北欧神話の神々の中で一番人気があるのが【トール】です。
名前の通り大きな男でしたが、よく言われるように「気は優しくて、力持ち」だったので、暗ささを感じないところが、人気の秘密なのでしょう。
今回はトールについて紹介します。
雷神トール
種族: アース神族
地域: アースガルズ
別名: 雷神、農耕の神、ソーなど
トールは北欧神話の最高神オーディンと女巨人ヨルズの間に生まれと息子です。
トールはオーディンの息子ですから、アース親族に属し、住むところはアースガルドです。
雷を司ることから、天候を支配し、農耕の神としても信仰されるようになりました。
オーディンを頂点としたアース神族内では最強の怪力を誇っていて、問題が起きると有無を言わず、腕力で解決しようとするきらいがあるのですが、性格は良く、根はお人好しな神です。
頑固で偏屈のところも感じられるオーディンの息子とは思えないような陽性の神ですね。
ミョルニル
怪力の持ち主トールには武器がたくさんありました。
まずは【ミョルニル】というハンマーです。
小人族のブロックとシンドリの二人が作ったハンマーで、柄が極端に短いのが欠点ですが、とてつもなく強大な破壊力を持つ武器です。
大地が変形するほどのパワーがあるので、このハンマーに一撃されて生き残ったものは、大蛇ヨルムンガンドのみと言われています。
実はヨルムンガンドは三度撃たれて死にました。
北欧神話最強の武器と呼ばれるこのミョルニルがデンマークで出土したというニュースがありました。
ヤールングレイプル
ミョルニルはあまりにも強大な力があるので、持ち主であるトール自身も【ヤールングレイプル】という鉄製の手袋をはめないと使えないそうです。
その【ヤールングレイプル】とは鉄の手袋です。
時にはアース親族の的となり、時には味方となるロキという神がいます。
筆者は、ロキはトールとは腐れ縁の悪友といった感じですが(『ゲゲゲの鬼太郎』のネズミ男的な存在。ネズミ男よりはあくどいですが)このロキに騙され、丸腰で巨人ゲイルロズの館に向かう羽目になったトールが女巨人グリーズから譲り受けたものです。
この手袋のおかげでトールは難を逃れたので、それ以後も愛用するようになりました。
メギンギョルズ
またトールは【メギンギョルズ】という帯も持っています。
女巨人グリーズがくれたもので、腹に巻くとパワーが倍増するそうです。
帯と言うより、腹巻きみたいですね。
タングニョースルとタングリスニル
トールは神様ですから、徒歩で移動はしません。
当然専用の乗り物がありますが、【タングニョースル】【タングリスニル】という名前の2匹の山羊が引く戦車でした。
山羊に引かせる戦車…というのものんびりしたイメージですが、神の乗り物ですから山羊もビッグサイズだったのでしょう。
雷の擬音語は「ガラガラ」と表現しますが、これは2頭の山羊が戦車を引く音だと言われています。
トールの性格
北欧神話中、最強の雷神トールは強さと純粋さを併せ持つ愛すべき神として人気が高いことは前述しました。
荒ぶる雷の神格化であるトールは、オーディンの息子なのに、最高神であり戦を司る父親以上の武力を誇っていたのです。
例えばトールは鍛え上げられた筋肉隆々の肉体を持っていました。
それだけでも充分強かったけれど、データで紹介した愛用品の数々を使うことでより一層の力を得ていたのです。
トールの代名詞とも言える大槌ミョルニルは、「打ち砕くもの」を意味する名前の通り、投げると必ず敵に命中して、相手を倒し、トールの手元に戻って来ました。
便利な武器です。
また、力を倍にする帯メギンギョルズを身につけていたので、山さえも砕くことができたそうです。
腕っぷしの強いトールは豪快な性格でしたが、反面お人好しなところがあったので、たびたび他の者に騙されたりしました。
でも、そのギャップが古代の人々に広く愛される理由でもあったのでしょう。
強大な破壊力のミョルニルを巨人スリュムに盗まれた時、トールは花嫁に女装してスリュムの館に乗り込み、見事ミョルニルを取り戻すという離れ業をやってのけています。
大男トールが花嫁衣装を着て女に化けるというのも想像するだけで滑稽ですね。
これもロキと協力して成功したものでした。
トールの妻シーフは美しい金髪を持っていました。
ところがロキはいたずら心から、昼寝している彼女の金髪を全て切ってしまったのです。
