摩利支天~聖徳太子に鏑矢と「忍」の一字を授けた陽炎の神~

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摩利支天(モンスト)

今や少女漫画家の大御所と呼ばれる木原敏江の名作に『摩利と新吾』シリーズがあります。

美少年二人の友情(にしては深すぎる二人の関係)に人気の作品でした。

主人公の一人日本人の父とドイツ人の母を持つ摩利の名前が摩利支天にちなんでいると言うことが記憶に残っています。

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摩利支天とは?

日本で信仰されている仏教の神で、摩利支天という名前の他にも【摩利支天菩薩】【摩利支提婆】【摩利支天女】などの別名を持っています。

元々はサンスクリット語【マリーチー】の音訳で【陽炎】を意味した単語ですが、神化されました。

インドのヒンディー教の神で梵天の子とされていましたが、仏教の守護神となったそうです。

摩利支天は男の神とされていますが、陀羅尼集経(だらにじっきょう)第十にある摩利支天経には「其の作像法は天女の形に似たり=その容姿は天女のような美しい女に似ている」とあるので、美女の姿でも考えられたようです。

20年ほど前のテレビアニメ『天空戦記シュラト』はヒンディー教神や仏教神の名前のキャラが大活躍したアニメですが、マリーチという名前のキャラもいて、最高神であるビシュヌを守っていました。

常に日月天の前を行くとされる摩利支天は、自分は太陽や月を見ることができますが、太陽や月は摩利支天を見ることができないのです。

元々が【陽炎】を実体化した神なので、【見ることも捕らえることもできない】のです。

逆に言えば、【敵から見つかることもなく、捕まることもない=無敵】ということにつながりますね。

そんな摩利支天が武将達にとって守護神として祀られたというのも当然だと思いませんか?

武将、忍者達が信仰

摩利支天像

摩利支天像

【敵に見つからず、捕まらない】摩利支天は戦神とされるようになりました。

「オン アニチ マリシエイ ソワカ」この言葉は摩利支天の真言(タントラ)です。

忍者に興味のない方でも、戦国時代が好きな方ならこの言葉を一度ぐらいは耳にしたことがあるのではないかと思います。

戦場で軍旗を立てながらこの真言を唱えると、一切の厄災を免れ、敵から姿を隠す事ができると信じられていたそうですよ。

武田信玄の軍師だった山本勘助、秀吉の盟友だった前田利家、戦国大名毛利元就や九州の立花宗茂などが摩利支天を信仰していたと言います。

そう言えば2008年のNHK大河ドラマは山本勘助が主役の『風林火山』でしたが、初期の回に【摩利支天の妻】というタイトルがありましたね。

これは山本勘助=摩利支天ということだったようです。

そしておもしろいことに、摩利支天は忍者からも人気があったようですよ。

忍者にとっては最強の神様だったというわけですが、理由はなぜでしょうか?

前述したように摩利支天は、要するに【陽炎】の神様ですね。

インド仏教では女性神だったようですが、日本では男性としても描かれるようになったようです。

忍者でも甲賀(滋賀県)に伝わる摩利支天像はほとんど男神の姿だそうです。

仏教で帝釈天と阿修羅が戦ったとき、摩利支天は帝釈天に加勢し、結果として帝釈天は見事勝利を治めたと言われています。

摩利支天は他の者には姿が見えず、捕まえることもできないし、火にも焼かれず、雨にも濡れることはなく、要するに何を使っても傷つけられないという神なのです。

ということは、常勝神、不敗の軍神ということですよね。

戦いに明け暮れた戦国武将や、他人に見られてはいけない忍者が守護神として崇めるのも当然と言えば当然だと思います。

本当?聖徳太子にも味方

聖徳太子

聖徳太子

伊賀と双璧の忍者集団である甲賀。

それほど数は多くはないのですが、甲賀に伝わる忍術伝書の中には摩利支天と書いてあったり、摩利支天像の一部が残っているそうです。

ということは、明らかに甲賀忍者たちは摩利支天を祀っていたのでしょう。

ちなみに滋賀県にある甲賀忍者たちの総社とされる【油日(あぶらひ)神社】ですが、聖徳太子が蘇我馬子たちと協力して物部征伐に参加したときに力添えをしたという伝説があります。

物部征伐出発に際し、聖徳太子は油日神社に参詣しました。

すると油日大明神は摩利支天へと姿を変え、聖徳太子に【鏑矢】を授けたというのです。

この矢を使用して物部守屋の首を取ることができた聖徳太子は「忍」の一字をもらった、と望月家に伝わる『忍術應義伝』という文書に記載があります。

個人的な感想ですが、厩戸王子(聖徳太子)の物部征伐に当たっての神々の協力については、日本書紀などにある【四天王の協力のおかげで物部守屋を倒せた。そめために王子は後に大坂に四天王寺を建立した】という説の方が有力ではないかと思っています。

いずれにしても、甲賀を訪れた聖徳太子という超エース級のヒーローを助けたという摩利支天。

その神を甲賀の総社に祀っていることからも、甲賀忍者たちが摩利支天を強く信仰していたようですね。

摩利支天の加護を受ける方法

神様のご加護を受けたいときには、その神の真言(タントラ)を唱えますよね。

摩利支天のご加護を受けるためには【摩利支天隠形法(まりしてんおんぎょうほう)】を唱えましょう。

忍者ショーなどでは、この真言をやっているのを見ることがあると思いますので、是非覚えておきましょうね。

一緒にやるともっともっとご加護が受けられるかも。

ではやり方の説明です。

  1. 大金剛輪印(右手と左手の同じ指同士を付ける)を作って心臓にあてます
  2. 「オンアニチマリシエイソワカ」と7回唱えてください
  3. 心臓→おでこ→左肩→右肩→頭の順番で印をあててください
  4. 隠形印(片方の手を片方の手で包む)を結んでください
  5. 「オンアビテヤマリシソワカ」と108回唱えます

摩利支天~聖徳太子に鏑矢と「忍」の一字を授けた陽炎の神~ まとめ

名前からして女性的ですが、実は戦神として尊崇されている摩利支天。

このあたりはギリシャ神話のアテナ女神を連想させますね。

それにしても、聖徳太子とも関わりがあったというのは驚きました。

  • 2017 10.28
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