名前の響きからして何やらまがまがしさを感じさせるグルヴェイグ。
彼女はアース親族以前から存在していたヴァン親族の魔女で、災いや諍いを起こすのを楽しみにしているというまさにステロタイプの魔女でした。
彼女がどんな災いをもたらしたのか、今回はちょっとホラーなお話です。
グルヴェイグとは?
種族: 魔女
地域: 不明
種族は魔女、住む場所も不明。
ヴァン親族ということしかデータがないようです。
一説によるとアースガルドの建設中に3人の巨人女がアース親族の所にやって来たそうです。
3人はアース親族と元に暮らし始めたのですが、やがてアース親族は今まで特に気にしていなかった【金】に執着し始め、それぞれが手元に集めるようになったそうです。
この3人の巨人女の一人がグルヴェイグと言われています。
あまり綺麗な響きではないのですが、グルヴェイグという名前には【黄金の力】という意味があります。
また黄金は人間を堕落させると言われますから、まさしく【人間にとって良くないもの】と言えるでしょう。
グルヴェイグに【黄金の力】という意味があることを考え合わせると、このエピソードも有りかなと思いますね。
また、彼女はヴァン神族に伝わる【セイズ呪術】を自由に操りました。
セイズ呪術というのは、肉体的快感を伴う呪術のことで、彼女がこれをアース神族の女神たちに伝えたため、アース神族の女神たちは欲望に忠実に振る舞うようになり、放埒な恋愛関係を満喫するようになってしまったのです。
一言で表現すれば【グルヴェイグはアース親族の女神達を堕落させた】ということになります。
真面目で聖なる女神達が堕落したことに怒ったアース神族は原因のグルヴェイグを捕らえ、3回も殺そうとしました。
不死身の体
オーディンの槍によって3回も突かれたにも関わらず死ぬことはなく、アースガルドの城壁の上で炎に焼かれても死ぬことはなかったそうです。
逆に、黄金が精錬されますます輝きを増していくかのように彼女の体は復活したと言われています。
魔女の心臓
ある説ではグルヴェイグの体はやっとのことで焼き尽くされましたが、その心臓だけが焼け残り、それをロキが喰らったと言われています。
魅惑のセイズ呪術
ヴァン神族は美しさや賢さが特徴で、魔術の腕前はアース神族以上だったと言われています。
アース神族との間に度々争いが起こっていたので、和解の証として航海の神ニョルズ、豊穣の神フレイ、愛と美の女神フレイヤが人質となってアースガルドで暮らすようになったという経緯があります。
そのヴァン親族のグルヴェイグはある日アースガルドを訪れました。
その目的は本能のままにふるまってしまう【セイズ呪術】をアース神族の女神たちに伝えるためだったのです。
魔法道具を使用して自分自身を忘我状態にして、魂を体から解き放ってどこへでも移動させることができるというのがセイズ呪術だったのです。
前述のようにこの呪術には肉体的快感が伴うものでした。
このいかがわしい呪術にアース神族の女神たちははまってしまったのです。
風紀の乱れを問題視したアース神族が、グルヴェイグを処刑することにしたのですが、オーディンの槍に3回刺されても死なず、焼かれてもなかなか死ななかったグルヴェイグ。
不死身の体を持っていたかのようですね。
しかし、遂に焼かれて死に、心臓だけはなぜかロキが食べたと言われています。
実はこの時、ロキはグルヴェイグの術にはまって言いなりになったとも言われているのです。
グルヴェイグとフレイヤは同一神?
魔女であると書いてはありますが、グルヴェイグの正体は、正確にはわかっていません。
なのに、輝くばかりの美貌の神フレイヤと同一神という説が登場するのはなぜでしょう?
実はグルベヴェイグもフレイヤも二人ともセイズ呪術に長けた使い手であるとされているのです。
またノルウェー王朝の歴史書『ヘイムスクリングラ』には、【フレイヤがアース神族にセイズ呪術を教えた】という記載があるので、二人はたびたび同一視されたようです。
グルヴェイグの名前の由来となっている【黄金】は、王が戦士に黄金の腕輪を与えるという儀式にもあるように、古代の北欧戦士にとっては非常に重要なものでした。
とは言え、黄金に溺れることは堕落であり、恥ずかしいことでもあったと思われます。
現代でも拝金主義は軽蔑されますよね。
魔女グルヴェイグは【堕落させる犯人】であるために何度も殺されかけましたが、死にませんでした。
彼女の生への執着は、人間の黄金に対する尽きることない欲望を表しているようにも思えます。
エンタメワールドのグルヴェイグ
魔女という敵設定、多分色っぽく、かつ強い(不死身)のグルヴェイグはゲームのキャラクターとしてはとても動かしやすいようですね。
ヴァルキリーコネクト
神話の神々を操り、乱れた世界のバランスを取り戻すこのゲームに登場するグルヴェイグは覚醒させると攻撃属性が水に変わるそうです。魔女として知られるグルヴェイグなだけに魔法攻撃が得意で、専用コスを装備すれば敵の男性キャラを全て石化できるという男性キャラにはめっぽう強いキャラクターです。
デザインがムダにセクシーなところも北欧神話を踏襲しているようです。
ソウルリバースゼロ
欲望と金欲に特化したキャラ設定。
セイズ呪術からかアビリティは「性の悦び」というとんでもないキャラ。
欲望の魔女というだけあって妖艶な雰囲気に描かれているようです。
追記:喜多川阿弥
グルヴェイグ~セイズ呪術の肉体的快感で神々をも堕落させる魔女~ まとめ
神や人間の心を乱す魔女グルヴェイグ。
確かに忌まわしい存在なのかも知れません。
しかし、グルヴェイグは人間の本性を具現化したものではないかとも思います。
肉体的快感にしろ、金銭的欲望にしろ、人間とは切っても切れないものです。
だからこそ、己の汚い部分を見せられるようで、オーディンは彼女を消してしまおうとしたのではないかと感じます。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。
「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)
もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。
現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。
マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。