《貞女》の代名詞になりそうなイタケ王オデュッセウスの妻ペネロペ。

夫がトロイ戦争に従軍し10年不在、終戦後も10年諸国をさすらい、生死不明。

その留守を舅と息子とともに守ったという、これ以上ない《夫に忠実な妻》でした。

トロイア戦争に参加した男たちは帰国後、悲劇に見舞われた者も多いのですが、オデュッセウスは堅固な妻のおかげで元通りの生活に戻りました。

そのペネロペ、同性としてはちょっとつき合いづらい感じのする女性を紹介します。

 

20年以上不在の夫を待ち続けた妻

ペネロペ(フィンガーナイツ)ペネロペはスパルタ王テュンダレオスの弟イカリオスを父に、ニンフのペリボイアを母に持つ美しい女性でした。

イタケ王オデュッセウスに乞われ、その妻となりテレマコスという息子に恵まれました。

幼い頃は彼女はアルナキアと呼ばれていましたが、海に落ちた時に紫色の羽根の鴨に助けられたので、ペネロペという鴨を意味する名前に改めたと言われています。

ちなみにスパルタ王テュンダレオスとはあのヘレネの父ですから、ペネロペはヘレネとは従姉妹になります。

美女だったのも当然かも知れませんね。

さて、イヤイヤながら(内心ホクホクとして)夫がトロイア戦争に出征すると、ペネロペは小さな島国イタケを守る立場になりました。

しかし、男が不在では嘗められることも多々あります。

頼りの舅も20年間の間に老いますし、テレマコスもまだまだ青二才の年齢です。

領地の作物などを盗まれたり、税金をごまかす者も現れ、当時の女性としてあまり世間を知らなかっただろうペネロペはとても苦労したことと思われます。

しかも、ペネロペ自身にも災難が降りかかってきました。

何しろヘレネの従姉妹で美貌と才気で知られたペネロペです。

「オデュッセウスは帰ってきゃしないさ」とトロイア戦争の状況を聞きかじった男たちが、図々しくペネロペに求婚し始めたのでした。

それだけではありません。

勝手に館のものを持ち出したり、連日宴会を開いてどんちゃん騒ぎをするなど、財産を食いつぶし始めたのです。

さすがに舅が注意したり、テレマコスも非難しますが、男たちは逆に言い返したり、ひどいものは「あの子は邪魔だ」と息子を殺しかねないほどの険悪な空気が漂うようになっていったのです。

テレマコスの命を守りたい、でも再婚なんてまっぴら-ペネロペはなんとかごまかす方策を考えました。

ペネロペ(機織)自室に機織りを置くと、「我が夫オデュッセウスの父御ラエルテス殿に何かあったときの装束を作らなくてはなりません。これが織り上がったら相手を決めましょう」と言って、機織りを始めたのです。

日中は真面目に機織りに励みますが、夜になると片っ端からほどいてしまいます。

と言うことは、いつまで経っても装束はできあがらない、ペネロペは時間稼ぎをしていたのです。

しかし、「あまりにも時間がかかりすぎる」と考えた男の一人がペネロペの侍女を籠絡し、この事実は明らかになってしまいました。

ごまかされたことを知った男たちの要求はますますひどくなってきます。

また、テレマコスへの迫害も増長したため、身の危険を感じた青年は館を抜け出て、オデュッセウスの忠実な老羊飼いのもとに隠れていました。

 

オデュッセウス帰還

オデュッセウスの弓数々の国や島を放浪し、女性達とのアバンチュールを楽しんだオデュッセウスがこっそりとイタケに戻ってきたのはその頃でした。

用心深い彼はすぐ館に戻らず、忠実な老臣(羊飼い)の小屋を訪ねたのです。

そこで父と子は20年ぶりに再会しました。

オデュッセウスが従軍したときテレマコスはまだまだ幼児だったはずなので、父親の顔など覚えてはいなかったでしょうが、オデュッセウスひいきのアテナの言葉により、父親とわかったと言います。

自分の留守の間の男たちの所行を知り、激怒したオデュッセウスは復讐しようと策を練ります。

まずテレマコスに「母上にオデュッセウスの弓を引いた者と再婚する」と言うように勧めます。

息子の言葉に従い、ペネロペはオデュッセウスの大弓を取り出すと「この12本の斧に開けた全ての穴を、この弓で射抜けたお方と結婚いたしましょう」宣言しました。

男達は次々と挑戦しましたが、何せ大きく強い弓です、誰一人引くことすらできませんでした。

そこへ、ぼろぼろの布きれをまとったみすぼらしい男が進み出くると、あっさとり難題をやってのけたのです。

ざわめく男たちの前で変装を脱ぎ捨てると、「私が留守の間、好き勝手のしてくれたな。私はおまえたちが死んだと思っていたオデュッセウだ」と叫び、大弓で男たちを射殺したのでした。

求婚者達とねんごろになった不届きな侍女達もそれぞれ処刑したそうです。

めでたく夫は帰ってきましたが、注意深い(疑い深い)ペネロペは、その男の言葉を信じません。

20年経っているのですから、姿も変わっていますし、わからなかったのかも知れません。

そこで夫婦しか知らない事実でカマをかけ、この男が本当のオデュッセウスなのか、試してみたのです。

「オデュッセウスの寝室のベッドを運び出し、ここに持ってくるように」と従僕に命じました。

オデュッセウスのベッドは彼が自分で作ったもので、自生しているオリーブに掘ったものだったのです。

当然持ち運びはできません。

男は理路整然とそれを伝え、ペネロペはやっと夫と納得したのでした。

 

ペネロペ~機織りをしながらオデュッセウスを待ち続けた貞女~ まとめ

すばらしい《妻としての人生》ですが、女としてはどうだったのだろうと思ってしまいます。

20年間、夫はあちこちを放浪し、浮気もしていた(キルケーなど)が、自分は島から一歩も出ず、狭い世界に閉じ込められていたのに。

いろいろ心に溜まったものがあったのではないかと邪推してしまいます。

一説ではこの夫婦はその後離婚したと言われています。

長年不在の夫が帰って来て、ずうっと一緒にいることがうっとうしくなり、ペネロペがイタケを出たというのです。

ペネロペの名を持つ小惑星がありますが、多くは金属で構成されているそうです。

まるで彼女が20年間が抱き続けた《鉄の意志》を思わせますね。

ヒステリックになることはあっても、ヘラやアフロディーテなどの方が同性としてはつき合いやすいのではないかと思います。

ペネロペがそばにいたら、心の裏を読まれてそうで、気が抜けないですよね。