物語の開幕を意味する《プロローグ》という言葉をご存じですか?
実はこの言葉はギリシア神話の英雄プロメテウスにちなんだ言葉と言われています。
「先見の明」の意味を持つプロメテウスについて今回は紹介したいと思います。
人間に火をもたらしたプロメテウス
プロメテウスは人間と深い関わりのあるティターン族の神です。
最初の人間を土を使って作りあげたのが彼だとも言われているのです。
ティターン族ではありましたが、ティタノマキアの際、プロメテウスはゼウスに味方しました。
一応協力者ではあったのですが、ゼウスが人間に対して計算づくの対応(人口を減らすためのトロイ戦争など)をしたのと対照的にプロメテウスは人間に便宜を計らってあげることが多かったのです。
人間への協力で一番有名なのが《火》を与えたことでしょう。
寒さに震える人間を哀れんだプロメテウスは火山から取り出した火を授けました。
火を持ったことで、調理方法を増やした人間は体格もよくなり、行動範囲も広がり、知恵も深くなったのです。
それを疎んだゼウスは人間から火を取り上げました。
そしてプロメテウスを罰したのです。
その罰は、コーカサス山脈に縛り付け、毎日ワシに内臓を食い荒らされるという悲惨なものでした。
もちろんプロメテウスは神ですから、死にません。
しかし、痛みは感じるはずです。
食い荒らされた内臓も1日で回復します。
そしてまたワシが食い荒らす…
永遠に続く堂々巡りの悲惨な罰でした。
しかし「先見の明」プロメテウスはゼウスが自分をいずれは解放するだろうとわかっていました。
理由はやはりゼウスの女性関係です。
ゼウスが目を付けた女神テティス。
彼女との間に生まれる子どもがゼウス以上の力を持つことになるとプロメテウスは予知していたのです。
それを聞く代償としてゼウスはプロメテウスを解放したのです。
プロメテウスがまさに命をかけて人間に与えてくれた火は、文明に大きな影響も与えました。
生活の質も向上しました。
しかし人類はそのことによって、ゼウスの怒りを受けることにもなったのです。
現在《プロメテウスの火》という言葉は、強大すぎて人類が制御できない、リスクの多い科学技術の暗喩として使用されていますね。
一番ふさわしいのは原子力だと思います。
プロメテウスと星座
コーカサス山脈でワシに内臓を食い荒らされるという罰を受けたプロメテウス。
毎日毎日彼を襲撃していたワシを毒矢で射殺したのがゼウスの息子であるヘラクレスです。
矢座はこのエピソードに由来すると言われ、ヘラクレスの射た矢が星座になったのだということです。
一番大きな目立つ星はシャムという名前です。猫みたいですね。
プロメテウス~人間に火を与えコーカサスで処刑された黒の獅子王~ まとめ
プロメテウスで連想するのは、安彦良和原作アニメ映画『アリオン』です。
女神デメテルの元で育った少年アリオンが、冥王ハデスに掠われ、実の父親であるポセイドンの元に行き、数々の冒険を経て、本当の両親、自分の大切な者に出会い成長していく物語です。
ここに登場するプロメテウスは、人間は単なる数と考え、享楽的なゼウス、恐ろしき大母神ガイアなどとは違い、子どもを愛する誠実なキャラクターでした。
ギリシア神話のプロメテウスも人間を愛し、そのために誠意を尽くしてくれた神のような気がします。
それにあやかって、『アリオン』でのプロメテウス像が作られたのかなと思います。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。
「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)
もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。
現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。
マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。