャーパティの言葉をあっさり信じる単純さ、素直さもあり、強力なインドラと戦って敗れるという悲劇もあり、調べると案外おもしろいキャラのようですね。

女神転生シリーズ

初出作品は「真・女神転生Ⅱ」。
魔神という種族の高位悪魔として登場します。
真・女神転生Ⅱでは魔界のケセド寺院で、自身に救いを求め祈る者は正邪やロウ・カオスの様な思想の違いの別なく救うという大乗仏教的な思想を持ち、アスラとしてより大日如来の性格が強いように思えます。

ヴィローシャナ
ヴィローシャナ(真・女神転生2)

女神転生シリーズにおけるヴィローシャナの特筆すべき点は、天魔アスラおうと表裏一体の存在として扱われていることです。
特に「デビルサマナー葛葉ライドウ対アバドン王」では、国家を鎮護するべき大日如来(ヴィローシャナ)が、“ある時空の闘い”に呼応してアスラおうの姿をとり、アカラナ回廊の時空の狭間にて葛葉ライドウと激突します。
ここではその前身が光明神アフラマズダであったこと、“ある時空の闘い”で勝利を得ることでその姿に返り咲くことができることをアスラおう自身が語っています。

アフラ・マズダとはイランで広く信仰されていたゾロアスター教(拝火教とも呼ばれます)の神のことです。

ヴィローシャナ|大日如来と混同されたアスラ族の王 まとめ

インド神話では悪魔として、嫌われていたはずのアスラ族の王が、同じくインドで生まれた仏教(密教)に溶け込むと衆生を救う大日如来に変化するとは、意外すぎる転身ですね。
大日如来は密教の最高仏であり、両界曼荼羅の主尊として多くの人に信仰されています。
原典ではインドラのために割りを食って、なんとなく影の薄い報われない生涯だったと感じるヴィローシャナですが、異国で信仰されたことで少しは救われたのではないかと筆者は思うのです。