北欧神話で一番モテモテの女神は何と言ってもフレイヤでしょう。

美しさもですが、性格にちょっとだらしないところがあるのも、スキがあってもてる理由なのかも知れません。

彼女がどうしても手に入れたい首飾りのために小人達とベッドを共にしてというエピソードは以前紹介しましたね。

今回はそんなフレイヤに惚れ込んだ巨人スリュムを紹介します。

 

スリュム

種族: 巨人族
地域: ヨトゥンヘイム

巨人族で、ヨトゥンヘイムに住んでいるということしかデータはありません。

性格は単純熱血直情…と見えて意外と深謀遠慮な巨人です。

 

フレイヤを手に入れるための画策

ロキを待つスリュム
ロキを迎えるスリュム
出典:ウィキペディア

『古エッダ』中には、スリュムは巨人の国ヨトゥンヘイムに住む王の一人と書いてあります。

王として豊かな財産を持ってはいたのですが、彼は妻がいないことをとても不満に感じていたそうです。

そこで目を付けたのが、アースガルド一の美女神フレイヤです。

身の程知らずというのはこういうことを言うんじゃないでしょうか?

さすがにスリュムも正攻法ではフレイヤの心を掴むことはできないとわかっていました。

彼は迂遠な方法を取ったのです。

まず、アースガルド随一の力持ち雷神トールから愛用の大槌ミョルニルを被過疎に盗んだのです。

大切な槌を盗まれたトールは、慌てて悪友ロキに相談しました。

やがてミョルニルを盗んだ犯人はスリュムとわかりましたが、取り返しに行ったロキに対し「返して欲しければ、愛と美の女神フレイヤを俺の妻にしろ」と言ったのです。

無理を承知でフレイヤを説得するトール。

しかし、彼女は「バカにしないで、私にも選ぶ権利があります」と激怒。

確かに男性ならよりどりみどりのフレイヤが巨人の妻になるはずはありません。

フレイヤがうんと言わなければ、ミョルニルは戻って来ません。

はてどうしたらよいのか、悩んだトールにロキが提案しました。

 

トール女装する

女装するトール
女装するトールと侍女に扮するロキ
カール・ラーション作

「君がフレイヤのフリをしてスリュムのところに行けばいい、油断した隙にミョルニルを奪い返すんだ」

ロキの言葉に絶句するトール。

雷神で男の中の男というイメージのトールが女装とは!

トール本人の思いをよそにロキの提案にアースガルドの神々は大喜び。

早速衣装や装飾品を用意して、トールを待ち構えます。

愛用の大槌は自分だけではなく、アースガルドにとっても大切なもの、絶対取り返さなければならないという責任感に押され、トールは女装を受け入れたのでした。

いくら神とは言えトールとフレイヤではスタイルが違うと思うのですが、やっと来たフレイヤ(のような者)にスリュムは大喜びでいそいそと出迎え、キスしようとします。

ところが、フレイヤならぬトールのギョロッとした血走った目にびっくり。

スリュムの動揺を見たロキ(侍女に化けていた)は「フレイヤ様は貴方に恋焦がれるあまり、8日間も寝ることも食べることも忘れていたのです」と適当なことを言ってごまかしました。

その言葉に納得したスリュムは、ウキウキと花嫁へプレゼントをあげようと、ミョルニルを持ってきました。

「これをおまえへの引き出物に」とフレイヤに化けたトールの膝に乗せたのです。

トールは大槌を見るや否や、掴み上げ、そのままスリュムの頭に振り下ろしたのでした。

スリュムを倒して勢いづいたトールは【行きがけの駄賃】とばかり、館にいた他の巨人達まで殺しにしてアースガルドへと戻ったと言います。

 

エンタメ世界のスリュム

女装したトールに殺されてしまった巨人スリュム。

と書くと、何とも情けないイメージですね。

彼は北欧神話の中ではあまり登場しないのですが、このエピソードはよく知られています。

厳つい男の女装ネタや、性別と見た目が異なるキャラクター(今ならLGBTとか男の娘)の名前に用いられることが多いようですよ。

スリュム(ぼくとドラゴン)
スリュム(ぼくとドラゴン)

 

スリュム~雷神トールが女装!?フレイヤに恋した巨人の王~ まとめ

トールのようなデカイ男が女装するという話は滑稽でクスッと笑えるエピソードで、北欧神話の中でも人気があるようです。

それにしても、フレイヤが自分のものになると舞い上がっていたにしろ、ロキの言い訳を鵜呑みにしてあっさりとミョルニルを渡してしまうスリュムはかわいげがあると感じるのですが、いかがですか?