ギリシア神話には多くの美女が登場します。

今回紹介するスキュラは《犬の子》という意味ですが、元はとても美しいニンフだったそうです。

その美女がなぜ恐ろしい怪物になってしまったのか、お伝えします。

 

海の怪物に変化

スキュラ(モンスト) スキュラはシケリア島に暮らすニンフの一人で、その美貌に惹かれ求婚する男たちも多かったが、かたくなに拒んでいたそうです。

ところがある日、彼女が水浴びを楽しんでいると海神グラウコスが現れたのです。

美しいスキュラに恋したグラウコスは何とか思いを遂げたいと悩み、キルケーに助けを求めました。

魔女キルケーに惚れ薬を作ってもらい、スキュラに飲ませようとしたのです。

ところが、キルケーは仕事を忘れ、グラウコスに恋してしまったのでした。

とんだ三角関係ですが、スキュラには罪はないと思います。

スキュラを諦め、自分と愛し合おうとグラウコスを説得するキルケーですが、グラウコスは応じません。

キルケーの憎しみはスキュラに向かいました。

「あの女がいなければ」とばかり、スキュラがお気に入りの水浴び場所に毒を入れたのです。

何も知らない彼女がいつもどおり水に体を浸すと、みるみるうちに下半身は魚の尾を持ち、6つの犬の頭と12本の犬の足を持つ恐ろしい姿へと変わってしまったのです。

上半身は美女のままでしたが、スキュラは変わり果てた自分の姿を嘆き悲しみ、優しい性格だったのに、凶暴で残酷な性格へと変貌してしまいました。

知らぬ間にとばっちりを受けたスキュラは哀れとしか言いようがありません。

恋した女性の悲劇を知ったグラウコスはキルケーとのつきあいを完全に断ち切ったと言います。

 

英雄達との邂逅(かいこう)

蛸スキュラ神化(モンスト)メッシーナ海峡はイタリア半島とシチリア島を隔てる狭い海域ですが、スキュラと怪物カリュブディスの縄張りと言われています。

カリュブディスとは渦潮を擬人化した怪物です。

スキュラは岩の上に座り、狭い海峡を通る船を待ち受けています。

そこを船が通ろうとすると、スキュラは長い首を伸ばし、船員をさらって食べてしまうというのです。

また、テュポーンもこの能力を持っていましたが、子犬のような鳴き声で船員たちを油断させた上で、いきなり牙を剥き襲いかかるという説もあります。

メッシーナ海峡でスキュラを避けようとすると、今度はカリュブディスが大渦を引き起こし、船を転覆させてしまうのです。

トロイア戦争後、オデュッセウスがここを通る時、船ごと波に飲まれてしまうよりは、わずかな船員の犠牲ですむスキュラの方がマシと、彼女のいる方を選びました。

頭の切れる計算高いオデュッセウスならではの判断ですが、冷たい上司ですね。

とにもかくにも、この海峡にいるスキュラとカリュブディスという怪物コンビから無事に逃げ出すのがいかに難しいか、ゲームで言えば相当な【無理ゲー】ということになるでしょう。

スキュラの最期については、岩に変えられてしまったという説もありますが、それ以外のエピソードは見当たりません。

実はスキュラは不死身だったのです。

英雄達が退治しようとしても、死なない身でした。

そんな彼女の魔手から逃れるには神に祈るしか方法がなかったようです。

私見ですが、彼女自身、死にたいと思っていたのかもと思います。

美しい優しいニンフとして暮らしていた日々から、いきなり恐ろしい化け物になり、昔の仲間からも脅えられる日々に放り込まれたスキュラ。

もし、岩に変化したのなら、逆に幸せだったのではと考えます。

 

スキュラ~6つの犬の頭と12本の犬の足を持つ不死身の怪物の最期~ まとめ

《スキュラとカリュブディスの間》という英語の熟語があるそうです。

日本語では《前門の虎、後門の狼》で、前にも進めず、後退もできず、進退窮まった状況ということですね。

しかし、自分の知らない理由で化け物に変化させられたスキュラについては可哀相としか言いようがないと思います。

現在でも、変化はなくても、自分の知らぬ理由で被害を受けることがあるのではないでしょうか?

そう想像するとスキュラの悲劇は今に通じるものがあると思わずにはいられません。