悲しむ妻の姿を見たトールはすぐにロキの仕業とわかりました。
オーディンを含む神々の前でロキを断罪し、シーフの金髪を戻すよう命令したのです。
ロキは色々とずるい手段でシーフの金髪を元に戻しましたが、このエピソードにもあるように、トールとロキは悪友であり、仇敵であり…という複雑な関係でした。
トールの戦い~神々と人間を守る~
トールがお人好しだった理由は、脳みそ筋肉男だったというわけではなくて、根が優しかったからと思われます。
彼は常に神々と人間を守るという使命に燃えており、どんな強敵が現れてもびびることはあませんでした。
北欧神話をまとめたという『新エッダ』によるとトールはフルングニルという粗暴な巨人と一騎打をしました。
トールは自慢のハンマーミョルニルを投げつけてフルングニルの頭を打ち砕き、倒しました。
また、神々の黄昏=ラグナロクでは大蛇ヨルムンガンドと死闘を繰り広げたのです。
この大蛇は、トールの悪友ロキと女巨人アングルボザの間にうまれた異形の息子でした。
トールはかつて海釣りをした際、針にかかったヨルムンガンドと対峙したことがありましたが、決着はつかなかったので、ラグナログで宿命の一戦となったわけです。
トールはヨルムンガンドにミョルニルを投げつけて殴り殺したのですが、彼自身も大蛇の毒が全身に回ったために9歩後退し、やがて力尽きてしまいました。
悪友ロキの息子によってトールは死にましたが、その息子マグニはラグナロクを生き延び、新世界でトールの形見となったミョルニルを発見し、受け継いでいったのでした。
エンタメ作品のトール
圧倒的攻撃力を持ち、雷を支配するトール。
その明快なキャラクター性がわかりやすいためか、エンターティンメント作品でもよく登場し、敵キャラとしても味方としても重宝される存在となっています。
マイティ・ソー
トールが主人公として活躍するエンタメ作品と言ったら、アメコミ『マイティ・ソー』でしょう。
前述のように【雷の神】【農耕の神】という別名を持ち【ソー】とも呼ばれますが、これはトール(Thor)を英語読みにしたものです。
有名なアメコミヒーロー『マイティ・ソー』はトールを原型として生まれたキャラクターなんだとか。
この実写の映画は日本でも大ヒットしましたね。
原作と映画では設定は違いますが、北欧神話を基本にしている点は同じです。
驚異的な戦闘能力を持つソーが魔法のハンマー、ムジョルニア(【ムジョルニア】はミョルニルの英語発音です)を使って強敵を次々となぎ倒していくのです。
ファイナルファンタジー
大ヒットした『FF(ファイナルファンタジー)』シリーズでは雷を操る敵キャラとして登場しました。
女神転生
『女神転生』や『ペルソナ』シリーズでは主人公をサポートする役で、雷属性の魔法を使用できる設定になっています。
と言っても、このトールを出現させるには一定の条件をクリアしなければならないので、かなりレアな存在になっているそうです。
ミョルニルとトールハンマー
破壊力の高い武器や技にミョルニルの名前がつけられている例は多く、アニメ版の『聖闘士星矢』や漫画『からくりサーカス』などに登場します。
また【トールハンマー】の名で『FF』シリーズや長編小説『銀河英雄伝説』、漫画『黒子のバスケ』などに色々なジャンルに登場するようです。
追記:喜多川阿弥
トール~雷神と北欧神話最強の武器ミョルニル~ まとめ
オーディンを始めとしてなんとなく陰気な雰囲気の北欧神話の神々のなかで、トールは一番陽性を感じる神です。
大いに笑い、大いに飲み、食べ、笑い、泣く-単純だけど人間的な行動が憎めないキャラとして高い人気を誇っているのでしょう。
人間の女との恋愛話はないようですが、愛人になるならオーディンよりトールの方が楽しそうですね。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。
「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)
もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。
現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。
マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。