北欧神話の最高神オーディンの妻フリッグ。
同じ最高神の妻とは言え、ゼウスの妻ヘラと違って、夫の浮気に嫉妬したとか、夫の愛人に嫌がらせをしたとかなどのエピソードはほとんどありません。
それだけ人格者だったのかも知れませんが、逆に言えば、おもしろみのない女神だったということかも知れませんね。
最高神オーディンの妻フリッグ
種族: アース神族
地域: フェンサリス(アースガルズ)
フリッグは言うまでもなくアース親族であり、住むところはオーディンと同じアースガルドです。
フェンサリス(フェンサリル=海の宮殿)というすばらしい宮殿に住んでいました。
オーディンとは別居結婚だったのか、あるいはオーディンが通い婚だったのかも知れませんね。
フリッグという言葉には【愛されるもの】とか【伴侶】という意味があるそうです。
その名にふさわしく、フリッグは結婚と出産を司る女神とされました。
『ヴォルスンガ・サガ』によると子どもに恵まれない夫婦がフリッグから子宝のリンゴを与えられて懐妊するというエピソードがあるそうです。
職掌や名前が似ていることから【愛と美の女神フレイヤ】とフリッグは同一視されることも多いのですが、フリッグはアース神族、フレイヤはアース親族とは別のヴァン神族出身女神ですから、出自は異なっています。
そしてフレイヤには【美しい】という形容詞が付くのですが、フリッグにはあまり付かない…ということで、美女というイメージは無いようです。
フリッグは女と言うより、妻、そして母親というイメージの強い女神です。
というのは、自慢の息子バルドルに対する愛情という強烈な印象があるからです。
オーディンと間に生まれた性格も頭も良い美貌の息子バルドルに、フリッグは溢れんばかりの合い情話注ぎ、彼を失うことを恐れ、世界中のものに「バルドルを傷つけない」と契約させ、不死身にさせました。
ところが蟻の一穴とも言うべき手落ちがあり、バルドルが死んでしまったこと、生き返らせようとした試みがロキによって失敗してしまったことは別章でも紹介しましたね。
バルドルの項を参照
バルドルのエピソードに見るように、強く優しい母フリッグですが、夫オーディンに対しては己の価値観を主張したり、時には最高神に逆らうような言動もありました。
と言っても、ギリシャ神話のヘラのように、ゼウスを追い詰めるようなギリギリのことまではしなかったようです。
フリズスキャールヴ
アースガルドには【世界中を見ることができる】と言われるフリズスキャールヴという玉座がありました。
玉座ですから、当然のことながら最高神オーディンの座で、彼とフリッグしか座ることが許されない高貴な場所でもありました。
光の貴公子バルドルを殺した邪神ロキが逃げ出したときには、オーディンはこの玉座から世界中を見渡し、息子の敵を見出したと言われています。
アグナルとゲイルロズ
オーディンとの諍いで有名なのが、それぞれがアグナルとゲイルロズという人間の兄弟を養子にして、どちらが優秀になるか競ったエピソードです。
オーディンが育てたゲイルロズは勇敢な青年に、フリッグが育てたアグナルは知識豊富な優しい青年に成長しました。
やがて二人を故国に返したオーディンでしたが、ゲイルロズは兄アグナルを櫂のない船に置き去りにして自分だけ帰国したのでした。
ゲイルロズは父王の後をついで国王となり、アグナルは馬番に身をやつして暮らしていましたが、オーディンはそれを見破り、結局暴政を敷いていたゲイルロズはオオカミに変えられ、アグナルが国王として人々に愛されるようになったのでした。
この結果は、フリッグの教育がオーディンに勝ったと言えましょう。
このように何回もフリッグにやりこめられたオーディンですが、妻には一目置いていたようで、前述した世界の全てを見渡せる【フリズスキャールヴ】に自分以外で唯一座ることを許していました。
お互いの才能を認め合っている夫婦という感じがしますね。
エンタメ作品のフリッグ
残念ながらフリッグが登場するゲーム作品は少ないようです。
夫唱婦随と言うか、夫のそばにいるだけの妻はゲームのキャラとしてもおもしろみがないのでしょう。
主役のサポート役が多いようですね。
斬撃のレギンレイヴ
家庭用ゲーム『斬撃のレギンレイヴ』に登場するフリッグは、戦闘には加わらず、中心的な活動はナビゲーターです。
FOW(フォースオブウィル)
カードゲーム『FOW(フォースオブウィル)』や『バトルスピリッツ』などでは優雅な女神の絵柄で表され、防御重視の能力を持ったキャラになっています。
遊戯王
アニメでも大ヒットした『遊戯王』。
フリッグそのものはいないのですが、ダメージを全て消してくれる効果を持つ【フリッグのリンゴ】のカードがあります。
アナと雪の女王
アグナル国王といえばディズニーの名作『アナと雪の女王』に登場する主役アナとエルサの父でありアレンデールの国王としてしられるアグナルですよね。
アレンデールは、王位継承者により統治されるという仮想国であるが、北欧の君主制王国、モデルとなった国がノルウェーとされています。
また公用語は不明とされていますが劇中の国王即位式には古ノルド語とルーン文字が使用されているということから北欧神話からの影響がふんだんに盛り込まれているともいえるでしょう。
フリッグ~アグナル国王を育てた結婚と出産を司る平凡な女神~ まとめ
良妻賢母というか、フリッグのエピソードはバルドルのだけ-という印象の方も多いのでは?
ゼウスとヘラのように世界中を巻き込む夫婦ゲンカをしたわけでもないし、美男美女カップルでもないようだし…
というわけでイマイチマイナーなフリッグ(&オーディン)
でも、「そんな平凡さがイイ!」と思うファンもいるのでは?
最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。
「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)
もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。
現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。
マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。