アースガルドの最高神オーディンはラグナログに備えて、最強の戦士を集めようとしました。
その戦士はエインヘリヤルと呼ばれましたが、エインヘリヤルとなるためには、まずはオーディンの宮殿ヴァルハラに入ること=死ぬことを意味していました。
そして選ばれた死者の魂をヴァルハラに導くのがワルキューレと呼ばれる乙女達です。
ブリュンヒルデはその中でも美貌と知性に優れた娘でした。
美しき戦乙女
種族: ワルキューレ(人間)
地域: ヴァルハラ宮殿(アースガルド)/ミッドガルド
別名: 戦場の女神、死の女神、ブリュンヒルド、シグルドリーヴァ、ワルキューレ、ヴァルキューレ、ヴァルキリーなど
元々は人間でしたが、オーディンに選ばれワルキューレとなったため、アースガルドのヴァルハラ宮殿に住むことになったのです。
別名はご覧の通りたくさんありますが、有名なのは【ワルキューレ】ではないでしょうか?
ワーグナーの歌劇『ワルキューレの騎行』には多くのファンがいますよね。
この曲を映画『地獄の黙示録』で知った方も多いのではないでしょうか?
ジャンジャジャジャージャン♪ ジャンジャジャジャージャン♪ という勇ましいリズムで始まるあの曲です。
ちなみに、この曲をドライブ中にかけるのは厳禁と言われています。
気分が高揚しすぎて気が大きくなり、スピードを出しすぎるとか、注意力が散漫になる恐れがあるそうです。
さて、ブリュンヒルデはブズリ王の娘で、アトリ王の妹とされ、最高神オーディンに仕える戦乙女ワルキューレの一人です。
有名なワーグナーの歌劇『ニーベルングの指輪』にも登場しますが、その中ではオーディンと女神エルズの間に生まれた娘ということになっています。
美人揃いのワルキューレの中でも、特に美人と言われ、しかもルーン文字や魔術の知識も持っていた才色兼備の女性と評判でした。
その美女は竜を倒した英雄シグルズと運命の恋に落ちましたが、悲劇的な終わりを迎えたのです。
白鳥の羽衣
この羽衣を身につけると白鳥に変身できると言います。
ワルキューレはこの羽衣を使って白鳥に姿を変えると、戦場を縦横無尽に飛び回り、勇敢な戦士の魂を見定め、エインヘリヤルとして選びました。
何回も言いますが、エインヘリヤルに選ばれたと言うことはイコール死を意味しています。
勇敢な戦士として戦場に倒れた戦死者の魂は、ワルキューレがヴァルハラ宮殿に導きます。
そこで手厚くもてなされ、訓練を積んで戦闘力に磨きをかけ、最終戦争ラグナロクに備えたのです。
戦士の運命を決定する乙女
ワルキューレは最高神オーディンに仕え、ラグナロクのために勇敢な戦士の魂をヴァルハラ宮殿へ導きます。
彼女たちは天駆ける馬を駆って戦場を駆け巡り、時には白鳥に姿を変えて仕事にいそしみ、戦士の運命を決めました。
一口にワルキューレと言っても、彼女達の出身は様々で、アース神族に限らず、巨人族やブリュンヒルデのように人間の娘もいたのです。
と言うことは、ワルキューレも死んだからヴァルハラに入れたということなのでしょうか?
ワルキューレには【戦死者を運ぶ者】という意味もあるそうなので、自分たち自身も死者なのでしょうね。
美しいワルキューレは人間の英雄と恋に落ちることもあり、相手を過酷な運命へと追いやってしまうこともありました。
ブリュンヒルデはその中でも有名な乙女です。
彼女は主人であるオーディンの意に逆らって、最高神の敵であり本来なら戦死するはずだった王を勝たせてしまったのです。
ブリュンヒルデの反逆に怒ったオーディンは、彼女を灼熱の炎に囲まれた城で長い眠りにつかせてしまいました。
この長い眠りの呪縛から戦乙女を解き放ったのが、【竜殺しの英雄】シグルズでした。
愛と憎しみで我が身を滅ぼしたブリュンヒルデ
長い呪いの眠りから目覚めたブリュンヒルデ。
自分を救ってくれたシグルズと一目で恋に落ち、二人は永遠の愛と忠誠を誓いあったのです。
ここまでならグリム童話にありそうな展開ですね。
しかし、ここでめでたし、めでたしで終わらないのが北欧神話たる所以です。
美しい恋人との婚礼に胸弾ませるシグルズは、ギューキ王の館に立ち寄ります。
そこで恋の行方はねじ曲げられてしまったのです。
ギューキ王には娘グズルーンがいました。
彼女が英雄にのぼせあがったのか、母親が突っ走ったのか、理由ははっきりしませんが、王妃はグズルーンの婿にシグルズを迎えたいと画策し、彼に忘れ薬を飲ませたのです。
シグルズはブリュンヒルデのことをスッコーンと忘れ、言われるままにグズルーンと結婚してしまいました。
それどころか、ブリュンヒルデのことを知ったグズルーンの弟グンナルの願いを叶えるため、ブリュンヒルデをだましてグンナルと結婚させてしまったのです。
思いがけないことで、好きでもない男の妻になったブリュンヒルデ。
恋敵であり義妹でもあるグズルーンとちょっとしたことから言い争いになり、興奮して罵り合ううちに、ブリュンヒルデはシグルズがグンナルのふりをして、自分との結婚に持ち込んだという事実を知ってしまったのです。
だまされた、裏切られた-自分の誇りをズタズタにされたブリュンヒルデはシグルズへの思いが憎悪に変わったことを感じたでしょう。
彼女はグズルーンの弟達をそそのかし、シグルズを暗殺させたのでした。
自分が望んだことではありましたが、愛した男を失ったブリュンヒルデは生きる気力をなくしました。
グンナルとの間に子どももいなかったようですし、ワルキューレでもなくただの人間となったブリュンヒルデをこの世に留めるものはなかったのかも知れません。
かつては凛々しい戦乙女としてアースガルドや天空を駆け巡ったブリュンヒルデは、シグルズと一緒に火葬してくれるよう言い残し、自らの命を絶ったのでした。
このときブリュンヒルデはシグルズがファフニールから奪ったアンドヴァリの指輪を持っていました。
呪いの指輪と呼ばれるアンドヴァラナイトです。
この呪いで、シグルズとブリュンヒルデは悲恋に終わってしまったという説もあるそうです。
エンタメワールドのブリュンヒルデ
ブリュンヒルデの悲しい恋物語は、ワルキューレの特性-うら若い乙女特有の冷酷さ、自分が見こんだ男性には情熱的に愛を捧げる-をよく表していると言われます。
ゲーム作品などでも、こういった特性がポイントとなり、愛に身を焦がし、狂気的な行動を起こしてしまうキャラクターとして設定されることが多いようです。
ブリュンヒルデ~美しきワルキューレとジークフリードの恋物語~ まとめ
裏切られた悲しみを憎しみに変えて相手を死に追いやってしまう-北欧神話だけではなく、ギリシャ神話にも散逸するエピソードです。
現代にもこういった動機による事件も多いですね。
そう考えると人間の本質というのは時が経ってもあまり変化ということなのかも知れません。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。
「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)
もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。
現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。
マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。