『エデン』という単語で何を連想しますか?
筆者は【永遠の青春スター】と呼ばれた名優ジェームズ・ディーンの映画『エデンの東』です。
実は見たことはないのですが、あまりにも有名なこの映画は多くの人がご存じのタイトルだと思われます。
若くして死んだジェームズ・ディーンを一躍スターダムに押し上げた名作『エデンの東』
さて、その『エデン』とは一体どんな場所なのでしょうか?
エデンの場所とは
『エデンの園』という言葉はご存じですか?
エデンそのものが楽園と勘違いされていることが多いのですが、旧約聖書の『創世記』には「…東の方角エデンに楽園を作り…」と書いてあるそうです。
神は天地を想像した後に動植物を作り、1日の休息の後にエデンの園を作り出しアダムとイブを住まわせた。
エデンの園には川が流れ、園を出ると川は4つに分かれピション・ギホン・ヒデケル・ユフラテという川となった。園の大地は見るからに好ましく、中央には生命の木と善悪の知識の木が生えていた。
神は
「どの木の実も思いのままに食べてよいが、善悪の知識の木の実だけは食べてはいけない、それを食べれば死ぬからだ」
としていた。アダムとイブはエデンの園で働くことも無く思いのままに遊び暮らしていたが、その素晴らしい生活はある日突然終わりを迎える。
エバは1匹のヘビにそそのかされ、アダムはエバにそそのかされ善悪の知識の実を食べてしまった。
知識が付いた2人は一糸纏わぬ姿でいることに羞恥心を覚える(これが人間が服を着る理由である)。
そして神によってエデンの園を追放され、食べ物にありつくには汗水流して労働しなければならなくなった。
― 旧約聖書の『創世記』より引用 ―
ヘブライ語ではエデンとは【喜び、楽しみ】を表す言葉で、ヤハウェの神がアダムとイブのために用意した楽園のことを指しています。
ここでも、エデン=楽園と考えられているようですね。
さて、実際のエデンの場所ですが、聖書の中にはベテ・エデンという場所が記述されています。
元々エデンとは「平地」を意味していたそうで、実在の場所については諸説ありますが、チグリス川、ユーフラテス川の交わるところ、つまりメソポタミア文明発祥の地付近と言われています。
世界最古の戦争記録を残したとされるメソポタミアの都市国家ラガシュは、グ・エディン・ナ(エデンの首)と呼ばれる肥沃な平野が広がる地域を巡って戦争を起こした考えられています。
このことから、メソポタミア周辺にエデンの園のモデルとなった場所が存在していたと考えることができるかもしれません。
肥沃な三角地帯と呼ばれたこの地は、気候も穏やかで生物も豊か、人間が暮らすにはもってこいの場所だったのでしょう。
だからこそ、神が用意した楽園=エデンの場所にふさわしいと思われます。
アダムとイブ
何と言っても『エデン』と言ってすぐ連想するのは旧訳聖書に登場するアダムとイブではないでしょうか。
神が作った最初の人間であるアダムとイブは神の禁ずる行為=知恵の木の実(リンゴと言われています)を食べてしまったために楽園=エデンを追われることになりました。
余談ですが、聖書でもギリシア神話のパリスの審判でもリンゴが鍵となりました。
リンゴに対する古代の人間の考えがなんとなく窺えるような気がしませんか?
もっと横道にそれますと、30年以上前の人気番組『ムー一族』から生まれた『林檎殺人事件』という郷ひろみと樹木希林のデュエットソングには「アダムとイブが~林檎を食べてから~」という歌詞がありました。
これにも【林檎】が関わっていますね。
何事の心配もなく、病気やケガの恐れもない平穏な楽園。
その平穏さに飽きてしまったのか、イブは蛇にそそのかされ、神が「食べてはいけない」と禁止した知恵の実を食べてしまいます。
自分が作った人間が、自分を越える知恵を持つことを恐れた神の怒りなのか、アダムとイブは憂いのない楽園を追い出され、もめ事や怒り、恐れなどの負の感情を持つ世界で生きていくことになります。
何事も怒らず淡々と時間が過ぎていく楽園の生活は確かに気楽でしょう。
しかし、危険と隣り合わせでも、生きていることを実感できる外の世界はアダムとイブにとってそんなにイヤなものではなかったのではないか、と思うのです。
何も心配がないということは、何も考える必要がないということですからね。
80年代~90年代のある意味狂信的人気マンガ『アーシアン』
楽園としての『エデン』はアニメや漫画にも数多く登場します。
筆者が思い出すのは、バブル期に一世を風靡した漫画家高河ゆん(通称:がゆん)のファンタジーマンガ『アーシアン』です。
ちなみに高河ゆんはテレビアニメ『ガンダムOO』のキャラデザインをした人でもあり、漫画界では【未完の女王】という異名も持っている人です。
はい、未完の長編がかなり多いんです。
その点では、CLAMPも同じですが(苦笑)
アーシアンとは【地球人】のことで、【地球からはるか彼方の星=エデンに住む天使(と呼ばれる地球人とそっくりな人間)が二人一組でアーシアンを監視し、プラスとマイナスポイントを計算し、アーシアンを滅ばすべきか判断する】というストーリーで、がゆんの華麗な絵にだまされがちですが、アーシアンである身からすれば、とんでもなくイヤなマンガでした。
美しく正しい天使たち。
しかし彼らの人口は減り続け危機に瀕していた。
しかも、天使達はなぜか同性にしか発情しなくなっていたため、同性愛は禁忌とされ、禁を破った者は処罰された…
という設定だと、だいたい話の展開が読めてきますよね。
白い羽根を持つ天使の中に黒い羽根を持った天使【ちはや】が出現する。
ヘタレだが優秀なちはやは元々アーシアンが好きだったせいか、アーシアンを監視する自分たちの存在に疑問を感じ始め、相棒の影艶も次第に変わっていく…
その中で、二人の関係も…
といったストーリーで、OAVにもなりましたし、イメージソング、ドラマCDも発売されたりと、もともとマニアックなファンの多かったがゆん人気に乗ってかなりヒットした記憶があります。
声優も当時人気の佐々木望や井上和彦、子安武人、速水奨などを起用する力の入れようでした。
エデン~旧約聖書『創世記』に登場した楽園とメソポタミア文明の謎~ まとめ
神の命令を守らなかった人間は楽園を追われ、厳しい環境下で限られた命の短さに脅えるようになってしまいました。
神にとってはこれが【罰】だったのでしょう。
しかし、理想郷にどっぷりと浸って神の言うことに従うだけが、幸せなのでしょうか?
『銀河鉄道999』ではありませんが、限りある命だからこそ、一生懸命に生きようとするのではないかと思うのです。
エデンの園という心配のない楽園を出た人間は、現在限られた時間の中でエデンというゲームを楽しんでいる-のかも知れませんね。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。
「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)
もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。
現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。
マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。